1インチリフトアップの準備として、ロングブレーキホースへの交換作業を行なった。
今回ワンウェイバルブ付きのブリーダーボトルを導入したのだが、今まで2人で行なっていたブレーキフルードのエア抜き作業が、1人でも簡単に作業することができて、もっと前から買っておけば良かったと後悔するくらいの便利工具(笑)
サクッとロングブレーキホースに交換して、あとは1インチアップのコイルを入れたらリフトアップ完了の予定です(冬は時間がとれないので、1インチアップコイルを取り付けるのは春になりそうだけど)。
作業自体はそれほど難易度は高くないが、ブレーキは命に関わるパーツなので、作業に自信のない人はお店に頼みましょう。
リフトアップにはブレーキホース延長が必要
厳密にいうと、リフトアップというより、最大長の長いショック(伸び切ったときの全長が長いショック)に交換やショック延長ブラケットを装着したときにブレーキホースの延長が必要である(なので、純正車高でも最大長の長いショックに交換したらホース延長は必要だし、1インチのリフトアップでもショックが純正のままならブレーキホースを延長する必要はない)。
JB64/JB74ジムニーに1インチアップコイルを組んで、35mmのショック延長ブラケットを組んだ場合、ショックが伸び切った場合左リアのブレーキホースがパツパツになるので、30mm程度のロングブレーキホースが必要だ。
油圧ブレーキの仕組みとエア抜き
油圧ブレーキの構造とエア抜きの手順について、漫画図でさらりと解説する。
油圧ブレーキの構造
油圧ブレーキの模式図を下図に示す(図は以前自転車の記事で作ったものの流用で「ブレーキレバー」の絵になっているが、車の「ブレーキペダル」と仕組みは同じ)
レバー側のマスターシリンダー内のピストンを押すと、油圧ブレーキ内のブレーキフルード(油圧を伝える液体)の圧力が上がり、ブレーキキャリパー側のピストンが押し出されてブレーキディスクを挟みブレーキ力が発生させる。
この時、中学物理で習うパスカルの原理が働き、ブレーキフルード内の圧力は全ての場所で同じ圧力になるので、
例えば
- 入力側マスターシリンダーのピストンの断面積を2
- ブレーキキャリパー側のピストンの断面積4
- ブレーキキャリパー側はピストン2個なので合計断面積は8
のようなピストン断面積のとき、ブレーキを踏み込み入力側マスターシリンダーで油圧Pを発生させると
- 入力側マスターシリンダーのピストンを押す力は2xP
- キャリパーが側のピストンを押す力は8xP
となり、4倍の力を得ることが出来きるのである。これが油圧ブレーキが大きな制動力を得ることができる仕組みである。
(実際には自動車の場合はブレーキペダルとマスターシリンダーの間にブレーキブースターと呼ばれるマスターシリンダーを押す力を大きくする補助装置が付いている)
また、ジムニーを含めリアには油圧式ドラムブレーキを採用している車も多いが、動かす部品がブレーキピストンかブレーキシューかの違いであって、油圧で力を伝える点は共通だ。
ロングブレーキホースへ交換するとエアが入る
純正のブレーキホースをロングブレーキホースに交換する場合を考える。
まずはブレーキホースの取り外し。
ロングブレーキホースに交換。
この時、一度純正のブレーキホースを取り外して長いホースに交換するわけだから、当然エアが混入することになる。
この状態だと、いくらブレーキを踏んでも中の空気が圧縮されるだけで油圧が上がらなくなり、全くブレーキが効かなくなるのである。
というわけで、ホース交換を行うと必須になるのがエア抜き作業。
エア抜き作業
エア抜き作業はブレーキキャリパー側についているブリーダーボルトからオイルとエアを排出していく。
まずはブレーキキャリパー側に受けのボトルを接続する。ここでワンウェイバルブ付きのブリーダーボトルを使うと、エアが逆流しないので1人作業が可能となる。
ワンウェイバルブ付きのブリーダーボトルを接続した状態でブレーキペダルをぺこぺこ踏みつけると、フルードがブリーダーボトルから排出され、エアもその流れに乗って排出されていく。
簡単な作業なのだが、リザーバータンク側のフルードが切れるとエアが上流に混入するので、リザーバータンクの残量には気を使いながら作業しよう。
ブリーダーボルトからエアが全て排出されたら作業は完了。
実際にはキャリパー内のエアは見えないので、ブレーキペダルを踏み込んだ時、風船を踏んでいるようなむにゅっとした感覚がなくなればOK。
JB64/JB74ジムニーの
ブレーキホース交換&エア抜き作業
必要工具
・10mmフレアナットレンチ(ブレーキホース脱着)
・8mmメガネレンチ
・マイナスドライバー
・ハンマー
・ワンウェイバルブ付きブリーダーボトル
・ブレーキフルード(DOT3) リアブレーキホース1本なら300ccくらい
・水道とホース、柄付きスポンジ(清掃用)
ワンウェイバルブ付きのブリーダーボトルは超オススメ!
この工具がないとエア抜きには2人必要で、運転席の側の人間がブレーキを踏む→もう1人がブリーダープラグを緩める→フルード排出→ブリーダープラグを締める→もう一度ブレーキを踏み直す、をエアがなくなるまで繰り返すので、結構手間と時間がかかる作業。
一方でワンウェイバルブを使えばブリーダープラグをいちいち開閉もする必要なく、ブリーダープラグを開放して1人でブレーキをベコベコ蹴っ飛ばすだけで作業が完了するので、手間と時間を大幅に節約することができる(短時間で大量のフルードを排出できるので、リザーバータンクのフルード切れには注意!)。
あと、ブレーキホースの脱着はスパナだと舐める可能性が高いので、フレアナットレンチを使うことを強くオススメします。
ジムニーのブレーキホース脱着には10mmが必要。
JB64/JB74ジムニーの指定ブレーキフルードはDOT3。
手順①純正ブレーキホースの取り外し
ブレーキホースの固定を先に外すと、ブレーキホースのジョイントが緩められないので、先に純正ホースの固定を緩めておく。パキッと最初の固定を緩めるだけで十分(あまり緩めすぎると、フルードが漏れてくる)
上画像の→の部分、純正ホースのツバの部分の切り欠きが回り止めになっている。
次にホースを固定している金属板をマイナスドライバーとハンマーで下の画像のように叩いて取り外す。
下側はまだ作業しやすいが、上側はハンマーを振るスペースが狭いので、取り外しにかなり苦労した(なにか良い外し方があれば、コメントで教えて頂けると嬉しいです)。
固定の金属板を取り外してから、フレアナットレンチで純正ホースの接続を緩めてホースを取り外す。
悠長にブログ用の写真撮ってるが、ホースを取り外すとどんどんフルードが垂れ落ちるので、さっさとロングブレーキホースを組み付けたほうが良いです。
本来なら
- 純正ブレーキホースの下側を外す
- 純正ブレーキの下側にビニールやペットボトルを取り付けて漏れるフルードを受ける
- ロングブレーキホースを下側に接続する
- 純正ブレーキホース上側を外す
- すばやくロングブレーキ上側を接続する
の順番で作業すれば、フルードが漏れるのは4と5の間だけなので、漏れを最小限にできる。
手順②ロングブレーキホースの取り付け
ブレーキホースの取り付け手順は
- ロングブレーキホースを手で締めれるところまで締めて取り付ける
- ホース固定の金属板を取り付ける
- フレアナットレンチで23Nmで締め付ける
取り外しと同様、金属板を取り付けないとフレアナットレンチでトルクをかけられないので、最後に本締めするのを忘れないように。
組み付けたロングブレーキホース。
まだリフトアップしていないのでホースがたるんでいるが、特に不具合はない。純正からこの長さでホースを設定してくれれば、1インチリフトアップごときでブレーキホース交換する必要ないんだけど(苦笑)
余談だが、ジムニーに限った話ではないが、車の設計者って自分で車いじりしない人も多いので、整備していると、ここのホースがもうちょっと長ければとか、ここのスペースがあればこの部品をずらすだけで作業できるのにとか、もどかしい設計の車両が多いよね。ここらへんの感覚は図面からは判断できないので、設計者の経験とスキルが必要な部分だと思います(48riderの勤務先も作業性無視した製品を世に送り出したりしているので、反省もあるが)。
ホース固定の金属板を取り付けてから、フレアナットレンチで本締めする。
トルクは23Nmだが、フレアナットレンチしかないので、当然手ルクレンチ。
真面目にトルクレンチを使用したい場合はクローフットレンチをトルクレンチに接続して作業しましょう。
手順③ブレーキフルードのエア抜き
ここで今回の秘密兵器、ワンウェイバルブ付きブリーダーボトルの登場。
まずはブリーダーボトルの設置準備。
左リアのプラグについているキャップを手で取り外す。
8mmのレンチをブリーダープラグに引っ掛ける。
ワンウェイブリーダーボトルのホースを接続する。
ブリーダーボトルをリアゲートのストライカーに引っ掛ける。
ボトルは高い位置に設置したほうが、ホース内のエアがバルブ方向に戻らないので若干作業性が良い。
さて、ブリーダーボトルの準備が完了したら、いよいよエア抜き作業。
まずはブリーダープラグを緩める。
これでドラムブレーキ内とホースとでフルードが移動できるようになる。
ブレーキペダルを踏んで油圧をかける。
するとどんどんフルードがブリーダープラグを通過してボトルに流れ込んでくる。この流れでエアも排出される。
ブレーキペダルを踏み続けると、どんどんリザーバータンクのフルードが減ってくるので、適宜補充しながら作業を進める。
リザーバータンクのフルードが切れるとエアがまたブレーキラインに入ってしまうので、ちょくちょくタンクの残量を確認しながら作業を進める。
念入りにフルードを排出して、ブリーダープラグからエアが出てこなくなればOK。
エアの排出が終われば、ブリーダープラグを閉じてからホースを外す。
ブリーダープラグを締めて、ブレーキを踏んだときにしっかりとした踏み応えがあればOK。
ちなみにブリーダープラグのトルクは7.4N·mと低めの締め付けトルク。しめすぎるとブリーダープラグに開いたオイル通路が潰れてしまうので、締め付けトルクには注意しよう。
最後にブレーキフルードを規定値MAXまで補充してエア抜き作業の完了。
手順④ブレーキフルードの清掃
ブレーキフルードは塗装にダメージを与えるので、入念に清掃しよう。
ブレーキフルードは水溶性なので、水をかけながら柄付きスポンジで洗い落としていく。
手順⑤テスト走行と点検
念の為、サイドブレーキで止まれるくらいの速度でブレーキテスト(サイドブレーキはワイヤーでリアのドラムブレーキを作動させるので、油圧とは別ラインでブレーキをかけられる)
しっかりいつも通り止まれることと、再度ブリーダープラグやホース回りからフルードが漏れていないことを確認して、作業は完了です(ここの確認のためにも、漏れたフルードはしっかり清掃しておくこと)
ブレーキホース交換まとめ
これにてリフトアップ前の準備は完了。
あとは用意しているショウワガレージさんの1インチリフトアップコイルを組むだけだが、冬はスノーボードで週末が忙しいので、組み付けは春を過ぎてからになりそう。
コイルの交換については、以前アイバッハコイルに交換した時と作業は同じなので、もしブレーキホース交換してコイルも交換する方は、コチラの記事も参考になるかと思います。
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