現行のJB64/JB74をはじめ、JB23など先代のジムニーのギア比を直接比較できるようにまとめてみました(カタログなどを別々に眺めても比較しにくいので)。
ギア比をみることで車が低速か高速どちらを重視しているか見えてきたり、流用カスタムの妄想が膨らみます。
参考になれば幸いです。
ジムニーの減速比とは
知ってる人には当たり前の内容だけど、当ブログは車初心者にも分かりやすくがモットーなので、前半はエンジンの減速比について解説させて頂く。
カタログの減速比の定義
定義は次の通り。
減速比 = 出力側の回転数 ÷ 入力側の回転数
=出力側の歯車の歯の数 ÷ 入力側の歯車の歯の数
=「出力側が一回転する間に入力側が何回転するか」
となる。
例えば、入力側の歯車の歯の数が10で出力側の歯車の歯の数が20なら減速比は
20 ÷ 10 = 2.0
となる。
また、出力側が一回転する間に入力側が2.0回転するとも言える。
この時、回転数が半分になる代わりに、出力軸のトルクは2.0倍になる。
この様に減速機は回転を減速してトルクに変換することができる装置である(減速比が1.0を切る場合は、逆に増速されてトルクは小さくなる)。
ジムニーの減速機構
車のエンジンからの回転出力はそのままタイヤに伝えるには回転が速すぎるので、減速機で適当な回転数まで減速しなければならない。
また、エンジンは効率の良い特定の回転数で性能を発揮するので、低速にギアを合わせると高速はエンジンが回り過ぎになるし、高速に合わせると低速ではエンジンの回転数が足りずトルク不足やエンストするので、通常は複数のギアを組み合わせた変速装置(以下、トランスミッション)を組み合わせる必要がある。
ジムニーの場合は、次の経路で動力が伝達され、逐次減速装置で回転数が減速されていく。
まず、エンジンのクランク軸出力はトランスミッションで任意のギア(MTなら5速、ATなら4速+トルコンでも減速)で減速される。
次にトランスファー(=副変速機)で「Hi」または「Low」のポジションに応じたギアで減速(トランスファーは二駆/四駆の切り替えも行う)。
最後にデフに組み込まれたギアで最終の減速が行われ、タイヤに動力が伝達される。
このように、ジムニーは「トランスミッション」「トランスファー」「デフ」の3段でエンジン回転数を減速する機構になっている(普通の車の場合はトランスファーがないので、トランスミッションとデフの2段減速)
ここまで理解できると、ジムニーのカタログ減速比を読み解くことができるようになる。
JB系ジムニーの減速比について
JB系ジムニー減速比一覧
JB系ジムニーの減速比をまとめてみたのが下表(見切れている場合は横にスクロールします)。
ミッション | トランスファー | 最終 減速比 |
|||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 高速変速比 (Hi) |
低速変速比 (Low) |
|||
JB23 | MT | 5.106 | 3.017 | 1.908 | 1.264 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 4.300 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 5.375 | |
JB33/43 | MT | 4.425 | 2.304 | 1.674 | 1.19 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 3.416 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 4.090 | |
JB64 | MT | 5.809 | 3.433 | 2.171 | 1.354 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 3.818 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 5.375 | |
JB74 | MT | 4.425 | 2.304 | 1.674 | 1.190 | 1.000 | 1.00 | 2.002 | 4.090 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 4.300 |
各モデルで微妙に減速比が異なっている部分もあるし、逆に減速機が同じところは部品を流用していると思われる。
また、減速比は掛け合わせることができるので、3段の減速比を掛け合わせたのが下表となる(表はトランスファーの高速側Hiと低速側Lowでふたつに分けている)。
総減速比(高速側) | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
JB23 | MT | 28.982 | 17.124 | 10.83 | 7.1745 | 5.676 |
AT | 20.398 | 11.125 | 7.095 | 4.9381 | - | |
JB33/43 | MT | 19.953 | 10.389 | 7.5483 | 5.3659 | 4.5091 |
AT | 15.522 | 8.4653 | 5.3988 | 3.7576 | - | |
JB64 | MT | 29.276 | 17.301 | 10.941 | 6.8238 | 5.0398 |
AT | 20.398 | 11.125 | 7.095 | 4.9381 | - | |
JB74 | MT | 18.098 | 9.4234 | 6.8467 | 4.8671 | 4.09 |
AT | 16.319 | 8.9 | 5.676 | 3.9505 | - |
総減速比(低速側) | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
JB23 | MT | 58.029 | 34.288 | 21.684 | 14.365 | 11.365 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - | |
JB33/43 | MT | 39.951 | 20.802 | 15.114 | 10.744 | 9.0285 |
AT | 31.078 | 16.95 | 10.81 | 7.5237 | - | |
JB64 | MT | 58.618 | 34.642 | 21.908 | 13.663 | 10.091 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - | |
JB74 | MT | 36.233 | 18.866 | 13.707 | 9.7439 | 8.1882 |
AT | 32.674 | 17.82 | 11.365 | 7.91 | - |
例えば、JB23 MT 1速 高速側の総減速比は「28.982」なので、このときタイヤが一回転する間にエンジンは28.982回転していることになる(このときエンジンのトルクは28.982倍になってタイヤに伝わる)
JB系ジムニーのエンジン回転数と車速の関係
さて、エンジンとタイヤの回転の関係が分かったので、そこからエンジン回転数と車速の関係も求めることもできる。
各々のジムニーのタイヤサイズと外径は次の通り。
車種 | タイヤサイズ | 外径 |
JB23/JB64 | 175/80R16 | 686mm |
JB33/JB43/JB74 | 195/80R16 | 693mm |
今回は簡易的に外径×円周率をタイヤ周長とする(正確な転がり周長は測定で求める必要がある。ちなみに高速になるほど微妙にタイヤが遠心力で大きくなり、周長は長くなる)。
こうして エンジン回転数をタイヤが転がる距離に変換して、時速で表すと、現行のJB64/JB74のエンジン回転数と車速の関係は次の通りに求まる(ATはロックアップしてない時はトルコンによる滑りで以下のグラフの通りの関係ではないので目安です。また、現行ジムニーでロックアップするのは3速と4速のみ。JB23に至ってはロックアップ機構なし)
このように、カタログの減速比を読み解くと、時速何km/hでエンジンの回転数はいくらか、ということが読み解くことができる。
グラフが描けたので比較してみる
JB64 MT vs. JB64 AT
JB64 のMT とATを比べると、ローギアはMTのほうがギア比が低くて低速の駆動トルクが有利に見えるが、ATはトルコンによって低速度でもエンジンの美味しい回転域が使えるのと、トルコンによるトルク増幅機能でMTと遜色な加速することができる(なので、非ロックアップ領域でMTとATの比較はあまり意味がない)
一方で、トップギアでの減速比はほぼ同じなので、100km/h巡行時でエンジン回転数はどちらも4,000rpmほどということが読み取れる(この領域ではATもロックアップされているのでMTと比較ができる)
JB64 MT vs JB74 MT
現行のJB64ジムニーとJB74ジムニーシエラのエンジン回転数と車速の比較がこちら。
JB74はNAとはいえ1.5Lの排気量からくるトルクでハイギアードな設定。
100km/h巡行時のエンジン回転数もJB64 MTが3,900rpmなのに対し、JB74 MTは3,100rpmで巡行ができる。これだけ回転数に差があると、巡行時のエンジン騒音も大きな差となるし、ロングドライブの疲労も違うだろう。
やはり長距離移動が多いならシエラが良い。
JB23 MT vs. JB64 MT
次に新旧ジムニーの比較。
JB23とJB64で1~3速のギア比設定はほぼ同じだが、JB64のほうは4、5速においてJB23よりハイギアードなギア設定となっている。
これはJB23に搭載されるK6Aがショートストロークで中高回転型なのに比べ、JB64に搭載されるR06AはK6Aよりロングストロークな設定で低回転からトルクが出る特性のため、4、5速のギアをハイギアードにして巡行性を高めていると思われる(トルクがあるR06AエンジンはK6Aエンジンに比べ低い回転数でも4、5速が使える)。
結果、巡行時の騒音や振動を減らせるので、JB64のほうがロングドライブに向いた特性となっている(とはいえ軽自動だし、先述のJB74のほうがさらに低回転で走れるが)
JB33/43 MT vs. JB74 MT
続いて新旧シエラのギア比の比較。
これは各ギアでJB33/43よりJB74のほうがハイギアードな設定。
シエラは先代の排気量1.3Lから現行で1.5Lに排気量がアップされているため、トルクに余裕が分ハイギアードにして低回転で走れるようになっているのだ。
ギア比のカスタムについて
カタログのギア比をみると、これを流用するともっと理想のギア比になるという場合がある。
ミッション | トランスファー | 最終 減速比 |
|||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 高速変速比 (Hi) |
低速変速比 (Low) |
|||
JB23 | MT | 5.106 | 3.017 | 1.908 | 1.264 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 4.3 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 5.375 | |
JB33/43 | MT | 4.425 | 2.304 | 1.674 | 1.19 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 3.416 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 4.09 | |
JB64 | MT | 5.809 | 3.433 | 2.171 | 1.354 | 1.000 | 1.32 | 2.643 | 3.818 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 5.375 | |
JB74 | MT | 4.425 | 2.304 | 1.674 | 1.190 | 1.000 | 1.00 | 2.002 | 4.09 |
AT | 2.875 | 1.568 | 1.000 | 0.696 | - | 1.32 | 2.643 | 4.3 |
実際にジムニーは世代やジムニー/ジムニーシエラで流用できる場合も多いので、組み合わせてギア比を変更することができる。
次のギア比カスタムの例を紹介する。
JB23/64にJB74 MTのトランスファーギアを流用
JB74 MTのトランスファーはハイギアードな設定なため、JB23やJB64に流用するとハイギア化することができる。
高速変速比 (Hi) |
低速変速比 (Low) |
|
JB23/64トランスファー | 1.32 | 2.643 |
JB74トランスファー | 1.00 | 2.002 |
これはトランスファーのガワはそのまま、ギアを組み替えることで流用可能である。
その時総減速比は下表の通り。
総減速比(高速側) | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
JB23 | MT | 28.982 | 17.124 | 10.83 | 7.1745 | 5.676 |
AT | 20.398 | 11.125 | 7.095 | 4.9381 | - | |
JB23 ハイギア |
MT | 21.956 | 12.973 | 8.2044 | 5.4352 | 4.3 |
AT | 15.453 | 8.428 | 5.375 | 3.741 | - | |
JB64 | MT | 29.276 | 17.301 | 10.941 | 6.8238 | 5.0398 |
AT | 20.398 | 11.125 | 7.095 | 4.9381 | - | |
JB64 ハイギア |
MT | 22.179 | 13.107 | 8.2889 | 5.1696 | 3.818 |
AT | 15.453 | 8.428 | 5.375 | 3.741 | - |
総減速比(低速側) | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
JB23 | MT | 58.029 | 34.288 | 21.684 | 14.365 | 11.365 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - | |
JB23 ハイギア |
MT | 43.956 | 25.972 | 16.425 | 10.881 | 8.6086 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - | |
JB64 | MT | 58.618 | 34.642 | 21.908 | 13.663 | 10.091 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - | |
JB64 ハイギア |
MT | 44.402 | 26.241 | 16.594 | 10.349 | 7.6436 |
AT | 40.843 | 22.275 | 14.206 | 9.8875 | - |
25%近く回転数を低くすることができ、車速とエンジン回転数は次の通り。
25%近くエンジン回転数を低くすることができるので、高速巡航時はエンジン回転数が下がり静音にかなり効果あり!シフトアップもJB23やJB64は低回転ではちょっとギア比が低すぎて忙しいくらいなのだが、それが普通になって走りやすくもなる。
48RのJB23もこの手法でハイギア化しているのだが、峠ではちょっとギアの繋がりが悪いものの、それ以外では快適です。特に高速移動の多い人はわかると思うけど軽自動車のジムニーは高速に乗ろうものならエンジンが4000回転以上回ってやかましいところ、3000回転台で巡航できるのでかなりロングドライブが楽になった。
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JB74にJB33/43のファイナル流用
これは流用確認がとれていないので参考程度。
JB74にJB33/43のMTの最終減速比を適用してみる。
最終減速比 | ||
JB33/43最終減速比 | MT | 3.416 |
AT | 4.09 | |
JB74最終減速比 | MT | 4.09 |
AT | 4.3 |
ちなみに、ジムニーの車速センサーはトランスファーの出力軸からとっているので、トランスファーのギア比変更では車速は狂わないが、最終減速比を変更するとスピードメーターが狂ってしまう。そこを補正しないと車検は通らないと思うが、JB64/74ジムニーでスピードメーターの補正方法は不明です(ECUの書き換えでできたりすると嬉しいのだが)
JB33/43のMTの最終減速比をJB74に適用した総減速比は下表の通り。
総減速比(高速側) | ||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | ||
JB74 | MT | 18.098 | 9.4234 | 6.8467 | 4.8671 | 4.09 |
AT | 16.319 | 8.9 | 5.676 | 3.9505 | - | |
JB74 ハイギア |
MT | 15.116 | 7.8705 | 5.7184 | 4.065 | 3.416 |
AT | 12.964 | 7.0703 | 4.5091 | 3.1383 | - |
そして車速とエンジン回転数の関係は下表の通り。
JB74 MTのハイギア化はなんと4速でJB74純正の5速と同じギア比。そして5速においては3,300rpmで120km/h巡航が可能となる。
さすがにJB74とはいえこのギア比で走るの辛いだろうが、ターボ化したJB74ではトルクフルなエンジン特性を活かしてハイギア化はなかなか良いのでは?
ちなみにジムニーのメーター速度はトランスファーの出力軸の回転パルスから計算しているので、最終減速比を変更すると実速度に対してスピードメーターの誤差が大きくなる。誤差が大きくなると車検に通らなくなるので注意が必要だ。
メーター誤差の話はコチラの記事で解説してます。
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JBジムニーギア比まとめ
JB系ジムニーのギア比を横並びに比較するために記事化したのだが、意外とギア比流用カスタムの妄想が膨らむ自分にとっては面白い考察となった。
街乗りの人、峠の人、高速道路ロングドライブの人で理想のギア比は異なるので、ギア比流用カスタムをすると思いのほかハマるジムニーができるかもしれません(JB23のハイギア化はまさに自分にはドンピシャ)。
参考になれば幸いです。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。