1インチアップしてからどうも気になっていたのが車体のロール量。
まあ、重心が高くなるので仕方ないのは分かっていたが、抑制できるものなら抑制したいので、ショウワガレージさんから販売されているショートスタビリンクを取り付けた。
これ、スタビライザーが効くのを早める効果があるのだが、こんな小さなリンク1つで乗り味が全然違う!ロール初期から足が踏ん張るようになり、今まで気になっていたS字コーナーでの大きなロールの振り返しが小さくなり、とても気持ち良く運転出来るようになった。
スタビライザーの効きが強まりフロントタイヤの追従性が下がるというデメリットはあるが、街乗りからフラットダートくらいならメリットの方が大きいと思っており、交換して良かったです。
ショートスタビリンクの効果
スタビライザーとは
スタビライザーの説明はジムニーで採用されている車軸懸架と一般的な独立懸架くらいから書こうとするととても大変になるので、車軸懸架(ジムニーカタログでいうリジッドアクスル)前提で話を進める。
まず、スタビライザーとはジムニーのホーシング(アクスル)に取り付けられた「コ」の字の棒である。
スタビライザーの「コ」の字の腕の部分はホーシングにリンクを通して接続されており、「コ」の字の胴の部分はゴムブッシュを介してフレームに連結されている(ゴムブッシュになっているので、スタビライザーは回転することができる)
これがどう働くかというと、左右のサスペンションの伸びに差が生じると、それを均等に近づける働きをする。
図で理解すると、めちゃくちゃ単純。
上の図で左側のサスペンションが縮もうとすると、「コ」の字のスタビライザーが回転して反対側のサスペンションも縮めようとしているだけである。逆に左のサスペンションが伸びようとすると、右のサスペンションもスタビライザーで繋がっているので伸びようとする。
要は、左右のサスペンションを鉄の棒(リンク)で繋いでしまったので、同じ動きをしようとするのだ。
実際にはスタビライザーの棒の部分は捻れることができるので、左のサスペンションが10縮んだとしても、捻れで変位が吸収されて右側は5縮もうとするなど(数値はイメージ)、棒の部分の捻れの強さ(ねじりばね定数)でスタビライザーの効きを設計者は調整することができるのだ(仮に捻れない完全剛体のスタビライザーなら、左右のサスペンションは完全に連動したストロークしかできなくなる)
スタビライザーの働き
さて、スタビライザーはロールを抑えるとよく雑誌などには書かれているが、半分正解半分間違いなので、この部分について解説する。
コーナリング時の働き
下図はスタビライザーのないジムニーのコーナリング時のサスペンションの動き。
直進状態(左右のサスペンションは同じストローク量)から、右にハンドルを切って左方向に遠心力で引っ張られた場合を考える。
コーナリングすると、車体に遠心力が働くと、コーナー外側のサスペンションが縮んでコーナー内側のサスペンションが伸びて、車体がコーナー外側に傾く動き、いわゆるロールが発生する。
次にスタビライザーがついている場合のサスペンションの動きはこうである。
直進時は左右のストロークは同じなので、スタビライザーはなんの作用もしていない。違いが生じるのは、コーナリングによる遠心力で車体が傾く時。
先ほどと同様に車体に遠心力が働くと、コーナー外側のサスペンションは縮んでいくが、ここでスタビライザーの効果でコーナ内側のサスペンションも縮もうとする。
結果、左右のサスペンションのストローク量の差が減って、車体の傾き(ロール)が減るのである。
これがスタビライザーでロールが減る原理である。
上の図ではバネを硬くすることでも同様にロールを減らすことができるが、そうなると跳ねやすくなったり乗り心地が犠牲になる。スタビライザーはバネを硬くすることなくロールを抑制できる便利なアイテムなのだ。
ちなみに、ロール抑制するとコーナリング性能が上がるというイメージを持つ人もいるが、これは不正解。コーナー内側のサスペンションが伸びないので、内側のタイヤの荷重が減り(最悪浮き上がる)、トータルのグリップ力は低下する。タイヤは大荷重ほど摩擦係数が下がるので、荷重は両輪にできるだけ分散させたほうが良いのだ(しかし、背の高い車に限っては、ロールすると重心が旋回外側へ移動して横転モーメントが大きくなるので、ロール抑制したほうがコーナリング限界は高い。横転がコーナーリングの限界になっている場合の話だが)
というわけで、車は適度にロールさせてた方がよく、フロントにスタビライザーをつけると車は曲がらないアンダーステア方向になる。
しかしジムニーではショートスタビリンクをつけてコーナリング性能が上がったと感じている人が多いと思うが、これはロールが減ったことでロール収束までの時間が減って、レスポンスがアップしたことでコーナーリング性能が上がったと感じていると思われる(実際にフロントタイヤの限界グリップが下がっても、そこまでグリップを使い切る人はいないし、ハンドル切ってすぐ車の鼻先が旋回内側へ向く方が気持ち良く曲がれる)。
凹凸路でのスタビライザーの働き
バネを硬くすることなくロールを抑制できる魔法の棒のようなアイテムだが、実際にはデメリットも存在する。
特にデメリットが大きいのが片側段差の状態である。
ジムニーのようなリジッドアクスルの利点は、片方のサスペンションが縮むと反対側が伸びる動きをして、タイヤ凹凸路でも追従するメリットがある(要は、左右のタイヤがつながっているので、路面に並行になろうとする)
ところが、スタビライザーを装着していると、リジッドアクスルの前述のメリットをスポイルしてしまうのだ。
上の図では、左輪は路面に追従したいのだが、スタビライザーの働きにより左のサスペンションが縮められてタイヤが浮いてしまう上、車体も傾いてしまう。
悪路、とりわけ片側段差においては、スタビライザーは逆にロールを助長する上、走破性も下げてしまうのだ。
ショートスタビリンクが効く仕組み
ショートスタビリンクの仕組みは難しいので、詳しい解説はショウワガレージの伊神さんのブログがめちゃくちゃ勉強になるので詳しく知りたい人はそちらを読まれたし(他人まかせ)。
(48Rも自動車産業系の隅っこの開発職だが、部門が違うので、リンクの角度などは理解深くないです)
ショートスタビリンクのメリットデメリット
ショートスタビリンクのメリットデメリットをまとめると、
ショートスタビリンクのメリット
- 不快なロール抑制による乗り心地向上
- スタビが早く効くのでレスポンスアップ
ショートスタビリンクのデメリット
- 路面追従性の低下
- フロントのグリップ低下によるアンダーステア特性
48Rの場合は、ジムニーは街乗りメインで林道ツーリングは年二回くらい。それもフラットダートが多いので(日本の林道は軽トラでも通れるよう、大体フラットダート)それほど路面への追従性も必要ない。加えてジムニー標準装備のブレーキLSDが強力なので、たまに段差に遭遇しても、タイヤが浮いてもスタックせず進めるので、そこまで路面追従性は必要なかったりするのだ。
むしろ背が高くロール量の多いジムニーはロールが不快なので、それを抑えるべく、今回はショートスタビリンクを導入することにした。
ちなみに、下の画像は純正スタビリンクとショウワガレージ ショートスタビリンクの比較。
こんなリンクの長さひとつで、驚くほどロール量が変わるのでびっくりである。
番外編スタビライザーレス
ショートスタビリンクとは逆に、足を動かしたいのであればスタビライザーレスが有効だ。
下の画像はジムニーショップACRさんのデモカーだが、Frのホーシング周りを見てみると、スタビライザーが付いていない。
スタビライザーが付いてないと片方が縮んでもう片方も縮ませる作用がかからないので、車軸懸架のメリットである押し上げられた反対のタイヤが押し下げられる作用で、路面追従性が高く悪路走破性が高くなる。
また、APIOさんから販売されている悟空という商品は、スタビライザーをピンひとつで働かせたりキャンセルさせたりできる面白い商品。
これはスタビライザーの捻れる部分をピンで固定しており、ピン付きならスタビライザーとして働き、ピンを抜くことでスタビライザーの左右の連結が解除されて効きがキャンセルされるのだ。
現状JB23/43用しかないけど、今後JB64/JB74で発売されたら試してみたいパーツである。
ちなみにランクルにもなるとスタビライザーのロック/解除を電子制御して、コーナーリングと悪路走破性を両立するスゴイメカがついてます(ま、ジムニーですから)
JB64/JB74ジムニーのショートスタビリンク取り付け方法
作業時間は15分程度、それほど難しくないので、工具さえ持っているなら誰でもDIYできると思います。
必要工具
- 14mmソケット
- ラチェットハンドル
- 14mm薄口スパナ
- トルクレンチ(50Nm)
手順①純正スタビライザーリンクを取り外す
スタビライザーリンクはスタビライザー側、ホーシング側とも14mmナット。
(それにしても3年ちょっとで下回りの錆が酷い。スノーボードに行くたびに下回り洗浄しているが、それでもこの状態。ハイエースはここまで錆びないのでやはりSUZUKIは錆に弱い)
このナットを取り外すのだが、そのままだとボルトもくるくる回ってしまうので、スパナで周り止めをする。
スタビリンクの周り止めは↓な感じで、14mmのスパナがかけられるようになっている。
ここはスタビリンクのブーツを破らないように、薄口スパナが使いやすい(純正リンクを再利用しないならブーツ破けても問題はないが)
スタビライザーリンクは片方ずつ交換できないので、両方外そう。
手順②ショートスタビリンクの取り付け
ショートスタビリンクを取り付ける。
純正スタビライザーリンクを両方外している状態ならスタビライザーの腕が上下に動くので、ショートスタビリンクの長さに合わせて取り付ける。
最後にトルクレンチで50Nmで固定して作業完了。
(締める時は周り止めしなくても大丈夫)
ちなみに、ショートスタビリンクを取り外す時、純正のようなスパナではなく六角レンチで周り止めする構造になっている。
ショートスタビリンクのインプレッションとまとめ
さて、走り出して片側の2車線の幹線道路でちょっとクイックに車線変更してみたら、今まで左にロールしてさらにおつりをもらって右にも振り替えしていたジムニーのボディが、スイッスイッと小さくロールするだけで車線変更が終わるではないか!
山道を走ってみても、今までロールでゆっさゆさ揺られながら抜けていた峠区間も、適度に踏ん張りが効いて気持ちの良いハンドリングに。
元々ビルシュタインダンパーでロールは減衰が効いて純正より踏ん張りながらロールするのだが、ショートスタビリンクでロール量も減った感じである。
いいぞいいぞ!ドライブが楽しくなる♪
正直、こんなリンクの長さひとつで踏ん張りなんか出るのかな?と半信半疑だったが、良い意味で裏切られた。
懸案だったフロントの追従性だけど、フラットダートの林道+たまに現れる大雨でできた雨溝くらいだったら全然問題なし(そもそもブレーキLSDもついてるのでさほど心配もしていない)
総じて、交換して良かったです。
ジムニーのロールが気になる人はぜひぜひ交換をオススメします。5千円でこれだけの効果は、めっちゃコスパが良いです。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。