ジムニーをリフトアップすると必要になるのがアライメント補正。
その中でもハンドリングや安定性に大きく影響するのがキャスター角補正だ。
とはいえ、なぜキャスター角が大きい方が直進安定性が向上するのか、仕組みを解説したブログを見かけないので、今回の記事ではそのあたりを掘り下げて解説する(深く知ってても何も得しないただの雑学です。また、自動車工学やっている人には当たり前体操なので、読み飛ばして頂いて結構です)
また、記事後半ではジムニーのキャスター角補正についても色々な手法があって分かりにくいので、それぞれの手法ごとにメリットデメリットをまとめます。これを読めばリフトアップキットの補正パーツがの内容が理解できるはず!
(ちなみに、48Rはキャスター角度補正済みのリーディングアームに交換しました。この話はまた別記事で)
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JB64/JB74ジムニーのリーディングアーム交換【キャスター角補正】
1インチリフトアップ程度ではキャスター角度補正しなくても通常範囲の走行では困ることはないのだが、今回はとある理由でリーディングアームを交換した。 その理由なのだが、リフトアップするとキャスター角が減少 ...
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↓めちゃ長い記事なので、適宜目次を活用して下さい。
キャスター角について
キャスター角ってどこ?
まずキャスター角ってどこの角度かご存知だろうか?
答えは車体を横から見た時のキングピン軸(操舵軸)と垂直軸のなす角度である。
って、これだけじゃピンとこないので、図で解説。
タイヤの操舵軸(タイヤが回転する軸)って、イメージではなんとなく下の画像のように、地面に垂直な軸で左右に切れると思ってないだろうか?
実はこれは間違いで、タイヤの操舵軸(以下キングピン軸)は地面対して角度がつけられていて、その軸を中心にタイヤが回転するようになっている(下の図はアライメントがわかり易いように大袈裟に操舵軸を傾けている)
上図のキングピン軸と垂直軸のなす角がキャスター角(緑字)である。
また、キングピン軸を延長して地面にぶつかる部分とタイヤの接地点の距離をトレール(赤字)と呼ぶ。
では、このキャスター角が直進安定性にどのように寄与するのか、次章で解説する。
キャスター角の役割
こちらはタイヤを真上から見た図である。
先ほどの図の通り、キングピン軸を伸ばして地面にぶつかる部分とタイヤ中心までの距離をトレールと呼ぶ。
ここで上図右のように、直進時から右へハンドルを切ったとすると、タイヤには車体を右に向けるコーナリングフォースという力が発生する(発生原理は長くなるので割愛)
この時、タイヤの回転軸はキャスター角によりタイヤ前方●にあり、回転軸とコーナリングフォースの着力点にはトレール分の距離のずれが生じるので、力(コーナリングフォース xトレール = 緑矢印(→)の回転モーメント が発生する。
この回転モーメントはタイヤの舵角を戻す方向に作用するので、タイヤは直進状態に戻ろうとする。また、ハンドルを上図とは逆の左に切ったすると、これまた上の図とは逆のモーメントが発生してタイヤは直進状態に戻ろうとする。
つまり、キャスター角度のおかげでタイヤはどちらに舵角をつけても、常に直進状態に戻ろうとするモーメントが発生する。これがキャスター角による安定性の仕組みなのだ(交差点を曲がっている時、ハンドルから手を離すとハンドル(タイヤの向き)が勝手に戻る原理)
次にキャスター角が大きくなった場合の変化を考える。
キャスター角が大きくなると、キングピン軸と地面がぶつかる位置がタイヤから離れる方向になり、幾何学的にトレールが大きくなる。
この時、タイヤを真っ直ぐに戻そうとするモーメントは次の式で表すことができるので
舵角を戻すモーメント = コーナリングフォース x トレール
トレールが大きくなるほど舵角を戻すモーメントも大きくなる(タイヤは変わってないのでコーナリングフォースは同じ)。
よって、キャスター角を大きくなる→トレールが大きくなる→舵角を戻すモーメントが大きくなる、となって直進安定性が増すのだ。
キャスター角と直進安定の関係は、外からキャスター角が見えるバイクだとわかり易い。
アメリカ大陸をロングクルージングするハーレーはフロントフォークが寝ていてキャスターが大きく直進安定性が高い設計になっている。
一方でサーキットメインのレーサーレプリカはキャスター角度が立っていてトレールが短く、直進安定性よりコーナー重視の設計になっている。
このように、キャスター角は車のハンドリングの特性に大きく寄与するパラメータなのである。
(車では、長距離クルーズの多い北米モデルのスポーツカーも、キャスター角が大きい車が多い)
実は大事なのはトレール量(豆知識)
ここまではキャスター角を大きくすると安定性が増すと説明してきたが、これでは100%の答案ではないので、もう一つ豆知識。
操舵軸のアライメントとして、もうひとつオフセットというパラメーターもある。
下の図はよくある台車のキャスターの図である。
これはキャスター角度は0度なのだが、オフセットで操舵軸とタイヤの接地点をずらしてトレールを作り出している。
ここで先ほどの舵角を戻すモーメントの式を考えてみる。
舵角を戻すモーメント = コーナリングフォース x トレール
つまり、キャスター角がなくてもトレールさえあれば舵角を戻すモーメントが発生するので、安定性を確保することができるのである。
ちなみに、一般的に自動車の操舵軸はオフセットがないので、キャスター角だけで論じて問題ない(一方でオートバイや自転車など二輪車はキャスター角とオフセットのふたつのパラメータでトレールを設計している)
ここまで分かればキャスター角については90%で理解できいるはずだ(まだ10%残ってるけど)
リフトアップ時に起こるアライメントの変化
さて、ジムニーはリフトアップするとキャスター角の補正が必要と言われるが、なぜ必要になるなのか、この章ではリフトアップ時に起こる車体ジオメトリーの変化を交えて解説する。
ジムニーには「3リンクリジッドアクスル式サスペンション」という形式が採用されている。
この形式のサスペンションは「2本のアーム」と「1本のラテラルロッド」の3つのリンクでサスペンションの動きを決めている形式である。
このサスペンション形式では、タイヤの上下方向のストロークはリーディングアーム(前)/トレーリングアーム(後ろ)の円運動で決まってくる。
ジムニーのサスペンションストロークは上の図のように、フレーム側視点を中心にリーディングが上下に円運動する軌跡を通るのだ。
次にこのサスペンション方式でリフトアップしたときのアライメントの変化を確認する。
キャスター角の変化
キャスター角変化の幾何学
先ほどはキャスター角の役割について説明したが、ジムニーにリフトアップコイルを組むと、サスペンションが伸びてアームが押し下げられ、下の図のようなアライメントの変化が生じる。
(理解しやすよう、かなり大袈裟にリフトアップしてます)
このリフトアップ時、タイヤはアームのフレーム側支点を中心に円運動の軌跡を描く。この時、ホーシングも円運動によって角度が変わるので、キングピン軸も垂直軸に対し角度が減少し、結果トレールも減少して安定性が損なわれる方向に変化するのだ。
よくジムニーでリフトアップしたときはキャスター角補正が必要と言われるのは、この減少したトレールを補正するためなのである。
キャスター角の補正量
ここでリフトアップ量ごとに必要になるキャスター角補正量を計算してみる。
下図のように
- アームの長さ:R
- リフトアップ量:L
- キャスター角の変化:θ
と置く。
この時の関係は簡単な三角関数で表すことができて次式で表される。
sinθ = L/R
これをθについて求めると
θ = arcsin(L/R)
となるので、θをプロットすると下グラフになる。
50mm(2inch)リフトアップで4.55°のキャスター角変化なので、まあ大雑把に10mmリフトアップごとに1°補正と考えて良いだろう。
ラノーズさんのアームの説明を見ても、3.5°アームが40mmアップ、6°アームが60mmアップまで対応しているので、上記の計算は大体合っていると思う。
通常は、3.5°アームが20〜40mmアップに、6°アームが50〜60mmアップに、8°アームはそれ以上の車高アップ仕様とのマッチングとしています。
(ラノーズHP引用)
実際にジムニーについているキャスター角だが、4X4ENGINEERINGさんが実測されている。
車高+補正 キャスター角実測値 純正からの変化量 偏芯ブッシュ補正効果 純正基準値 2°07' 0 --- 30mmリフトアップ+補正なし -0°47' -2°54' --- 30mmリフトアップ+偏芯ブッシュ前1個(合計2個) 0°35' -1°32' 1°12' 30mmリフトアップ+偏芯ブッシュ前後2個(合計4個) 1°55’ -0°12’ 1°19' 引用:4X4ENGINEERING
これを見ても30mmリフトでキャスター角の変化が2°52'なので、先ほどの計算式でだいたい合っていることになる。
また、ノーマル状態のキャスター角が2°07'なら1インチ(25mm)アップでほぼキャスター角は0になる。
ここで「1インチアップでキャスター角0°なら、1インチアップはトレール0mmで直進安定性がない!1inchアップはキャスター補正不要というショップがあるが、それは嘘だ!」と思う人もいるかもしれないが、実際にはキャスター角0°でも直進安定性はなんとか維持される。
理由としては、コーナリングフォースはタイヤの接地面内全体で発現しているが、コーナリングフォース全体の着力点はタイヤセンターから後方になり、タイヤ接地面内でも舵角を戻すモーメントを発生しているからである。
下の図はタイヤの接地面内の力の出方を示した図である。
上図ようにコーナリングフォースはタイヤ接地面中心より後ろに現れるので、接地面内にトレールが発生する。この接地面内のトレールを「ニューマチックトレール」という。
このニューマチックトレールのおかげで、1インチアップでキャスター角0°でも舵角をまっすぐにしようとするモーメントが表れて直進安定するし、交差点でハンドルから手を放すとハンドルがセンターに戻ろうとするのである(ノーマルより戻りは悪いが、乗れないほどではない)。
また、ニューマチックトレールがあるとはいえ、2インチアップ以上でキャスター角がマイナスになればマイナス方向になったトレールがニューマチックトレールを食っていくので、安定性が確保できなくなるのは言うまでもない(ジムニーショップも2インチ以上のリフトアップは必ずキャスター角補正を推奨している)。
ちなみに、48Rはジムニーショップさんどほジムニーに詳しくないが、トレールとかニューマチックトレールが車に及ぼす影響についてはなんとなくお勉強はしています。
ホイールベースの変化について
ホイールベース変化の幾何学
3リンク式のサスペンションでは、リフトアップするとホイールベースも変化する。
先に説明した通り、リーディングアーム/トレーリングアームはフレームの取り付け位置を中心に円運動でストロークする。
というわけで、リフトアップしてアームに角度がつくと下図のようにホイールベースが減少するのだ。
アームは支点を中心とした円運動なので、リフトアップすればするほど、ホイールベースは短くなる。上の図は分かりやすく大げさに描いてるが、実際には数ミリのホイールベース変化でもハンドリングや安定性に影響するし、コイルもフレームとホーシングのコイルベッドの位置がずれるので、コイルが弓なりになり反発力も有効に使えなくなり、サスペンションも性能を発揮できなくなる。
というわけで、リフトアップしたらアームを延長してホイールベースを補正する必要がある。
リフトアップ量に合わせてアームを伸ばすことで、純正同等のホイールベースにすることができるのだ。
キャスター角の補正方法
ここまでキャスター角の役割とリフトアップするとキャスター角が減少することを説明してきた。
この章では、リフトアップした時に減少するキャスター角を補正する方法について解説する。
補正方法としては主に次の3つの方法がある。
キャスター角補正方法
- 偏芯ブッシュに打ち替え
- 補正済みリーディングアーム交換
- リーディングアームダウンブラケット
それぞれメリットデメリットがあるので、順に解説する。
偏芯ブッシュによるキャスター角補正
偏芯ブッシュとは
一番安価なキャスター角の補正が、偏芯ブッシュと呼ばれる本来はブッシュ中央にあるボルト穴をセンターからズラしたブッシュを用いて補正する方法である。
下の画像のように純正アームはそのまま流用し、ブッシュのみを偏芯ブッシュに打ち替えて使用する。
(補正するキャスター角により、1個または2個使用する。2個使う方が補正角は大きくとれる)
偏芯ブッシュによるキャスター角補正のしくみ
偏芯ブッシュによるキャスター角補正の仕組みはこうである。
まず下の図は「ノーマル状態」のジムニーのフロントサスペンション。
(アームとキングピンの位置関係がわかり易いように、タイヤは省略)
このとき、リーディングアームはサスペンションの上下方向のストロークの軌跡を決めていて、荷重はコイルが支えている。また、キングピン軸はキャスター角がつくように斜めに取り付けられている。
次にリフトアップコイル(緑)に変更した場合を考える。
リフトアップコイルによりジムニーの足が伸びて、それにともないリーディングアームがフレーム側の支点を中心に回転し、上の図の状態になる。
このとき、キングピン軸はリーディングアームの円運動に伴いキャスター角が減少する。
(ついでにコイルベッドの上下位の位置関係もずれて、コイルが弓なりになりコイルの反発を有効に使えない状態にある)
ここで登場するのが先ほどの偏芯ブッシュ。
上図のように偏芯ブッシュでリーディングアームに対してホーシングの取り付け位置を変更することで角度を補正し、キャスター角をノーマル状態まで補正するのである。
ただ、この時キャスター角は補正できても、コイルベッドの上下の位置関係は前後にズレているので、コイルの弓なりは完全には解消されない。
また、ホイールベースも前章で説明した通り、アームが円運動した分短くなった状態である。
偏芯ブッシュの補正角度
偏芯ブッシュの補正角度は偏芯度合いによって決まる。
下表のようにボルトの穴が中央から離れている方が、補正角度が大きい(補正角度はメーカー公表値)
また、上記は1ペア(左右のリーディングアームで2個)使用した時の補正値なので、2ペア(左右のリーディングアームで4個)使えば倍の補正量になるし、3°補正と1.5°補正を組み合わせて4.5°補正にすることも可能だ。
偏心ブッシュの素材の種類
ゴムブッシュ
純正ブッシュと同じくゴムでできたブッシュ。
ゴムは適度な柔軟性をもっているので、ブッシュとしての動きが良いことが特徴。
ウレタンブッシュ
ウレタン樹脂製のブッシュ。
硬質ウレタンを用いられているが、各メーカーごとに設計思想からウレタンの硬度は異なる。
ゴムより硬いウレタンなのでブッシュとしての動きはゴムブッシュに劣るが、むしろ足の動きを規制するのでジムニー特有の船のようなロールを抑えることができる(硬度の高いウレタンほど有効)。
偏芯ブッシュのデメリット
デメリット①悪路でサスペンションの動きを妨げる
ジムニーの3リンクリジッドアクスル式サスペンションは、左右両輪が同じ動きをするときはアームのブッシュにはストレスがかからないが、下の画像ように片輪が持ち上がるようなときは、アームのブッシュに捻れるような力が加わることになる。
この時、偏芯ブッシュと純正ブッシュで足の動きの違いが大きくなる。
その違いとは、こうである。
下の図はアームがホーシングに対して捻れる力が加わった時の動きの違いである。
上が純正ブッシュ、下が偏芯ブッシュ。
純正ブッシュはボルト穴が中央を通っているので捻りに対しては最大限動くことができるが、偏芯ブッシュの場合はブッシュが中央から端に寄っている分、捻れに対する動きが規制されることになる。
ゆえに、片側段差に乗り上げた時、サスペンションが十分に追従できなく、タイヤが浮いてしまうことになり、悪路の走破性にネックがある。
とはいえ、悪路に行かなければそれほどこのデメリットが顔を出すことはない。
あくまでブッシュに捩じれが生じるのは左右のサスペンションの動きに大きな差が生じるときなので、一般道ではそれほその差は出ないだろう(街乗りだと偏芯ブッシュのデメリット目立たない)
デメリット②取り付けには専用工具が必要
偏芯ブッシュは価格こそ安いものの、取り付けには治具やら油圧プレスが必要で、DIY派にとっては却って敷居が高い補正方法である。
下はブッシュの位置決めの治具。
偏芯ブッシュの場合、ホーシング側のブッシュ間の穴の距離をピッタリと合わせないといけないので、上図のような治具でブッシュの位置を決めてやる必要がある(なにも考えずにボルト穴がセンターに来るわけではないので)。
また、ブッシュの圧入にはプレス機が必要で、DIYでリフトアップ作業を楽しみたい人にはハードルが高い。
油圧プレスなんて、サンデーメカは持ってないよね。。
リーディングアームによるキャスター角補正
お値段は張るが、キャスター角の補正方法としては一番良いと言われているのが、キャスター角補正済みのリーディングアームへの交換。
キャスター角補正済みリーディングアームとは
キャスター角補正済みリーディングアームとは、純正アームと比較してブッシュ位置が変更されており、純正アームと入れ替えるだけホーシングの角度を変更してキャスター角を補正することができる部品である。
アームはそれぞれキャスター角の補正度合で「1インチアップ用」「2インチアップ用」「3インチアップ用」など、それぞれのキャスター角補正量ごとに販売されている。
リーディングアームによるキャスター角補正の仕組み
下の画像は先ほどのリフトアップコイルのみを入れキャスター角が減少している状態のジムニーサスペンションである。
ここでリフトアップ量に対して適切なキャスター角に補正できるリーディングアームに交換すると、下図のようになる。
キャスター角補正済みリーディングアームは通常のブッシュでもホーシングの角度が適正になるように設計されている(サスペンションの動きを妨げない)。
また、ホイールベースも同時に補正されており、リフトアップ後のコイルベッドの上下位置が揃うので、コイルの弓なりも解消されサスペンション本来の性能が引き出せる状態になる。
この補正方法は、リフトアップ後のジムニーのアライメントを最も適正化できるのだ。
また、純正のアームは激しいオフロード走行では曲がることがあるが、リフトアップ用のアームは純正より強度アップしている製品が多く、曲げに対し強くなるのもメリットである(一部の悪路マニア向けだが)。
キャスター角補正済みリーディングアームのデメリット
性能上は特にデメリットはないのだが、唯一のデメリットと言えば価格である。
フロントアームだけで5万円以上なので、偏芯ブッシュや次に紹介するダウンブラケットより高くついてしまうのが難点。とはいえ、価格分の性能はあると思っている。
48RのJB74ジムニーシエラはこの方法でキャスター角を補正した。
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JB64/JB74ジムニーのリーディングアーム交換【キャスター角補正】
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リーディングアームダウンブラケットによるキャスター角補正
リーディングアームダウンブラケットとは
下の画像のようなパーツをつけて、アームの位置を下げる(ダウン)させる部品である。
ポン付け可能で、リーディングアームのフレーム側支点が50mmほど下に下がる格好になる。
リーディングアームダウンブラケットのキャスター角補正量の仕組み
例によって図で説明する。
リフトアップ量に合ったダウンブラケットを装着するとリーディングアームが下に平行移動した形になる。
(例えば、50mmアップコイルに50mmのリーディングアームダウンブラケットを装着すると、車体からはアームが50mm平行に下へ移動したことになる)
そうすると、リーディングアームがノーマル時と同じ位置関係になるため、キャスター角が補正されるのである。
メリットとしては価格がアーム自体を交換する補正方法より安価という点が挙げられる。
取り付けも容易で、アームのフレーム側支点のみ作業だけなのでDIY派にとってもとっつき易い。
また、ダウンブラケットは他の補正方法と併用できるのもメリット。5インチアップ以上のスーパーリフトアップ仕様ではアームや偏芯ブッシュのみではキャスター角補正しきれないが、ダウンブラケットと併用することで適切なキャスター角までもっていくことが可能である。
リーディングアームダウンブラケットのデメリット
デメリット①最低地上高がダウン
ぶつけ易いリーディングアーム取り付け部が下がってしまうのがこの手法のデメリット。
リーディングアームのフレーム側視点の位置がノーマルと同じなら、用途によってはリフトアップのメリットが出ていないことになる。
下の画像は48RのJB23だが、へったくそがトライアルごっことかするとぶつけるんですよ。
トホホ。。。
ちなみに、この部分はぶつけ易いのでガードも売られている。
ぶつける前に買えばよかったなぁ(遠い目)
デメリット②2inchアップまでしか対応していない
ほぼ全てのアップブラケットが2inch(50mm)アップまでしか対応していないので、3inchアップ以上では使用できないか、または偏芯ブッシュとの組み合わせが必要である。
デメリット③種類が少ない
2023/10/18現在、JB23用は3万円弱で数種類流通しているが、JB64/JB74用は4万円ほどする上、あだ一種類しか販売されていない。
今後、安くてラインナップが増えることに期待。
ジムニーのキャスター角
補正方法まとめ
以上、ジムニーのキャスター角についてその役割や補正方法でした。
長々と書き連ねて分かりにくいので、下に簡単な表でもメリットとデメリットをまとめてみた(表は横スクロールします)。
キャスター角補正方法 | 価格 | メリット | デメリット |
偏芯ブッシュ | 〜1.5万円 | ・価格が安い ・ブッシュの材質で乗り味選べる |
・ホイールベースは補正できない ・サスの動きを妨げる (ロールは抑制できる) ・コイルの弓なり残る ・治具やプレス必要でDIY取り付け難しい ・圧入作業分ショップ作業工賃が高くなる |
キャスター角補正済み リーディングアーム |
5万円〜 | ・ホイールベースも補正 ・サスの動きを妨げない ・社外アームは強度が高い ・DIY取り付け可能 |
・価格が高い |
リーディングアーム ダウンブラケット |
3万円前後(JB23/43) 4万円前後(JB64/JB74) |
・ホイールベースも補正 ・サスの動きを妨げない ・比較的安価 ・取付が簡単 |
・ダウンブラケット分最低地上高下がる ・2インチアップまでしか対応しない (3インチ対応のブラケットはほぼない) ・種類が少ない(JB64用は高価なものしかない) |
それぞれにメリットデメリットあるが、何を重視するかでベストが変わってくるので、ブログ読者様自身が特性を理解したうえでパーツ選択の妄想をされるのが一番かと思います(ショップの言うままより、メリットデメリットを理解した上で自分で部品選んだほうが楽しいでしょ?)。
以上、ジムニーリフトアップ時のキャスター角についての解説記事でした。
リフトアップキットの内容について、悩んでいる人の参考になれば幸いです。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。