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【スタッドレス選び】ブリザックDM-V3かVRX3どちらを選ぶべきか?【ジムニーJB23JB64JB74JB34冬支度】

高性能スタッドレスタイヤの代名詞と言えばブリヂストンの「ブリザック」。

お高めの価格ながら雪国で装着率No.1ということからも市場からの支持は絶大なタイヤである。

48Rもスキー場に通い始めたころからずっとブリザック信者なのだが、ジムニーに合うブリザックとしてはSUV用の「DM-V3」に加え、乗用車用の「VRX3」にもSUV向けサイズが追加発売され、どちらのパターンからでも選べるようになった。

ブリヂストンがなぜSUV向けに「DM-V3」と「VRX3 for SUV」の2パターン保有しているかというと、実はスタッドレスには「雪上向き」と「氷上向き」があって、それぞれ得意とするステージが違うからである。

今回の記事では、スタッドレスになぜそのような違いがあるのかや、ジムニーに履く場合、どちらがオススメかを詳しく解説します。

 

「VRX3 for SUV」と「DM-V3」の違い

サイズによってはVRX3とDM-V3から選ぶことができるのだが、両者の性能の違いについて解説する。

 

VRX3とDM-V3性能の違い

冬道のどこを得意とするかで、VRX3とDM-V3の棲み分けがされている。

以下、BSホームページの引用だが、

  • 街乗りからレジャーなら「VRX3」
  • 険しい雪道・悪路で使用するなら「DM-V3」

という謳い文句で売り分けられている。

BS公表のせいのチャートをみると、「ICE」と「効き持ち」でVRX3がDM-V3を大きく上回っており、また「静粛性」「低燃費」「DRY」など、乾燥した一般道の性能でもVRXが上まっている。

逆にDM-V3が得意なのは「SNOW」性能。除雪されていない深雪路面から積もった雪がまだ硬くなってない状況ではDM-V3のほうが優れたグリップを発揮する。

 

以下、 BSの実車テストの結果も貼っておく。

ICE路面ではVRX3が優位。

 

次に雪上テスト。

踏み固められた圧雪路面では、VRX3=DM-V3となっており、一般的なシチュエーションではVRX3のほうが冬道全般に強いという結果。

(SNOWに強いDM-V3が雪上ブレーキテストでVRX3に勝てなかった理由はちゃんとあるので、後述する)

 

というような感じで、BSではざっくり氷上向け、雪上向けでVRX3とDM-V3を売り分けているのだ。

 

 

雪上性能と氷上性能は背反

ただの広告解説だけではブログとして面白くないので、スタッドレスタイヤについてもっと掘り下げて解説する。

一般的にスタッドレスというとアイスバーン(氷上)や雪道(雪上)に強いタイヤというイメージだが、「氷上性能」と「雪上性能」は二律背反の関係になっており、どちらかを高めると一方が犠牲になるという特性になっているのはご存知だろうか。

したがってタイヤ設計者は「氷上性能メインで開発しつつも雪上性能は犠牲にしない」とか、「雪上性能メインだが、氷上でも安全性はこれくらいはキープする」など、氷上性能と雪上性能を割り振りながら設計しているのだ。

 

つぎになぜそのような二律背反が起こるのか、雪上と氷上でのグリップの仕組みから解説する。

 

雪上でグリップする仕組み

雪上では柔らかい雪をタイヤの溝で踏み固めて歯車の歯のようにして、タイヤの溝と噛み合うことでグリップを得ている。

このグリップする仕組みを「雪柱剪断力」といい、溝面積が大きく溝深さが深いほどより大きな雪柱をつくれるので、雪柱剪断力は強くなる。

 

ジムニー界隈ではマッドテレーンタイヤは氷はだめだけど、雪は走れるみたいなことを聞くかもしれないが、それはゴツゴツした溝の深いパターンが雪をしっかりと踏み固めることで雪柱剪断力を発揮し、グリップするからである。

↑ブリヂストン デューラーM/T

 

 

氷上でグリップする仕組み

一方、硬い氷上では雪上とは全く違った2つの仕組みでグリップする(氷上だけでなく、タイヤパターンがつかないほど踏み固められた圧雪でもほぼ同じ)。

 

まずはなぜ氷上は滑りやすいのかというと、タイヤが地面に接触した瞬間、接地圧や摩擦力により氷が溶けミクロな水膜が発生し、それが潤滑効果を発揮してとても滑りやすくなるのだ。

たとえば、ウォータースライダーのような平滑面に水膜があると摩擦なく滑るのと似たような原理である。

 

これに対し、ブリヂストンで採用されている発砲ゴムはゴム内にミクロな穴が多数存在し、そこに水を吸い上げることで水膜を除去しゴムと氷上の凝着力でグリップさせている(BS以外も給水ゴムなど似たような仕組み)。

また、凝着力は接地面積が大きいほど大きな力になる。

ちなみに、北海道の旭川のような超寒冷地で車を運転したことがある人なら経験があるかもしれないが、気温-15度くらいだとタイヤが接地した瞬間の水湧きが極めてすくないため、アイスでもめちゃくちゃグリップ良かったりする。氷が滑るのではなく、その境界に存在する水膜が悪さしているのを実感する瞬間である。

 

 

もう一つの氷上グリップの仕組みは、エッジ効果である。

これはスキーのエッジでグリップするのと同じで、ゴムのエッジ(角)で氷上表面の微妙な凹凸を引っ掻いて物理的にグリップする手法である。

そのため、ほとんどのスタッドレスには細かいサイプが沢山刻まれていて、たくさんのエッジがみられるパターンになっている。

エッジが多ければ多いほどエッジ効果を発揮できるのだが、あまりエッジを入れすぎるとトレッドのブロック剛性が下がりすぎ、ブロックが倒れ込むことで接地面が浮いて接地面積が減少し最初に説明した凝着力グリップが失われるデメリットが発生する。よってギザギザサイプにしてブロックを支え合うことで倒れ込みを抑制したり、上のパタンの黄色丸のようにサイプをわざと途中で止めたりしてなるべくブロックの剛性を落とさないよう、タイヤメーカーは工夫を凝らしている(上の写真はVRX3のものだが、BSスタッドレスは深さ方向にギザギザになっている3Dサイプで倒れ込みを最小限にとどめている)。

 

背反する雪上性能と氷上性能

さて、雪上グリップは雪中剪断力で溝面積が大きい方がグリップすると説明したが、逆に氷上では氷となるべく多くの面積で凝着グリップを発揮したいので、逆に溝面積は少なくトレッドの実接地面積は大きい方が良い(雨も走る必要があるので、溝を減らすのも限度があるが)

つまり、溝を大きく取りたい雪上性能と、氷上との接地面積を大きくしたい氷上性能は背反の関係にあるのだ。

多くの人はスタッドレスタイヤは雪も氷も走れると思っているが、タイヤメーカーの設計者はこの二律背反を気にしながら、どちらの性能も高い次元でまとまるよう設計しているのだ。

 

これらを踏まえた上でVRX3とDM-V3をもう一度みてみると、タイヤパターンから設計思想が読み解けるはずだ。

 

雪上向けとされているDM-V3はより大きな溝面積で雪柱剪断を意識したパターンになっているし、VRX3は溝面積が少なく氷との接地面積とエッジ効果を狙ったパターンになっているのが見てとれる。

(ちなみに、我が家のジムニーに履かせている215/70R16 DM-V3の溝深さは10mm、ハイエースに履かせている215/70R16のVRX3は溝深さ8mmなので、DM-V3は溝深さでも雪柱剪断力を意識した設定になっている)

 

ここで上のほうで紹介した雪上ブレーキ性能でSNOWに長けているはずのDM-V3がVRX3と同等だった答え合わせをすると、一般道の雪上はほぼ踏み固められていて溝の間に雪が入り込む量が少ないため、雪柱剪断力の寄与が少なくなったためである。もし新雪で登坂試験などをすると、DM-V3のほうが良好な結果が出るはず。

 

 

ジムニーには
「DM-V3」と「VRX3 for SUV」
どちらがオススメ?

 

スキー場往復や雪の市街地にはVRX3

スキー場往復や通常の市街地の雪道なら、絶対にアイスバーンに強い「VRX3」を推したい。

スキー場のアクセス路は雪が降っても多数のクルマが通ってすぐに踏み固められるし、急な上りではホイールスピンするクルマ続出でさらに踏み固められた雪が磨かれてつるつる状態。そんな時はアイシーな路面に強いVRX3が得意である。また、一旦溶けた雪が再度凍結してアイスバーンになった場合も、VRX3のゴムやパターンのほうがグリップが良くて心強い。

本州の人なら想像がつくかもしれないが、志賀高原に上がる道路のように急登な上に凍結しやすいスキー場にアクセスするなら氷上性能重視でスタッドレスを選ぶ方が良い。特に志賀高原の下りの坂道がアイスバーンなんて日は、そこいらで事故っているのでグリップするスタッドレスはまさに命綱である。

 

また、雪上性能にしても、たまに駐車場が除雪されてなかったり、駐車している間に周りに雪が積もったりするが、その程度の雪道ならVRX3でも全然問題なし。

 

また、VRX3はドライ性能が高いのも大きなメリット。関東から長野のスキー場へ行く場合を考えると90%くらいはドライ路面を走ることになるが、VRX3はドライ路面でもスタッドレス特有の剛性感のなさがなく、ハンドリングのレスポンスも良くて運転しやすく疲労感も少ない。

 

 

冬季林道や除雪の入らない雪道に行くならDM-V3

「DM-V3」の「VRX3」に対するアドバンテージは雪上性能。

冬でもジムニーで林道ツーリング行くならDM-V3を選ぶほうが有利である。また、除雪があまり入らず交通量も少ない地域だと道路の雪は結構柔らかいので、DM-V3のほうがグリップが良い場合も多いだろう。

また、パターンの見た目的にはDM-V3のほうがブロッキーでジムニーの四駆のイメージにあうパタンデザインである。

 

とはいえ、DM-V3履いたJB23で新雪アタックしたときは、平坦路では20cmほどの積雪でも力強く進んでくれたが、登りはホイールスピンしまくりで坂の途中で登れなくなってしまった。登れなくなったらバックで坂の下に戻ってまた勢いをつけて登りなおすなど、結構苦労させられた。

本当に新雪アタックを楽しむなら、チェーン欲しいね。

 

 

「VRX3 for SUV」と「DM-V3」のジムニーに合うサイズ

VRXとDM-V3でジムニーに合うサイズを下表にまとめてみた。

外径[mm] DM-V3 VRX3
175/80R16(JB64純正) 686 X
195/80R15(JB74純正) 693 △(DM-V2) X
215/70R16 709
225/70R16 723
225/65R17 724
235/65R17 739
245/65R17 751 X

純正サイズだとDM-V3しか選択肢なし(JB74の純正サイズは全世代のDM-V2だが、、、)。

リフトアップしたジムニーに人気のサイズである「215/70R16」と「225/70R16」ではVRXとDM-V3どちらからでも選択可能なので、自分の用途にあった選択が可能だ。

 

また、参考にこれからブームがくるかもしれない17インチも表に載せておく。

今まではジムニーのハブサイズの特殊性からほぼ15インチか16インチしか選択肢がなかったのだが(17/18インチは超レア)、2024年にレインボーオートさんからホイールの超大手「ENKEI」コラボで17インチホイールの販売が開始!(JB74向けのみ)

ホイール大手の「ENKEI」も参入したこともあり、このホイールに端を発した17インチブームがこれから来るかもしれない。17インチだとさらにタイヤ周りが大径でカッコ良くなるので、カスタムジムニーとの親和性は高いはずだ(48Rも235/65R17のスタッドレスが欲しいが、まだまだ17インチホイール高くて手が出せず。。)

 

 

ジムニーのスタッドレスにはVRX3かDM-V3かまとめ

メカニズムで二律背反を語ってきたが、実際のところ現代のスタッドレスタイヤはかなり高性能なので、VRX3でも雪上性能は高いし、DM-V3でもアイスバーンでしっかり食うし、普段使いで不具合は全くないのが実情である(過去48RがDM-V1、DM-V2、DM-V3、VRX2、VRX3履いてきた経験から)。

実際のところ「強いて言えば」程度の差なのだが、とはいえ仕組みを知った上で少しでも自分にとって良いタイヤを選んだほうが納得感あるでしょ?

皆様のスタッドレスタイヤ選びの参考になれば幸いです。

 

他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。

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