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オールシーズンタイヤでスキー場に行けるのか?について詳しく解説します

「オールシーズンタイヤ」ってその名称からシーズンを問わず夏から雪道まで使える万能タイヤと思っている人も多いのではないでしょうか?

実はこれ、半分正解、半分間違い。

確かにオールシーズンタイヤは雪道でも使用できるように設計されているが、あくまで非降雪地域でたまに積雪したときにゆっくりであれば雪道走行ができるタイヤであり、スタッドレスほど雪上/性能に特化したタイヤではない。また、苦手とする氷上ではほとんどグリップしない。

つまり、オールシーズンタイヤはスタッドレスタイヤの代わりとして使えないのだ。

例えば東京で積雪しても、安全運転でなんとか職場にたどり着くことができるというような使い方に向いたタイヤなのである。

で、ブログタイトルのスキー場に行けるか?ということなのだが、オールシーズンタイヤは雪道に特化した設計ではないので、スキー場のような豪雪地域に行くのなら全くお勧めしない。

今回の記事では、オールシーズンタイヤでスキー場に行くことをおススメしない理由について掘り下げて解説します。

 

また、オールシーズンタイヤには高速道路の「冬用タイヤ規制」を走れるタイヤと走れないタイヤがあり、そに違いについても解説します。

 

 

 

オールシーズンタイヤとは

オールシーズンタイヤとはノーマルタイヤ(夏タイヤ)とスタドレスタイヤの中間に位置し、無積雪時は夏タイヤに近いドライグリップやウェットグリップを持ちながら、雪道においてはノーマルタイヤより強いグリップを発揮するタイヤである。

冬季は日常的に積雪する地域でなければ1年を通して使用することができるのが特徴で欧米では人気があり、最近は日本でも注目を集めるようになったタイヤである。

 

 

 

オールシーズンタイヤの性能について

冬用タイヤの性能表示について

オールシーズンタイヤやスタッドレスタイヤなど、雪道を走行するタイヤには下表のような性能表示がタイヤに刻印されている。

刻印マーク 性能要件
M + S Mud and Snow(泥と雪)の略称。ノーマルタイヤより泥や雪に適した設計がされたタイヤ。
認証試験はなく、少しでもノーマルタイヤより優れていれば刻印可能。
(公的試験はなくタイヤメーカーによる自己認証)
スノーフレークマーク UN Regulation No.117の雪上試験(ブレーキと加速トラクション試験)をクリアした認証としてスノーフレークマーク刻印。
シビアスノータイヤとも呼ばれる。
アイスグリップシンボル シビアスノータイヤのうちUN Regulation No.117の氷上試験(ブレーキ試験のみ)をクリアした認証としてアイスグリップシンボルを刻印。
アイスタイヤとも呼ばれる。
極寒の北欧向けタイヤの氷上性能を担保するために刻印されている。
STUDLESS  過酷な凍結条件下の路面においても使用可能な性能を有するように特別に設計された冬用タイヤに刻印。
STUDLESS刻印をするために特に試験等は必要ないが、性能が良くないと買ってもらえないので、各タイヤメーカーはかなり研究開発している。

 

「STUDLESS」刻印がされてたスタッドレスタイヤについては、各タイヤメーカーが氷上グリップや雪上グリップの向上に凌ぎを削っている分野なので、性能が高いのは言うまでもない。

 

また、「スノーフレークマーク」と「アイスグリップシンボルマーク」については、UN Regulation No.117という国際基準に定められた試験をクリアしないと刻印することができないので、ある程度の雪上性能/氷上性能が担保されている印籠のような刻印である。

 

SUV用のタイヤによく刻印されている「M + S」マークはマッド アンド スノーの略で、泥濘やスノーなどに向けた設計がされたタイヤに刻印される。しかしながら性能要件や公的試験がなく、ノーマルタイヤより少しでも雪道に優れているとメーカーが自己認証すればOKである。

つまり、「M + S」刻印があってもなんの雪上性能も担保されていないのだ。

よくオールシーズンタイヤの紹介サイトで「M + S」刻印があれば雪道走れると書いてあるが、十分なスノー性能があるのか注意が必要だし、この手のタイヤはスノーは走れてもアイス(氷上)は全く走れないのを認識しておかないと危険である。

なんせ、ジムニー純正タイヤである デューラーH/T 684Ⅱでさえ「M + S」刻印があるくらい。

 

トレッドパターンはからは雪道に向いた雰囲気を感じられないが、ちゃんと50%摩耗を知らせるスノープラットフォーム付き(M+S刻印のあるタイヤにはスノープラットフォームが義務付けられている)。

とはいえ、ジムニーのノーマルタイヤで雪道を走ると思っている人はいないよね。

 

また、これらの性能表示の刻印は単一で使用されるのではなく、併記されている場合がほとんど。

例えば

  • TOYO OPEN COUNTRY R/T は「M +S」のみ
  • TOYO OPEN COUNTRY A/T Ⅲは「M + S」と「スノーフレークマーク」
  • DUNLOP SYNCHORO WEATHERは「M + S」と「スノーフレークマーク」と「アイスグリップシンボル」
  • BRIDGESTONE VRX3は「M + S」と「スノーフレークマーク」

というように、いくつも併記されている場合がほとんど。

 

というわけで、「スノーフレークマーク」または「アイスグリップシンボル」が刻印されていないオールシーズンタイヤは、雪上性能または氷上性能はまったく担保されていないので注意してください。

また、これらの刻印はUN Regulation No.117に定められた試験をクリアするば刻印を打つことができるが、これらの試験は最低限の性能を保証するものであって、高性能の証ではない。つまり、アイスグリップシンボルが刻印されているオールシーズンタイヤでもアイスグリップシンボル刻印がないスタッドレスよりグリップは低い場合がほとんどなので注意して頂きたい。

 

オールシーズンタイヤの走行区分

冬になると高速道路では「高速道路冬用タイヤ規制」や「全車チェーン規制」が発令されるが、その時の各刻印マーク別の通行区分は以下の通り。

刻印マーク 通常道路 高速道路冬用タイヤ規制 全車チェーン規制
冬用刻印なし(ノーマルタイヤ) 通行可 チェーン装着 チェーン装着
M + S 通行可 チェーン装着 チェーン装着
スノーフレークマーク 通行可 通行可 チェーン装着
アイスグリップシンボル 通行可 通行可 チェーン装着
STUDLESS 通行可 通行可 チェーン装着

 

雪道が走れると謳われているオールシーズンタイヤでも「M + S」表示のみでは「高速道路冬用タイヤ規制」時の走行は不可。

「高速道路冬用タイヤ規制」時にも走行するには、オールシーズンタイヤでも「スノーフレークマーク」が必要である。

 

下記は国土交通省の冬用タイヤ推奨のお達しの引用である。

引用:国土交通省HP

冬用タイヤ規制には「STUDLESS」または「スノーフレークマーク」表示が必要。

 

つまり、オールシーズンタイヤは

  • 「M+S」のみで冬用タイヤ規制を走れないオールシーズンタイヤ
  • 「M+S」に加えて「スノーフレークマーク」入りで冬用タイヤ規制を走れるオールシーズンタイヤ

の2種類に分けることができるので、この手のオールシーズンタイヤを購入するときは注意してください。

 

 

オールシーズンタイヤの対応イメージ

各タイヤの路面別対応イメージは下表の通り。

スタッドレスタイヤ オールシーズンタイヤ サマータイヤ
ドライ路面
ウェット路面
雪道(乾いた雪) X
シャーベット路面(べちゃ雪) X
凍結路面(アイスバーン) X X
冬用タイヤ規制 通行可 通行可能
(スノーフレークマーク必要)
走行不可
チェーン規制 チェーン装着 チェーン装着 チェーン装着
耐摩耗

 

オールシーズンタイヤの特徴として、雪道は速度を落とせばある程度走れるのだが、アイスバーンではほとんどグリップしない。

世間一般的には雪に強ければ氷にも強いというイメージがあるかもしれないが、雪上グリップと氷上グリップはメカニズムが異なるのだ。

 

簡単に説明すると、雪道ではタイヤの溝が雪を掴んで引っ掻くことの反力でグリップしている(雪中せん断力ともいう)。というわけで、スノーフレークマーク入りのオールシーズンタイヤは縦方向に通った溝がなく、雪を掴んで引っ掻くために横方向溝基調になる(実際には真横方向ではなくちょっと角度をつけてVにすることが多い。こうすると縦溝なくてもウェット路面の排水性もある程度確保できる)

 

 

一方で氷上グリップのメカニズムは「除水」と「引っ掻き」効果である。

 

まずは「除水」効果について説明する。

氷上が滑る原因は、氷とタイヤの間に水が介在するためである(冷凍庫から出したばかりの氷は手に貼り付くが、氷が少し溶けると手から滑り落ちるのと同じ現象)。

この境界の水膜を除水するため、スタッドレスタイヤのトレッドゴムにはミクロな穴がたくさんあり、そこに水を吸い上げることでタイヤと氷をしっかり密着させてグリップさせている(BSのブリザックで有名な発泡ゴム)。

 

 

また、スタッドレスタイヤの表面にはサイプと呼ばれる細かい切り込みがたくさん入っており、この切り込みに水を吸い上げることでも「除水」している。

 

次にもうひとつの氷上グリップメカニズムの「引っ掻き」効果であるが、ブロック中にサイプを数多く入れることでタイヤにはたくさんの角がある状態になる。その角ひとつひとつが氷上の凹凸を「引っ掻く」ことでもグリップしている。

 

発泡ゴムもサイプも入れれば入れるほど氷上グリップはは高まるのだが、トレッドの剛性は低下してしまいドライグリップとは背反の関係となっているので、各タイヤメーカーはドライ路面と雪上/氷上性能の高い次元での両立を目指して日夜研究開発して最適化を図っているのである。

 

雪上と氷上のグリップメカニズムの違いはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味ある方は読んでみてください。

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結局オールシーズンタイヤの性能は?

結論ですが、オールシーズンタイヤでスキー場に行くことは全くオススメしません(私はもちろん冬はスタッドレスタイヤ)。

まあ、スキー場にノーマルタイヤ+チェーンで来る人もいるので行けるかどうかはコンディション次第なところもあるのだが、15年間スキー場に通っているとスタッドレスタイヤでも怖いくらいのアイスバーンの日も少なくない。そんな日にオールシーズンタイヤなら確実に終わりです。楽しみしていたスキーも事故で台無しです(そんな日のノーマルタイヤ+チェーンの人は、事故るか坂で立ち往生している)。また、スキー場のアプローチは行きは良い良い帰りは怖い、夕方になると日中に溶けた雪が凍ってアイスバーンになり、さらに下り勾配で止まらないという恐怖の滑り台になります。

 

確かにオールシーズンタイヤは雪道についてはある程度走れることは理解してるが、問題はどこにアイスバーンがあるかわからないこと。スキー場まで1mもアイスバーンがないことがわかっていれば良いが、交差点やカーブ手前のアイスバーン1つで大事故になる可能性があるので、スキー場のような降雪地に行く場合はオールシーズンタイヤは避けて、ちゃんとスタッドレスタイヤを準備しましょう(自分だけでなく、周りにも迷惑かけるし)

48riderのやつ、やけにアイス性能にこだわるなと思うかもしれないが、ツルテカに磨かれたアイスはほんとスタッドレスタイヤでもグリップしないんです(下の動画は長野県某所)。

こんな路面、オールシーズンタイヤで走れたものじゃない。

 

 

また、この記事はオールシーズンタイヤをディスるのが目的ではなくスキー場のような厳しいコンディションには向いていないことを伝える意図で書いている。

年に1,2回しか積雪せず、そのためにスタッドレスタイヤに履き替えるほどではないが雪道の備えはしたい、という人には非常にオススメのタイヤだと思っている。なんせ、都内では積雪しても無理して運転して事故頻発だし、少しでも雪道に対応したタイヤにしてほしいと思っている。

ノーマルタイヤで事故るくらいなら、雪の日くらい電車かタクシー使えば良いのにね。。

 

 

 

ダンロップの次世代オールウェザータイヤ
シンクロウェザーについて

やっぱりコレは触れておかないといけないよね。

ダンロップから2024/10から販売された次世代オールシーズンタイヤであるシンクロウェザー。

従来のオールシーズンタイヤが苦手とする氷上性能も確保し、国際基準の試験もクリアしてアイスグリップシンボルマークもついている意欲作である。

なんでも夏は通常のサマータイヤのような剛性のあるゴムでありながら、冬になると柔らかくなるという「アクティブトレッド」という新技術が使われているとのこと(通常、夏タイヤのゴムは冬は硬くなりすぎるし、スタッドレスタイヤのゴムは柔らかすぎるのでオンロードでのハンドリングと摩耗が悪い)。

 

タイヤの顔であるトレッドパターンはオールシーズンタイヤらしいV字パターンにスタッドレスタイヤのサイプを組み合わせたパターン。

設計思想として読み解くと

  • V字パターンと縦溝でWETの排水性確保
  • 横方向の太溝(+V字)でスノーグリップ確保
  • 横方向のサイプでアイスグリップ確保

を狙っての設計だと思われる。

 

対応路面表は下表の通り。

※1の中期で過酷な積雪・凍結では同社のスタッドレスタイヤを推奨しているものの、氷上性能「○」となっている。

 

また、メーカー公表の性能チャートではまさにオールラウンダー。

従来のタイヤをほぼ包含しているので、シンクロウェザーさえあればどこでもOKというような表である。

 

実際、メーカー試験でのブレーキテストはスタッドレスタイヤ同等となっている。

 

しかしながら少しだけネガキャンさせていただくと、シンクロウェザーのサイプは横方向にしか入っていないので、縦のブレーキング方向の氷上グリップは良いかもしれないが、横のコーナリンググリップは不足している懸念はある。

メーカーテストにしても、アイスグリップシンボルを取得する試験でも氷上のストレートブレーキングしか試験しないため、コーナーグリップは未知数である。

ちなみに、YOUTUBEで見つけた動画をみると、やはりコーナーでのグリップは弱そうです。

 

ちなみに、スタッドレスタイヤのサイプの方向は斜めになっており、縦にも横にも効くような設計になっている

(サイプは直角方向に効くので、斜めにしておくよ縦横両方に効く。ただし、ブレーキ性能だけ狙うなら縦に直行する真横サイプが一番良い)

 

 

とはいえ、雪の札幌でちゃんと事故らずに移動できているので、スキー場のような険しい場所は置いておいて、雪の市街地で安全運転で使う分には何不自由なさそう。

夏も冬も同じタイヤで行けるとは、すごい時代になったものである。

 

 

雪国でオールシーズンタイヤの人はいない

48Rは豪雪地域の長野県白馬村にも住居を構えて10年経つが、タイヤが履き替えるのが面倒でオールシーズンタイヤを履いている人は1人も見たことがない。やはり雪国ではスタッドレスタイヤで走ることが当たり前で、11月になるとみんないそいそとスタッドレスタイヤの準備を始め、4月になる夏タイヤに交換をする。

豪雪地では一晩で30cm以上積もって除雪が間に合わなかったり、昼に溶けた雪が夜に固まってアイスバーンになったり、そのアイスバーンが通行する車によってさらに磨かれてミラーバーン(鏡のようなツルツルのアイスバーン。スタッドレスタイヤでも超怖い)になったりするので、少しでも安全なタイヤを履きたいしスタッドレスタイヤが常識なのである(皆、オールシーズンタイヤはアイスバーン効かないから使いもにならないと思っている)。

冬の大雪になると村内では交通事故だらけであるが、ほとんどが他県ナンバーだし、最近はまともなスタッドレスタイヤを履いてないレンタカーも多い。頼むから、豪雪地にはちゃんとしたタイヤで来てください。。

 

 

 

オールシーズンタイヤでスキー場には行ってはいけないまとめ

オールシーズンタイヤの雪道性能はスタッドレスタイヤに劣るものの、車に興味がないましてタイヤに興味がない層には「夏も冬も走れる便利タイヤ」と思い込み、これでスキー場に行くのは危険極まりないので注意喚起として記事にした。

ここまで書いたように、オールシーズンタイヤは雪道も走れはするものの、性能としてはスタッドレス以下で雪道で常用するようなタイヤではなく、非降雪地域で年数回の降雪に対応するためのタイヤである。

スキー場は山の上にあるので雪道の部類としては難易度は高く(中には2WD + スタッドレスタイヤでもたどり着けないような急勾配アクセスのスキー場も少なくない)、スキー場に行く計画があるのなら冬はスタッドレスタイヤに履き替えることを猛烈にオススメする。

確かにスタッドレスタイヤ交換費用やタイヤの保管場所など経済的なコストは大きいのだが、1度でも事故るとスタッドレスタイヤ費用なんて逆転するし、事故る確率はオールシーズンタイヤのほうが圧倒的に高い。

スタッドレスタイヤの購入交換費用/補完費用をケチったばかりに、たった一度の事故で余計な損をするばかりか怪我をしてはつまらないので、降雪地域に行く場合は是非スタッドレスタイヤを履きましょう。

 

※注)この記事はオールシーズンタイヤをディスる意図はなく、東京や大阪在住でたまにの積雪に備えてオールシーズンタイヤという選択はありだと思っている。あくまでオールシーズンタイヤで険しい雪山に来んな!という記事ですのであしからず。

 




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