ステアリングダンパーという部品はご存じでしょうか?
ジムニーでは持病のジャダーという前輪の舵角方向の振動を抑制するのに効果的な部品で、JB64/JB74からその対策として標準装備された部品である。
今回、JB74には元々付いているステアリングダンパーを社外品のビルシュタインエナペタルに交換。
その狙いはというと、純正より減衰特性の大きなものに交換して、林道でのキックバック(路面の凹凸でハンドルが振られる現象)を減らして安定感を高めること。
結果、減衰力の大きなステアリングダンパーで林道ではキックバックが減って乗りやすくなったのと、さらには一般道でもハンドルに落ち着きが出て、長距離運転が楽になりました。
純正でもついているが、交換することでハンドリングの印象をなかなか変えてくれるパーツです。
記事後半では、ステアリングダンパーの交換に必要なタイロッドエンドの外し方も解説しています。
ステアリングダンパーの働き
ステアリングダンパーとは、ステアリング周りに取り付ける長さが伸縮する部品で、伸縮させる際に抵抗を発生させる。
上の画像はJB74ジムニーのステアリングダンパーで、ハンドルを切るとステアリングダンパーが伸び縮みして、抵抗を生む仕組みになっている。
ちなみにステアリングダンパーは抵抗力は発生するが、反発力は発生しないので、動かさなければステアリングに力を及ぼすことはない(勝手にハンドルが動かされたりはしない)。
仕組みはこんな感じ(ステアリングダンパーには色々な仕組みがあるが、下のは最も簡単な構造)
中にはオイルが入っており、ストロークすることで穴の空いたピストンが左右に動き、ピストンに空いた穴をオイルが通過する際に発生する抵抗を利用している。
下はステアリングダンパーの特性(オフロードバイク用だが、自動車用と特性は同じ)。
縦軸が抵抗力、横軸がステアリングダンパーがストロークするスピードを表している。
これをみると、ゆっくりハンドルを動かす時(=ピストンスピードが遅い時)は抵抗力が少なくハンドリングを妨げず、ジャダーやキックバックなど早くハンドルが動く時(=ピストンスピードが早い時)は抵抗力が大きく、ハンドルの不要な動きを抑えてくれる特性になっていることがわかる。
JB64/JB74ジムニーから標準装備
ジムニーではジャダーと呼ばれる舵角方向の振動が発生しやすく、ジムニー乗りの間ではもう持病という認識である。
ひえっ!走行中、こんなになったら恐ろしいよね。
理由は色々あって一概には言えないが、リフトアップしていたり足回りが劣化しているとジャダーが発生しやすい傾向にある。
JB64/JB74ジムニーでは、おそらくはこのジャダーを抑え込む目的で、ステアリングダンパーが標準装備されていると推測する。さっき解説したように、ステアリングダンパーは早い動きには大きな抵抗力を発生させるので、ジャダーのような高周波数の振動には効果的である。
ちなみに、スズキという会社はとにかく車を安く作るのが信条で無駄なパーツは付けたがらないのだが、それでもステアリングダンパーを付けたということは、メーカーの苦心が伺える部分である。
(とはいえ、ステアリングダンパーはジャダーを解決するのではなく抑制するだけなので、本当にジムニーのジャダー問題は闇が深い)
JB23以前のジムニーの場合、ステアリングダンパーは標準装備されてないが、社外でステアリングダンパーをつけることもできる(JB64/JB74用は流用できない)
↑みなさんお困りのようで(笑)
ワタクシのJB23は10年オチだけど、現状大丈夫。
とはいえ、そろそろ足回りの劣化が心配なお年頃なので、心配ではあるが。。
選んだのはビルシュタイン エナペタル
調整式ステアリングダンパー
アフターパーツメーカーから様々なステアリングダンパーが販売されているが、今回購入したのはビルシュタイン エナペタル製のステアリングダンパー。
上の純正に対し、エナペタルは太い!
ダンパーオイル容量も多くなるので、熱ダレにも強く安定した減衰力を発生するはず(このオイル容量がジムニーに必要かは分からないが)
車に取り付けたら見えないが、なんかカッコ良いステダンボディ。
コイツの目玉はなんと言っても減衰力12段調整。
オフロードでは減衰力強めにしてキックバックを抑制し、オンロードでは減衰力を弱目にしてステアリング操作を妨げないなど、シーンに合わせての調整が可能だ。
セッティングして色々変化で遊べるので、他メーカーより少々お高いが、その価値十分にあり!と、48Rは考えている。
ちなみに、エナペタルではないほうのビルシュタインからもステアリングダンパーが発売されているが、こちらは減衰特性のグラフが載っていた。
「Sports」と「Standard」の2タイプ販売されているが、どちらも横軸のストロークスピードの低い段階から減衰力を大きく発生させる特性なので、常用域でハンドルの重さを出して、フラツキを抑えるのが狙いかな?
「Standard」に関してはストロークスピードが高い領域では純正より減衰力が弱い設定なので、キックバックやジャダーに対しては効果が低いかもしれない。
なかなか面白いデータなので、他メーカーもこういうデータはどんどん公開して欲しいところである。
ステアリングダンパーの交換方法
ステアリングダンパーの両端のボルトナットを外して交換するだけだが、特殊工具が必要。
必要工具
・17mmメガネレンチ、ソケット
・タイロッドエンドプーラー
タイロッドエンドプーラーがないとステアリングダンパーは外れない(ハンマーで叩くやり方もあるが、ジムニーではハンマーを振るスペースがない)
これさえあれば作業は楽勝です。
手順①純正ステアリングダンパーのタイロッドエンドを外す
作業の参考になるので、先に純正ステアリングダンパーのタイロッドエンドの形状画像を載せる。
タイロッドエンド側はナットを外しても、画像→部分がテーパー嵌合しているので、特殊工具がないと外れないのだ。
では、作業開始。まずはタイロッドエンド側から作業する(タイロッドエンドが外れた瞬間にステアリングダンパーが落ちてこないように、ボディ側は固定しておいたほうが良い)
タイロッドエンドのピンとナットを外す。
先に書いたように、テーパー嵌合されているので、ナットを外してもタイロッドエンドは外れない。
次にタイロッドエンドプーラーをセットする。
タイロッドエンドプーラーをセットしたら、プーラーのボルトを締めてタイロッドエンドを外す。
ある程度締め込んだら、バキッとタイロッドエンドが外れるのだが、その時工具も落ちてくるので、下に段ボールでも敷いたほうが良いだろう。
手順②純正ステアリングダンパーのボディ側を外す
こちらは17mmのボルトを外すだけ。
(純正外す時に写真撮り忘れたので、エナペタル付けたあとの写真だけど)
手順③エナペタルステアリングダンパーのボディ側を仮締めする
先にボディ側を仮締めしておく。
こちらエナペタルのタイロッドエンド部。
純正ステアリングダンパーの取り外しと逆手順で組み付ける。
タイロッドのナットのトルクは43N·m。
締めたら付属している周り止めの割りピンを装着する。
最後にボティ側を50N·m本締めする。
最後に本締めする理由は、取り付け途中の斜めになった状態で本締めすると、ゴムブッシュに余計な力が残っちゃうから。サスペンションの1G締めと同じ理由だ。
作業は以上。
タイロッドエンドプーラーさえあれば、15分程度です。
エナペタルステアリングダンパーの
インプレとまとめ
さて、インプレの前にステアリングダンパーの設定の確認。
金のダイヤル部で調整できるようになっているが、出荷時は12段階の中間の「6」に設定されている。
まずは「6」で乗ってみる。
おお、ハンドルが適度に重くなって、ジムニー独特のふらふら軽い感じから、しっとり落ち着いたハンドリングに。市街地での交差点ではちょっとハンドルが戻るのが遅くなったけど、許容範囲。
むしろ、高速道路ではハンドルが軽くてふらふらしていたのが、車に落ち着きが出て乗用車で高速道路を走っているかのような安定感!もちろん、郊外の国道みたいなハイスピード区間でも恩恵が大きい。
純正の状態だったら車がフラフラするので無意識に修正舵を入れてるところを、エナペタルを入れているとビタっと車線中央に止まってくれる感じだ。
こりゃ、林道のキックバック対策で買ったのに、普段乗りから恩恵が大きく嬉しい誤算。
肝心な林道の乗り味はというと、予想通りキックバックが減ったし、轍でハンドルが急にとられることもなくなり、安心して走れるようになった。
舗装路も林道も良し!
そしてこのステアリングダンパーは設定を変えて遊べる点も素晴らしい。
最強の「12」にしてみると、安定感安心感はさらに向上するが、デメリットとしては交差点曲った時のハンドルの戻りがさらに遅く。とはいえ、交差点以外で良くなるメリットのほうが大きいので、これはこれでアリな感じではある。
また、最弱の「1」にすると純正のような軽いハンドリングにすることもできる。
純正からステアリングダンパーがついているのにわざわざ交換?と思う人も多いかもしれないが、確実にドライブが楽しくなるオススメのカスタムパーツです。