リフトアップなどで狂ってしまったステアリングセンターを調整するために、ステアリングロッドの調整方法を解説する。
間違っても、ステアリングを引っこ抜いて、センター狂った分補正して差し込まないように!
リフトアップすると狂うステアリングセンター
リフトアップするとステアリングセンターが狂う理由を、ステアリングの簡単な模式図で説明する。
ジムニーのボールナット式ステアリングという仕組みを採用しており、上から見ると下図のような仕組みになっている(すごく適当な絵だけど)。
ステアリングを切るとピットマンアームがステアリングロッドを介して左タイヤのナックル(タイヤ)を動かし、その動きがタイロッドを通して右のナックル(タイヤ)も動かして両輪に舵角がつく仕組みになっている。
リフトアップしてステアリングセンターが狂う理由として、ピットマンアームとナックルの位置関係がキモである。
その関係性を理解するため、正面からステアリング機構を眺めてみる。左が純正車高、右がリフトアップである。
リフトアップするとステアリングセンターがずれる原因は、リフトアップによりナックルとピットマンアームが離れて距離が大きくなってしまうが、ステアリングロッドの長さは一定なのでピットマンアームがナックルに引っ張られた状態になり、タイヤは真っ直ぐなのにステアリングが切られた状態になってしまうのだ。
そこで必要なのがステアリングロッドの長さの調整。
ステアリングロットを長くすることで、ナックルとピットマンアームの位置関係を適正化し、ステアリングのセンターを調整するのだ。
ちなみに、タイロッド(緑の棒)も長さを調整できるが、こちらはタイヤのトーイン(車を上から見てタイヤハの字)/トーアウト(車を上から見てタイヤが天地逆さのハの字)の調整なので、絶対に触らないこと。
アライメント測定器なしてトーイン/トーアウトいじると、ハンドリング悪化や偏摩耗の原因になってしまう。基本的に新車状態で基準値に調整されているので、よっぽどタイヤの端っこだけ摩耗が進むなど偏摩耗がない限り、いじる必要はない。
※※注意※※
上記の説明は簡単のためにラテラルロッドの動きを無視してます。
本来ならホーシングはラテラルロッドの支点を中心に円運動するし、リフトアップするとラテラルロッドの長さも補正するので、ステアリングへの影響はもっと複雑。とはいえ、この記事では「リフトアップするとピットマンアームとナックルの距離が変化してステアリングセンターが狂う」と理解するだけで十分です。
また、自動車の設計ではラテラルロッドとステアリングロッドをできるだけ同じ長さかつ平行に近づける設計をすることで、サスペンションが伸びた時のステアリングへの影響を最小にするようになってます(そうしないとストロークしただけでステアリングが切れて乗れたものじゃない)。
しかしながら、厳密に同じ長さかつ平行することは設計の制約上不可能なので、その差分がリフトアップした時のステアリングセンターのズレとなって現れるのです。(リフトアップしてもフロントにはラテラルロッドアップブラケットなどの補正パーツを使用しないのはこのためです。フロントラテラルロッドの角度を補正する場合は、必ずステアリングロッドの角度も合わせて補正しなければなりません)
JB64/JB74ジムニーはパワステ制御にも影響
JB64/JB74ジムニーのパワステは、直進安定性を向上させるため、ステアリングをセンターに戻そうとするパワステ制御が入っている(ジムニーが採用するボールナット式ステアリングはこの復元力が弱いため)。
ということで、ステアリングセンターがずれた状態で走っていると、タイヤは真っ直ぐを向いていても車のコンピューターはステアリングが切れた状態と判断し、ステアリングをセンターと戻そうとするので直進性が損なわれるのだ(手放しで真っ直ぐ走らなくなる)
新型ジムニーのリフトアップ車で真っ直ぐ走らない理由は、これが原因の場合もある。
また、ステアリングを引っこ抜いて刺す位置で補正してはいけない理由は、このステアリングのセンターを検知するセンサーが補正できないからである。
ジムニーのステアリングシャフトにはセンターを検知するセンサーが取り付けてある。
リフトアップしてステアリングロッドの補正をしないと、タイヤが直進状態でも車はステアリングをが右に切れていると判断して、パワステで左に切ろうという制御が働く。
というわけで、ステアリングを引っこ抜いて刺す位置でステアリングセンターを調整しても、ステアリングシャフトはずれたままなので、やはり真っ直ぐ走らない車になってしまうのだ。
というわけで、リフトアップで狂ってしまったステアリングセンターは、必ずステアリングロッドで調整しましょう。
JB64/JB74ジムニーのステアリングロットの調整方法
必要工具
- 24mmスパナレンチ(モンキーレンチでも可)
- 21mmスパナレンチ(モンキーレンチでも可)
- ラスペネ
- 鉄パイプ(とんでもなく硬いのでレンチ延長用)
ロックナットが硬い場合は鉄パイプでレンチ延長。それでも緩まない場合はラスペネ吹いて、浸透するまで30分ほど放置してから再チャレンジ!(48Rもラスペネ吹いて鉄パイプかましてやっと緩んだレベル)
また、片口のスパナを準備しておくとパイプ延長しやすい(両口スパナだとパイプが入らない)。
手順①調整の目安にマーキング
納得するまでセンター出しするには、終盤は結構細かく微修正するので、マーキングで基準点を作っておくと調整作業がしやすい。
↑ちょっと見難いけど、白マーカーで最初の位置をマーキングしておく。
手順②ステアリングロッドのロックナットを緩める
このロックナットが硬い!
最初レンチだけでは歯が立たなかったので、鉄パイプで延長して、それでも緩まなかったので、ラスペネ吹いて浸透した頃に作業してなんとか緩めることができた。
具体的な作業としては、ステアリングロッドを21mmのレンチで固定して、24mmのレンチでロックナットを緩める。
↑こんな感じでレンチをラテラルロッドに当てて周り止めにすると作業がしやすい(ステアリングロッドを周り止めしなくても作業はできそうなのだが、あまりの高トルクにロッドエンド痛めそう。。)
運転席側は逆ネジなので、時計回りで緩める。
助手席側は正ネジなので、反時計回りで緩める。
いや〜それにしても硬かった!JB23のときは苦労しなかったので、個体差でめちゃトルクで締まっていたと思う。新車ラインで組まれたのに、整備書以上のトルクで締められてるなんてままあることなので。
手順③ステアリングロッドを調整する
ロックナットを緩まえたら、ステアリングロッドを回転させてハンドルを調整する。
ステアリングロッドを車体正面から見て
- 下に回転させるとハンドルが左へ動く
(ステアリングロッドが縮む) - 上に回転させるとハンドルが右へ動く
(ステアリングロッドが伸びる)
という動きをするので、ハンドルのセンターを調整しよう。
1インチアップ程度なら、90度くらい回転させて様子を見る。
手順④試走してチェック
試走してステアリングセンターが出ているかチェックする。
まだステアリングセンターが出てないようなら手順③に戻る。
調整のイメージだけど
- 90度回転させる
- 足りなければもう一回90度回転させる
- 反対側へ行き過ぎれば45度戻す。
- また反対側へ行き過ぎれば22.5度戻す。
みたいな感じで、マーキングを目印に調整幅を小さく追い込んでいけば最終的にセンターへ収束できる。
手順⑤ステアリングロッドのロックナットを本締めする
最後にステアリングロッドのロックナットを締め込んで、調整完了。
JB64/JB74ジムニーのステアリングロッド調整まとめ
48Rのジムニーの場合はロックナットが緩んでくれず、本当に苦労させられた(工具壊れるかとおもた)。
ロックナットの苦労さえなければ、ステアリングロッドを回して試走するだけなので、作業自体は簡単だ。
リフトアップしてステアリングセンターが出てない人、真っ直ぐ走らない人はステアリングロッドが原因なので、早めに調整しましょう。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。