ガンガン悪路を走れるイメージのジムニーだが、実は渡河性能はあまり高くないのは、意外と知られていないのかもしれない。
スズキ公式のジムニーの渡河能力は水深30cmなので、大人男性のスネの真ん中よりちょい上くらいの水深までである(対してランクルは水深70cm、ディフェンダーは90cmまで対応)。
一方で、ジムニーで浅くない川を走っている動画もちょいちょい見かけるので、48Rとしては勝手ながらそのジムニーが心配になってしまう。。
また、最近はゲリラ豪雨などで冠水するニュースも多く目にするので、そんな時にもむやみにジムニーだからと突っ込まないように、渡河能力は把握しておいた方が良いかと思う。
というわけで、今回の記事はジムニーの渡河能力がなぜ30cmしかないのかと、渡河能力を向上させる対策方法について紹介する。
ジムニーの渡河能力が低い理由
車の水が入ると重大な故障につながる部分
車は豪雨を浴びても問題ない作りになっているが、水に完全に浸かるとなると致命的な故障につながる部分がいくつかある。
これを知っておくと、どこまで大丈夫か判断できるので、災害時に役立つかもしれない。
次の場所は、水に浸かると重大な故障につながる部分である。
水に浸かると重大な故障に繋がる部分
- エンジン吸気口
- エンジン排気口(マフラー)
- クラッチ
- トランスミッション
- トランスファー
- デフ
1. エンジン吸気口
1ンジンの吸気口に関しては、空気の代わりに水を吸い込むと、水は圧縮できないのにピストンは圧縮しようとするので、コンロッドが曲がったりピストンが変形したり、一発でエンジンが壊れてしまうのだ。
車において、最も浸水させてはならない部分である。
ちなみに、吸気口を高い位置にもってくるシュノーケルという部品も売られている。
運転席の顔の高さまで吸気口を高くすることができるが、こんな高さまで水に浸かると室内ビショビショだろうね。。。(エンジンは大丈夫でもナビ、アンプなどの電装品はおしゃか)
2. エンジン排気口
マフラーに関しては、エンジンを回していると絶えず排気圧力で水を押しだしているので少々の冠水は大丈夫だが、エンジンを止めたらマフラー内に水が侵入して、触媒などをダメにしてしまう。
3. クラッチハウジング
クラッチハウジングは密閉されていないので、水が侵入することによりクラッチが貼り付きが発生し、クラッチが切れないやギアを入れられないトラブルが発生する。
4. ミッション / 5. トランスファー / 6. デフ
これらの駆動系は、ギアオイルが暖まって内部の圧力が高くなったときに内の空気を抜くブリーザーバルブという弁がついている(中の圧力を抜かないと、ケース内の圧力が高まりオイル漏れやシール抜けの原因になる)。
一応ブリーザーバルブは逆止弁(一方通行)にはなっているが、冠水したときにミッションケースなどが冷やされて内部が負圧になるため、水を吸い込んでしまうリスクがある。
水がこれら駆動系オイルに侵入すると、潤滑性能が著しく落ちて駆動系破損に繋がってしまうのだ。
ちなみにオイルに水が混入すると白濁するので、水に浸かって不安な時はオイルチェックしましょう。白濁してたら即オイル交換。
それぞれのバルブは下画像の位置にある。
■MTブリーザーバルブ
ミッションケースからホースで延長されシリンダーヘッドの高さまで延長されている。
ATは現車確認できてないが、パーツリストをみるとATトランスミッションケース上部にブリーザーバルブが取り付けられている(下画像14の部品)
■トランスファーブリーザーバルブ
フロアトンネル上部にあるので、位置は比較的高い。フロア底面よりちょっと上かな。
■デフブリーザー
デフ球の上面11時の位置についている。
ジムニーの渡河能力が低い理由は
デフブリーザーバルブの位置が低い
さて、さきほどは1~6の浸水すると重大な破損に繋がる部分を見てきたが、ジムニーの場合はデフブリーザーのバルブが一番低く、これが渡河性能のボトルネックとなっている。
ジムニーの渡河能力は30cmだが、デフブリーザーの位置は純正タイヤなら約40cmである(48Rは少し大きなタイヤを履いているので41cmだった)。
ジムニーのマニュアルには渡河水深は30cm以下と書いてあるが、さらに波を立てないようにと書いてある(このページ『必読!』と書いてあるけど、みんな読んでる??)。
波を立てると水深30cmでもデフブリーザーに水がかかるのでよくないのだろうね。先述の通り、ミッションやデフはブリーザーから水が入るリスクがあるので、ギアオイルはチェックしましょう。
諸元表の図に水深30cmを図示してみたが、タイヤの半径以下の水深である。
デフの位置はリフトアップしても変わらないので(タイヤを大径化すると、半径分は高さ稼げるが)、リフトアップして床が高くなったとはいえ、むやみに深い場所に行かない方が無難である(フロアまで水がこなければOKと思っていると痛い目みるかもよ)。
ランクルは対策されている
最初のほうでランクルの渡河性能は70cmと書いたが、実はランクルはノーマルでもデフブリーザーの水没対策として、ブリーザーをホースで延長して高くしているのである。
ランクルでもデフが一番低くなるので、この部分の延長は重要である。
したがって、タイヤの半径を超えるような水深でも走行可能なのである。
48Rはランクル開発リーダーの小鑓貞嘉氏の講演を聞いたことがあるのだが、ランクルは橋のない地域や雨季になるとそこらじゅうが水没するようなところに住んでいる人のために「ぜったい生きて帰ってこれる車」というコンセプトが根幹にあるので、悪路走破性や堅牢性ととことん追求した車になっているのである(アフリカや南米には本当に渡河して家に帰るランクルユーザーがいるらしい)。
これについては数年前参加したランクルの開発チーフの小鑓貞嘉氏の講演会で語られていたのだが、ランクルは世界中で販売されているグローバルモデルである、世界では本当に渡河しないと家に帰れない人もいて、その人たちの足がなくならないために渡河性能は絶対に譲れない性能とのことだった(走破性も同じで、ジャングルに住んいる人の日常の足になっているので、モデルチェンジして渡河性能や走破性落ちましたではお客様の信頼を裏切ることになるとおっしゃってました)
水没対策でジムニーのデフブリーザーを延長する
ジムニーで渡河性能の律速になっているブリーザーの位置を上げてやることで、渡河性能を向上させることができる。
専用のキットも売られているが、簡単な材料で作れるので自作も可能である。
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【渡河性能向上】JB64/JB74ジムニーのデフブリーザーホース取り付け【冠水対策】
デフには内部の気圧が高まらないように走行で暖まった空気を逃すブリーザーバルブが備わっているが、デフまで水没するとデフが冷えて内部負圧になり、バルブから逆に水を吸うリスクがある。 内部に水が侵入すると、 ...
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積極的に渡河をするわけではないが、昨今ゲリラ豪雨による冠水被害も多いので、安心感は増しました。
ジムニーの渡河能力まとめ
悪路ガンガン走れるタフなイメージのジムニーだが、以外にも渡河水深は浅めなので、極端に深い場所での水遊びは控えましょう。また、浅いと思っていても急に深みがあるのが自然の川。走り慣れないフィールドでの渡河は特に注意が必要である。
また、昨今はゲリラ豪雨による冠水被害も年々増えてきているので、自分の車を壊さないためにもきちんと渡河能力を把握しておくことは重要である(対策すれば、ちょっと安心感が増します。あまり活躍してほしくない対策だけど。。)
以上、意外と知られてない?ジムニーの渡河にまつわる雑学でした。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。