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猿でも作れる自作スプリットボード 〜 Which Even Monkies Can Make〜


スプリットボードを3台自作した48R流作成方法のご紹介。

48R流は、失敗が許されず一番難度が高くて面倒な板のカットを外注することと、打ち込み簡単なインビスキットを使うことで、日曜大工より簡単レベルで工作できます。

猿でも作れるレベルです。

 

軽いノリで書いてみたら、やたらと長くなったので、目次や右下のTOPまで戻るボタンをうまく活用してください。

 

それでは行ってみますか、猿スプ!

 

どんな板を割るか

絶対条件はお気に入りの板であること!

バックカントリーは僅か数ターンの極上斜面のために、数時間も汗水鼻水たらして登るなんて日常茶飯事。そんな苦労してたどり着いた斜面を、大して気に入ってもない、ガレージでほこり被ってたような板で滑って楽しいだろうか。

というわけで、普段ゲレンデやバックカントリーで使っていて楽しい板でスプリットボードを作ることを強くオススメする。

セルフカットスプリットボードは手持ちの板があれば安く作れるのがメリットだが、それはお気に入りの板があった上での話。

自作の最大のメリットは、市販品スプリットボードの選択肢に限定されずお気に入りの板でスプリットボーディングできることなのだ。

 

その上で実用上のアドバイスをすると、柔らかい板はハイクアップ時にしなりすぎて歩きにくい。ある程度しっかりしたフレックスの板を選んだほうが良い。アバウトな表現だが、ソリッドボードで柔らかめのフレックスを売りにしているものはスプリットボードに適さない(知り合いの例でいうと、MOSS SNOWSTICK U4など、スプリットボードにすると柔らかすぎた)。また、柔らかい板はスプリットボード化することで強度が下がるので、当然折れやすくなる。

 

今回は超お気に入りのamplidのUNW8を割る。

ゲレンデからバックカントリーまで超出撃頻度の高いお気にりの板。

どれだけ好きかというと、今回セルフカットのスプリットにしてしまうので、ソリッド用に同じ板をもう一台購入したほどなのだ。

 

 

 

 

必要工具

DIYキット

VoileのDIYキットが手に入りやすい。穴開け位置を決めるテンプレートもセットになっている。

 

 

48R流の場合、DIYキット付属の鬼目ナットは使用しない。後述のsnoliのインビスキットのほうがはるかに作業が簡単で信頼性も高い。

 

48RはKarakoramのスプリットボードバインを使用しているので、KarakoramのDIYキットを使用。こちらは海外通販で購入可能だ。

しかもPDFデータでテンプレートをもらえるので、何回でも自作可能。

 

そのほか、karakoramのDIYキットはスプリットボードフックがついていないので、別途購入が必要(Karakoramのインターフェイスはバインに付属してくる)。

また、VoileユーザーもKarakoramのクリップを使うことで板の結合力を上げることができるのでオススメ。

 

油性ニスと筆

切った端面やドリルで穴をあけた箇所の防水に使う。

1台目は真面目に2液性のエポキシで端面をコーティングしていたのだが、2台目から簡略化で普通の油性ニスに変更。特に不具合はないので、油性ニスを筆で塗るのが簡単で早い。

 

電動ドリル

穴あけ作業に絶対必要。コードレスは高いので、電源が確保できる場所なら安いコード付きがオススメ。穴あけ作業だけなので、RYOBIの安い機種で十分。

 

 

ドリルビット

使用するドリル径は4.8mmと7.9mm。

4.8mmはスプリットフック用で、7.9mmは上の画像の一番左のインビス用ドリルビットの下穴用。

 

そしてテーバー穴をあけるための面取りドリル。

 

 

 

Snoliのインビスキット

DIYスプリットボード作成のキモのパーツ

このインビスのおかげでカットの次に難しいインビス設置が超簡単になる。


「専用ドリル」で穴を開けて、「ソール付きのインビス」を圧入するだけ。しかも専用ドリルはストッパー付きなので、穴を深く開けすぎる心配も皆無。

円錐状のベースがネジを締め込むほど強くボードに密着するので、超強力固定だ。

インビスの高さが7mmと9mmがあるが、スノーボードなら7mm一択。9mmは高すぎてボードから飛び出してしまう。

海外通販でしか手に入らないが、送料13.75ドルで日本に送ってくれるのでそれほど入手は難しくない。

価格はインビスが1個1.5ドル、専用ドリルが64.95ドルだ。

セルフカットスプリットボードの作成難易度を大幅に下げてくれる逸品。

 

 

接着剤

コニシのウルトラ多用途ボンドソフトがオススメ。

自作スプリットボードにも対応するくらいウルトラ多用途なボンドです。

 

クランプ

ボードを挟める幅のクランプがあると便利。

 

 

 

やすり

安いので十分なので、金やすりと紙やすり。

 

カッター

よく切れる大きめのカッター推奨。

 

 

ポンチ

穴あけの位置決め用に。

ハンマー不要のオートセンターポンチが便利で確実。

 

 

ボールピンハンマー

叩くところがボール状になっているハンマー

チップクリップのリベットを打つときに使う。

 

 

レンチ類

スプリットフックの固定に使う。なんとインチ規格の工具。

「3/8インチのコンビネーションレンチかソケットレンチ」と「1/8インチの六角レンチ」が必要。

 

 

以上、必要なものはこんなところです。

 

 

 

作り方

手順①板のカット:外注おまかせです

マンション住まいの48Rには騒音や作業場所の確保が困難なので、板のカット作業は外注している。

白馬のばんやクラフトさんでカット依頼可能。

工賃は6480円(昔は2000円だったのだが、大変な作業なのでさすがに割に合わないですよね)。


気持ち良いくらいまっすぐキレイにカットされている。さすがオーダーメイドスキーのばんやクラフトさん。

手間がかかるし失敗の許されないカット作業を外注できると、後の作業は比較的簡単なので一気にスプリットボード作成のハードルが下がる(気持ち的にも)。

 

 

手順②カット後の処理:ヤスリで仕上げる

先端が尖っていると危ないので、金やすりで丸める。

 

また、カット面のソールも尖っていると欠けたり凹みやすいので、120番のサンドペーパーを45度くらいで当てて、ざっくりと角を落とす。
市販のスプリットボードは内側に金属エッジがあるのに、自作では内側エッジがない上に角を丸めるの?と思うかもしれないが、ハイク時にはエッジは全く使わないし、もちろん板を合わせる滑走時にも関係ない。市販スプリットボードのインエッジはハイク時に岩の上を歩いたりするときのガードくらいの役目だ。

48Rは6シーズンほどインエッジのない自作スプリットボードを使っているが、全く困ったことはない。

最後にカット面も400番のペーバーを当てて、表面をならせば下準備は完了。

 

 

手順③カット面の防水処理:油性ニスを3度塗り

ダンボールに切れ込みを入れて、こんなボードを固定する作業台を作ると作業がしやすい。

 

ニス塗布前に、ソールとトップシートには保護用の養生テープを貼った。

 

では、油性ニスを塗っていく。

上画像は右側の板だけ塗ったところ。芯材に油性ニスが染み込んで色が変わっているのがわかる。油性ニスは粘度が低いので、木に染み込むことで防水性能を高めることができるのだ。

 

 

塗布と乾燥を3回繰り返して完了。

カット面はこれで完成。

もちろん市販のスプリットボードほどは防水性能高くないので、セルフカットスプリットボードは、シーズンオフには油性ニスを塗り足してメンテナンスしよう。

 

 

手順④穴あけ作業の位置決め

まずはスプリットフックの位置決めから。

Voile方式と、Karakoram方式で位置決めロジックが少々異なる。

Voile方式のスプリットフック位置決め

キャンバーのコンタクトポイントから1inchセンター方向との指示。フルキャンバーの板なら問題ないが、フラットキャンバーやロッカーの板ならコンタクトポイントが内側に入り過ぎてしまう。

そんな場合は次に紹介するKarakoram方式で。

 

Karakoram方式のスプリットフック位置決め

こちらはキャンバーのコンタクトポイントには一切影響されない。

位置はライドモードのテンプレートとボード先端の中間地点(aboutと書いてあるので、そんなに厳密にやる必要ないと思う)。

 

 

48Rは今回はフルキャンバーの板なのでVoile方式でスプリットフックの位置決めをしたが、過去に作ったK2 Gyratorやrosssignol experienceなんかはKarakoram方式で決めている。

要はそんなに悩む必要なし。少々いい加減に作っても、ちゃんとスプリットボードになるし、違いもわからないと思う。

 

 

ツアーモードインターフェイスの位置決め

こちはらVoileとKarakoramで位置決め理論は同じ。

前が重いとハイク時にノーズが下がって歩きにくいため、上記重心位置が推奨されている。

注意点は、セットバックの大きい板の場合は前足のバインとツアーモードのインターフェイスが干渉するので、上記ポジションが取れない場合がある。その場合でも可能な限り前方にとりつけて、ノーズが重くならない位置にしたい。

 

また、VoileもKarakoramも幅方向の位置決めは指定していないので、自分で決める必要がある。

48Rの場合はウエスト部の幅方向センターではなく、5mm程度アウトエッジ側に寄せている(上の画像とは逆方向に寄せている)。

理由は、ハイク時にはアウトエッジを内側にして歩いた時、なるべくお互いの板を踏まないようにしたいからだ。

 

 

ライドモードインターフェイスの位置決め

これは特に迷う必要はなく、普段のスタンスでOK。

Karakoramのインターフェイスはビス穴が複数あり自作スプリットボードでもスタンス、アングル共にある程度調整できるのがありがたい。

 

一方、VoileのDIY用インターフェイスはスタンス、アングル調整の余地はない。

 

少々上級向けだが、スタンス、アングルを調整したい場合は、SPARK R&Dのインターフェイスで自作するのも手。

テンプレートは使えないが、現物合わせでポンチを打ってインビス位置を決めても、もそれほど難しくないだろう。

 

 

 

 

板を固定してテンプレート貼り付け

クランプで板を固定するとすこぶる作業しやすい。

 

Karakoramのテンプレートを貼っていく。

小技としては、テンプレートのセンターに穴を開けておくと位置決めの基準が見えて作業しやすい。上の画像はちょうど穴の位置に「REF STANCE」が見えるようにして、狙いのスタンス幅をだしている。

Voileのテンプレートだと透明シールなので、そんな苦労もないのだが。

 

ツーリングモードのテンプレートも同様に貼り付け。

 

 

ポンチを打ってドリル位置を決める。

オートポンチが楽で確実なのだが、持ってないので普通のセンターポンチとハンマーで作業した。
太いポンチは正確な狙いが定めにくい。。。とはいえ、多少穴がずれても、インターフェイス側のビス穴に遊びがあるので、少々ずれてもズレは吸収できる。

 

ポンチを打てば、ドリルの位置決めは完了。

 

 

 

手順⑤ドリル作業:やり直しはきかないので、慎重に!

削りすぎたり、斜めに穴あけしてしまうと修正が大変。めちゃくちゃ注意して作業しよう。

チップクリップの穴あけ

4.8mmのドリルで、さきほどポンチを打った所に穴を開ける。

ソール側にバリがでるので、カッターで削る。ソールは柔らかいので、よく切れるカッターならサクサク削れる。

 

 

スプリットフックの穴あけ

まずはトップシート側から4.8mmのドリルで穴開け。

ソール側にバリがでるので、さきほどと同様にカッターで削る。

 

お次はテーバードリルで、皿ネジが入る穴を開ける。穴が斜めになると皿ネジが上手く嵌らないし、力を入れすぎると削りすぎてしまうので、この作業は超慎重に
スプリットフックの皿ネジがソール面から0.5mmくらい下になるのが理想的。

薄い板の場合、削りすぎると致命傷にもなりかねないので、少し削っては皿ネジを当てて慎重に進めよう。

 

インターフェイスのインビスの穴あけ

トップシート側から先ほどの7.9mmのドリルで専用ドリルのガイド用の下穴を開ける。

 

ソール側のバリをカッターで削って、お次はインビスキット専用ドリルの出番。これはストッパーが付いているので、穴を深く開けすぎる心配はない。

 

専用ドリルのおかげで、簡単にインビスがぴったんこな穴を開けることができる。
ストッパーが当たってソールが少々傷着いてしまったが、どうせチューンナップ前提の板なので気にしない。

こちらも最後はカッターでバリ取りして完成。

 

 

自作スプリットボードの穴あけ個数について

今回は意図的にテンプレート通りの個数で穴あけしておらず、意図的に穴を減らしている。


赤丸の4箇所は穴を開けていない)

自作スプリットボードで懸念の強度を確保するためだ。

自作スプリットボードはフルで穴あけをすると、18個もボードに穴を開けることになる(強度にあまり関係ないチップクリップ除く)。当然強度も落ちることになり、自作スプリットボードが折れるトラブルも聞かないわけではない。

というわけで、なるべく穴あけによる強度低下を防ぐため、上の画像の○の4箇所はインビス化していない。穴あけ箇所は18個から14個に減らすことができた。

考え方としては、

・強度が最も必要なライドモードインターフェイスはフルで穴開け。

・次に強度が必要なツアーモードのつま先側のインターフェイスだが、こちらはライディングほど荷重がかからないし、snoliのインビスは強力なので、2本でもOKと判断。

・ヒール側のインターフェイスは、自分はハイク中の下りでもスキーモードを使わないで滑るので、こちらは1個でOKと判断。1個だけだとヒールリフターが回ってしまう可能性もあるので、周り止め用のスポンジを貼れば問題ない。

 

ちなみに、先代のexperience スプリットボードも同様に、でできるだけ穴を減らして強度を落とさない工夫をしている。

インビスは8個減らしの合計10個しか開けてない。

つま先側のインターフェイスは中央の1個、ヒール側に至っては0個。

残りは小さなM5ネジの埋め込みのインビスを使用している。

穴径を小さくできるので板の強度低下を防ぐことができるし、こちらはソールへ貫通しないインビスなのでソールの段差も減らすことができる(ROSSIのスノーボードはそんなに気を使う程のソールでもないのだが)

こちらは6シーズンノートラブル。

 

こんな工夫を妄想しながら作るのも自作スプリットボードの楽しみでもある。

 

 

手順⑥穴あけ箇所の防水処理

またまた油性ニスの出番。

インビスやネジの隙間から水分が侵入するので、防水のため穴開け面に油性ニスを塗る。
ここでも油性ニスがウッドコアに染み込み、防水層となってくれる。

 

 

手順⑦インビスの取り付け


インビスにソールもついているので、超簡単。

接着剤をつけて、インビスを圧入する。

本来は万力でまっすぐ挿入したいが、持ってないし購入してもその後邪魔なので、簡易的にボルトを締め込む方法をとった。

 

インビスに接着剤を塗る。

接着剤は隙間を埋める役割もある。

 


バイスでちょこっと圧入。

 

そしてボルトで締め込む。
ボルトだとトルクがかかり過ぎてしまうので、締め込みトルクに注意。

ボルトに鬼目ナットがついているのは、ネジ長調整のため(家に短いボルトがなかったので)。

繰り返すが、万力で挿入した方がまっすぐ入るし締め過ぎのリスクもないのでオススメする。

 

圧入すると接着剤が滲みでてくる。接着剤が隙間を埋めて水分から守ってくれるのだ。
はみ出した接着剤は濡れ雑巾で拭けばOK。

 

全部の箇所にインビスを取り付ければ完成。

 

 

 

 

手順⑧スプリットフックの取り付け

ボルトナットで固定する。必要工具のところでも紹介したが、インチ規格の工具なので注意。

 

 

手順⑨チップクリップの取り付け

リベットをかしめる作業があって、少々手間がかかるパート。


左側のリベットにはスペーサーを入れる。このスペーサーにチップクリップの溝がハマることでボードを固定している。

 

ボードにチップクリップとスペーサーを通したリベットを差し込む。
そしてボールピンハンマーで叩けばリベットが潰れて固定できる。

ハンマーを叩く際、リベットの頭は硬いところに押しつける必要がある。今回は駐車場の車止めコンクリートを利用したので、リベットの頭に傷がたくさんついてしまった。。

 

ちなみに、ボールピンハンマーがなくとも、スプリットボードバインディングのピンでもリベット打ち可能。
以前作成したスプリットはこの方法だったが、もうスプリットバインのピンを持ってないのでこの方法は使えなかった(最近のスプリットボードバインはピン使わないしね)。

 

 

チップクリップを取り付けたら、セルフカットスプリットボードの完成。

 

お疲れ山でした!

 

 

まとめ

セルフカットスプリットボードの出来栄え

今回はインビスの個数を減らしたので、あんまり穴たくさん感がないので、わりと満足度高し。

ソール側のインビスは、チューンナップに出すと目立たなくなる(そもそもソール傷だらけなので、はよチューン出せよという感じでもあるが)。

 

かかった時間

手順①板のカット:外注

手順②カット後のヤスリ処理:15分

手順③カット面の防水処理:10分(養生)+ 10分 x 3回 = 40分

手順④穴あけ作業の位置決め:60分

手順⑤ドリル作業:90分

手順⑥穴あけ箇所の防水処理:10分

手順⑦インビスの取り付け:30分

手順⑧スプリットフックの取り付け:15分

手順⑨チップクリップの取り付け:30分

合計290分、4時間50分でした。

もちろん、ニスや接着剤の乾燥時間は除いている。

空き時間にちょこちょこやれば、半月くらいで作れます。

 

 

いかがでしたでしょうか?猿でも作れるスプリットボード講座。

一度作ってみるとわかりますが、日曜大工より簡単なので、一台作れば気軽に2台目、3台目もつくれます。

お気に入りの板でスプリットボードして、ロングハイクの果てに極上斜面を滑る。最高です。

 

作業をしながら書いていたブログ記事も、気がつけばかなりの長文になってしまいました(笑)

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

 

 







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