久しぶりの入門記事。今回はバインディングです。
最近はスプリットボードの使用回数もめっきり減ってきているんだけど、昔からスプリットボードの記事をよく書いてたせいで、今でも質問をちょくちょく頂きます。
で、何度も質問を頂くので、ブログ読者の知りたい傾向が見えてきたんだけど、ネットで調べて質問する人ってたいてい『これからスプリットボードを始めたいんだけど、まわりに詳しい人がいない』というスプリットボード初心者層が多いのよね。
さらには、板はともかく、バインディングって色々種類があるし、インターフェイスとか何が必要で、どう揃えたら良いのか、イマイチよく分からない、教えて下さい!って質問が大半。
確かにスプリットボードって、板にバイン乗せたら良いだけではなく、なにやら板とバインの間によく分からないモノ(インターフェース)がついているし、その種類も色々あるので、初心者にはけっこう難しいよね。
ここはいっちょ読書のご希望に応えて、入門記事バインディング編といきますか!
(初心者向け内容です、知ってる人には当たり前の話ばかりです)
スプリットボードバインディングについて
まずは基本から。
インターフェースとは
スプリットボードの上に乗っているソリッドボードでは見かけないパーツ達。
インターフェースという部品で、スプリットボードバインディングを板に取り付けるパーツです。
ネジ穴を利用せず、ピンやレバーロックでバインを固定できるので、
・ライディングモード(滑るモード)
・ツアーモード(シールをつけてハイクするモード)
への切り替えが素早くできます。
インターフェースの種類
インターフェースには種類があって、同じ種類のインターフェースとバイン同士しかつきません。
インターフェースの種類は現在は大きく次の3種類に分類されます。
①Voile
②Karakoram
③Plum
板については、スプリットボード用にネジ穴が規格されているので、全てのスプリットボードは同じホールパターンです。
上記どのインターフェースでもつけられます。
では、一つ一つねっとりと見ていきますか。
スプリットボード用バインディングの種類
①Voile
Voile規格は現在は大きく次の3つの方式に分類できます。
ⅰ.Voileのスライダートラックという部品と普通のバインディングを組み合わせるタイプ。
ⅱ.インターフェースはVoileのものを使い、バインのみ専用タイプ
ⅲ.ライドモードインターフェースはVoileのものを使い、ツアーモードインターフェースとバインは専用タイプ
ⅰ.Voileスライダートラック+ノーマルバイン
Voileスプリットボードインターフェース初期からの方式。
ライドモードのインターフェースにスライダートラック(バインを取り付ける台座)またはスプリットボード専用バインをスライドさせて取り付けて、ピンで固定する方式。
使い方概略は以下の動画がわかりやすい。
↑のようにスライダートラックにノーマルバインを取り付けて使用。
この方式は手持ちのバインが使用できるため、25000円程度ほどのVoileのインターフェースキットを購入するだけでOK。このキットにはハイク用のツアーモードのインターフェースも含まれているので、スプリットボードとこのキットと手持ちのスノーボードバインディングがあれば、スプリットボードができる。
スライダートラックの上にバインを取り付けるため、少々高下駄感がでてライディングフィールを損なうのが欠点だけど、とりあえずはスプリットボートを安価に試してみたい、一気に専用バインまでは手が出ない場合などはこれが適している。
バインの固定は今となっては時代遅れに見えるピン式だけど、この方式はシンプルで壊れない。山で使う道具としては超重要。高下駄感、重いとか欠点はあるけど、とりあえずスプリットボードを楽しむ分にはトラブルもなく良い道具だと思います。
後々専用バインに買い換えても、スライダートラックや、ツアーモードインターフェースが不要になるだけで、インターフェースの買い替えの必要はない。
(このキットが全部盛りなので)
以上、まとめると、
メリット
・安価
・今手持ちのバインをそのまま使える
・ピン式固定はシンプルなので壊れにくい
デメリット
・重い(スライダートラック+バインの重量)
・スライダートラックの上にバインを取り付けるため、高下駄感。
ⅱ.インターフェースはVoileのものを使い、バインのみ専用タイプ
Voileキットの高下駄感の欠点を解決するのがスプリットボード専用バインディング。
バインディングのベースプレート自体がスライダートラックの機能を兼ねている。
これによって、ベースプレートの高さが普通のスノーボードバインと変わらないくらいに。
ライディングフィールが大きく改善!
また、重量もⅰ.のスライダートラックとノーマルバインの組み合わせより軽くなって、ハイクアップに有利。バックカントリーでは長距離を歩く場合も多いので、道具は軽いにこしたことはない。
インターフェースへの固定は従来と同じピンを使用。ピンは面倒と侮ることなかれ。多少面倒だけど、シンプルで壊れないメカは山では超重要!山でトラブルはシャレにならない事態になることも。特に登り返して帰るルートだと、トラブルは悲惨なことになるかもよ。。
専用バインは老舗Voileだけでなく、サードパーティからもリリースされている。
・Voileの専用バイン
ちょっと重めだけど、安価。
雪崩の際、一気にストラップを解放するコード(上画像のオレンジ)が付いているのが特徴。
・Spark R&D Blaze or AfterBurner
Sparkの専用バイン。今はピンを使わないTESLAシステムが最新だけど、従来のピンを使用する方式も、現行ラインナップに残っている。
アルミの削り出しベースプレートで軽量高剛性!
個人的には、ピン式はシンプルで壊れにくいので、山で使う道具としては、今でも十分魅力的と思っとります!(アフターパーツの軽量アルミピンは曲がるし磨耗するので注意)
これらのバインと組み合わせる場合は、スライダートラックが不要なので、ライドモードとツアーモードのインターフェースnがセットになったキットを購入。ちょっと安価。
まとめると、
メリット
・ベースプレートがスライダートラックを兼ねているのでベースプレートをノーマルバイン並みに低くできる。
・スライダートラックを使わないので軽量
・ピン式固定はシンプルなので壊れにくい
デメリット
・やや高価(とはいえ、ピン式は特価で売っていることもあり)
ⅲ.ライドモードインターフェースはVoileのものを使い、ツアーモードインターフェースとバインは専用タイプ
Voileのインターフェースを利用しながらも、固定方式やツアーモードインターフェースに独自の方式を投入してきたSparkの最新バイン、TESLA T1システム。
動画がわかりやすいんだけど、従来からバインの固定に使用していたピンがなくなって、ワンタッチで固定できるようになった。
簡単操作でモードチェンジにかかる時間を大幅短縮!
山では爆風極寒で1秒でも早く抜け出したい時もあるので、チャチャッとモードチェンジできる機能性は重要。特に、スキーヤーと行動すると、スプリットボードはモードチェンジの手間の分、行動が遅れやすいので。
ただ、一部ではロック機構が壊れるとの報告もあり。信頼性という面では、まだまだピン式に軍配があがる。
購入するボレーのインターフェイスは、ライディングモードのインターフェイスのみ。これだけだとかなり安価。ツアーモードインターフェイスはTESLA T1バインに付属しているので、購入不要。
まとめると、
メリット
・ベースプレートがスライダートラックを兼ねているのでベースプレートをノーマルバイン並みに低くできる
・スライダートラックを使わないので軽い
・TESLAシステムによるモードチェンジの早さ
デメリット
・やや高価(とはいえ、ピン式は特価で売っていることもあり)
・従来のピンタイプに比べると若干信頼性が落ちる
ちょっと番外、K2 KWICKER BC BINDING ステップインスプリットボードシステム
ブーツから変えなければいけないけど、K2もVoileのライディングインターフェイスに独自バインに、独自ツアーモードインターフェイス。しかも、ステップイン。
ステップインブーツは重いけど、バインは超軽量なので、システム全体で見れば軽量化されます。
現場で使っている人を見たことないので、詳しい使い勝手などは知りません。
48Rはスプリット初期はステップインでアキュブレード+サンライズヒルオリジナルライトレールバイン。
ステップインは脱着でいちいちしゃがまなくていし、バックカントリーでは付け外しも多いのでステップインが楽。
Voile系だけでやたら長くなってしまった。ふう。
昔からある規格だけに、派生も多いからね。
まだまだ紹介してないマイナーバインもありますが、とりあえずメジャーところだけご紹介でした!
②Karakoram
48Rの現在のメインでもある、Karakoram Primeシステム。
Voile式ではない独自のスプリットボードインターフェース。
Voileインターフェースの制約から解き放たれたため、ライディングフィールを高める工夫や、モードチェンジのしやすさなど、独自の工夫が凝らされている。アメリカンガレージメーカーのクラフトマンシップを感じることができる一品(アメリカのガレージメーカーというと、ビールサーバーが置いてあるイメージだけど、Karakoramも例に漏れないようだ)
特徴は何と言っても剛性感の高さ。
このメーカーのスプリットボードのコンセプトはスプリットボードの欠点とされていたライディングフィールの向上にある。
スプリットボードはどうしても割ってあるのでトーションを感じにくい(自分はあまりわからないが、ベテランの人曰く)が、Karakoram Primeはアルミのゴツいライディングインターフェースと独自のバイン固定システムでこの欠点を克服している。SOLID RIDE !!
もちろん、ベースプレートの高さも低く設計されているので、ライディングフィールもグッドです。
バインのロックレバーを操作すると、バインのピンがインターフェースに刺さる仕組みで固定される。
その際、このゴツいインターフェースをボードの幅方向にくっつける方向に力が加わるので、スプリットボードの剛性が高まる仕組み。詳しくは動画で。
スプリットクリップも板を挟み込む方向に力が加わるので、剛性アップに一役買っている。
SOLID RIDEの代償として、重量は重い。特にインターフェースが重く、Voileが樹脂製のシンプルなインターフェースに対して、Karakoramはアルミ削り出しのゴツいパーツを使っている。バインを軽く作っても、システム全体の重量で見ると、Sparkの軽量モデルarcに対して200gほど重量増。
自分は200gが効くようなシビアな山行はしないので問題ないが、体力に心配のある人や、ロング山行に重きをおく人にとっては小さくない重量増だ。
ツアーモードに関しては特に大きなアドバンテージは感じない。トゥ側の固定は楽だけど、ヒールライザー(ツアーモードで登りやすく踵を上げる機構)はSpark R&Dのほうが使い勝手が良いかも。
其のほか、Karakoramの魅力と言えば、メカメカしさ!
アルミ削り出しやら、カーボンパーツやら、なにやらかっこいい合体メカで、道具ヲタの心をくすぐります!(笑)
信頼性に関しては、ジェレミージョーンズ先生がヒマラヤで使ったり、ザビエル師匠が南極で使っているので問題ないでしょう。
自分もPrimeの前作SPLIT30からのユーザーだけど、複雑なメカのわりにトラブルはゼロです。
価格はかなりお高めで、トップモデルは14万円也。
加工にお金のかかる削り出し部品が多いし、組み立てはメイドインUSAの手作業。良いものを作り出すためにはガレージメーカー内で全ての作業をすることはしかたのないことだけど、思いっきり価格に反映されているようだ。
まとめると、
メリット
・剛性感!
・ベースプレートの低さ
・モードチェンジの早さ
・メカメカしくかっこいい
・信頼性
デメリット
・めっちゃ高価
・やや重い
③Plum
最近勢力拡大中のPlumシステム。メーカー事態は以前からあって、スキーの軽量テックビンディングでは老舗のフレンチメーカー。
最近はビッグマウンテン界の大物、ザビエル師匠もKarakoramからPlumに移籍しております。
(ザビエル師匠はフランス人、Plumもザビエル板を作っているロシニョールもフレンチメーカーなので、大人の事情もありそうだけど)
PlumもVoileインターフェースを使わず、独自インターフェースでスプリットボードバイン界に殴りこみ!
まだ使っている人は少なく、48Rはまだ実物を見たことないけど、聞くところによると軽くて使い勝手が良いらしい。
使い方は動画参照。
ライドモードとツアーモードの切り替えはレバー一本。見た感じなかなかのアイデア商品ね。
さらに、Karakoramに負けず劣らず、削り出しパーツ、カーボンパーツなどかっこいい部品が満載!その分お値段にも跳ね返って、12万円でございます。
まとめると、
メリット
・レバー一本操作によるモードチェンジの早さ
・ベースプレートが低い
・メカメカしくかっこいい
・軽いらしい(重量は調べても出てこなかった。。)
デメリット
・めっちゃ高価
・スプリットバインとしては新しいメーカーなので、信頼性は??
まとめ。結局なにが良いの?
文句なくSpark R&Dです。
多少KarakoramやPlumが良かろうが、Sparkなら十分な性能で、バイン5万円にインターフェースが1万弱。
対してKarakoramもPlumも余裕の10万越え。道具ヲタならともかく、普通にスプリットボード初めるなら、そこまで投資する必要性は全くない。
さらに、Sparkは日本で一番売れているスプリットボードバインで取り扱い店も多いので、補修パーツも手に入りやすい。
Karakoramなんか、48Rの場合はいちいち本国にメールしてパーツを手に入れているので、面倒くさいし日数もかかって全くオススメできません。
というわけで、初心者にオススメできるスプリットボードバインディングはSpark R&D一択でございまする。
他にもスプリットボード入門記事書いてます。