LIB TECHのボードで一番売れているというT.RICE ORCA。
48Rは実は昨シーズンまではLIB TECHのボードなんて1機種も知らなかったのだが、SNSで「ORCA面白い!楽しい!」って投稿をいろいろ目にしたり、24/25モデルのグラフィックが48Rの心にどストライクだったりで、シーズン前に予約購入!
今期はそのORCAで8割がた滑っているのだが、だいぶ板の特性が分かってきたので、ここらでレビュー記事をアップします。
個人的な総評としては、世間で言われているほど万能ではないが、乗り味の面白さは随一のボードです。
リブテック T.RICE ORCAの3つの特徴
Libtech ORCAはけっこう特徴的なパウダーボード。
その中でも次の3点は他のパウダーボードにはあまりない特徴である。
LIBTECH ORCAの3つの特徴
- ダブルキャンバー
- テールキック
- マグネトラクション
1.のダブルキャンバーはパウダーボードとしてはかなり特徴的。今日びダブルキャンバーなんてグラトリボードで採用されるくらい。
ダブルキャンバーは下の画像のように、センターが一番凹になっており、前足と後ろ足にそれぞれキャンバーアーチがついた構造である(センターが一番低くなっている)。
後ろ足を踏むと板の前半分がシーソーのように浮くし、前足を踏むと逆に後ろ半分が浮く構造である。グラトリではひっかかりが少なくてドライブスピンがやりやすい構造なのだが、一方でエッジグリップは弱めと言われている。
これをノーズロッカーのパウダーボードと組み合わせると、後ろ足を踏み込むと板の前半分が雪の抵抗を受けてざぶんと浮いてくる面白い乗り味なのだ。
2つめの特徴は急激にそそり上がるテール形状。
↑ボード最大幅位置から折れ曲がるように立ち上がっている。
このテール形状のおかげでテールの抜けがよく、パウダーでもテールが変に粘ることなくスルスル向きを変えてくれる(一方でスイッチパウダーでは絶望的なほど浮かない。まあ、パウダーでスイッチするなら、ゴールデンオルカというオルカとはテール違いのモデルがある)
3つめのマグネトラクションは↓の画像のようなウネウネエッジ。
ウネウネしたエッジの山が雪を噛むので、ダブルキャンバーの弱点であるエッジングの弱さを補っている。フラットではダブルキャンバーでルーズな乗り味、板を立てるとマグネトラクションでエッジが食うようになっているのだ。
この3つ特徴が組み合わさって、ダブキャンでフラットでは引っかかりが少なくルーズに乗れて、パウダーではテールを踏むとノーズの浮力と抜けの良いテールで取り回しがよく、それでいてダブキャンのエッジングの弱さをマグネトラクションで補って、どこでも楽しく滑れるようになっている。
なかなか考えられたボードである。人気なのも納得。
購入したのはORCA 157
みんな悩むのがサイズ選び。
公式HPには太くて浮力があるので普段のボードより3~6cm短めが推奨されている。
身長180cm 86kgのトラビスライスでさえ、153cmから乗っているとのこと。
Travis Rice Choice: 150は私にはかなり小さいが、このボードでタイトなカービングリゾートに行くこともある。小さくて楽しい。153はリゾートや急斜面のバックカントリー、テクニカルな急斜面のツリーやピロー、スパインで主に乗っているサイズだ。156はバックカントリーのディープな日やリゾートのパウダーデーでこのボードに乗っている。159は深いパウダースノーがあるときで、それほど急な地形では乗らない。162も極端な深雪や軽い雪で、それほど急でないところで乗っているよ。
引用:https://www.advance-j.com/snow_brands/libtech/18-triceorca.html
スペック表みても、153cmから162cmまでほぼ同じウェスト幅でトラビス自分が乗る気満々やん、ということが見てとれる(笑)
48Rは短め推奨は無視して、普段乗っている156~157cmの板を基準に同じサイズの156cmを選択。
やっぱり浮力があった方が緩斜面でも楽なのと、トラビスとはスピードレンジや滑る斜度が違うので、普通の長さが楽なのかなと。
セッティングはセットフロントで取り付けている(板に推奨位置書いてないから、何cmセットフロントしているか不明)。
ダブルキャンバーでノーズの浮力(抵抗)が大きいので、ちょっと前足で押さえ込んだほうが乗りやすいと個人的には感じている。
LIBTECH はプレチューン必須
12万円もするのに新品でもソールはガサガサのリブテック。今回はアイスチューンさんで新品状態からフルチューン頂き、ソールは乙女の黒髪のようにテカテカだ。
アイスチューンのおかげで周りのゲンテン乗りとそんしょ
周りの意見を聞いても、チューンしないとリブは走らないという声多数なので、新品からチューンは必須。
組み合わせるバインディング
組み合わせるバインディングはトラビスライスのシグネチャーモデルのUNION FALCOR。
見てよこのカラーコーディネート。板のグラフィックとバインのフレームとハイバックがピッタリ過ぎて、コーディネートはこうでねえと、思わず口からこぼれるほど。
かっこいい道具を使うとより気分が上がるので、見た目は大事です。
(技術的な話もちょっとすると、パワフルな板なのでやや硬めのバインが合うと思う。FALCOREはハイバック方向には硬く横方向にはミニディスクでよく動くので、しっかり目の板でパウダーや地形遊びにとても向いている)
T.RICE ORCA レビュー
パウダーで抜群の浮力
ダブルキャンバーのパウダーボードって初めてなのだが、ノーズロッカーと後ろ足を踏み込めば板の前半分が浮き上がるダブルキャンバーのおかげで、パウダーでの浮力については申し分なし。滑り出しの初速がまだついてない段階からノーズが浮いてくるので、どパウでの再スタートが本当に楽だし、パウダーの壁に突っ込んでも雪を蹴散らすようにノーズが浮いてくる。
ゲレパウからどパウのツリーランまで浮力に不満を感じることはなかった。
沢地形やツリーランが楽しい
オルカが真価が発揮するのは面つるパウダーより沢地形やツリーラン。
ノーズの浮力でパウダーの中からぽんぽん跳ねるし、抜けの良いテールで取り回しがほんとうに軽快である。
ツリーでは視線を送るだけで狙ったラインをトレースできるし、沢地形で思いっきり壁に当て込むと、ノーズが浮き上がってテールに心地良い踏み心地を残しながら大きなスプレーを上げてくれる。そこから前足踏み込めば、板と雪面が平行になり反対の壁に向かって加速しながら向かっていく。左右の壁に当て込みながらどこまでも落ちていくのがたまらんのですよ。
スピードと荒地に強い
オルカは板のフレックスとしてはそれほど硬くなく、やや強めのミディアムフレックスに分類されると思う。それほど硬くないのだが荒パウでスピードを出しても板のバタ付きは少なく、シュプールだらけのパウダー斜面でも安定感抜群。
ギタギタになった荒れパウをノーズでいなしながら滑るのもこの板の楽しみ方のひとつ。
はっきり言って、雪の柔らかい不整地は全て楽しいです(笑)
結果、朝から一日中ずっとオルカに乗っている。
いままでぼこぼこでしんどかった斜面がオルカで滑ると楽しいんだから凄い板である。
こんな荒れパウ急斜面でも、オルカなら柔らかい部分を繋ぎながらハイスピードで落ちていける。
フリーライド感満載で楽しい。
スムースなデカいターンは苦手
平らなオープンバーンはそれほど得意ではない。いや、浮くには浮くのだが、気持ち良くない、というのが正確な表現か。
ノーズの抵抗が大きくトップスピードがでないし、なんだか大きなターン孤をうまく描けないのだ(オープンバーンではとんがりノーズでロッカーの板のほうが、スムーズで胸のすくようなロングターンができる)。
オルカはターン孤を描くというより、ノーズの浮力と安定感に加えクイックな取り回しにより、柔らかい雪を繋ぎながら短いチョッカリとパウダーぶち上げ減速を繰り返すようなイメージの滑り方が合っている。
こういうコンセプトのパウダーボードって初めてなので、48Rとしては新鮮な乗り味で面白い!
整地のカービングは物足りない
よくORCAのレビューで整地でのカービング性能も高いというのを見かけるが、48Rの感想としてはそれほど高いとは思っていない。
マグネトラクションのエッジグリップで荒れたバーンでも安定して切っていけるのだが、シングルキャンバーのようなターン後半の走るような反発感がない。
また、サイドカーブが7mとかなり小さいので、板を少し立てるだけでカービングはできるのだが、逆にガッツリ板を立てるような滑りだとノーズが詰まりやすくてスピードを出しにくい。
ここ最近購入したパウダーボードは、BC STREAM のDR161、DR155W、DR157SQ(すっかりラマ先生信者)とパウダー浮くしカービングもギュンギュン系の板が多かったので、オルカでの朝イチピステンバーンはちょっと物足りなさを感じている。
朝からピステンバーンをしばきにいく日なら、この板は持ち出さないかな。
(とはいえ、壁や地形で遊びながらのフリーランはとても楽しいので、パウダーなくても楽しめる板)
まあ、カービングは得意な板ではないけど、やってやれないことはないので一応SAJ1級検定はこの板で受かりました。
(JSBAはtech1まで持っているので、SAJ1級はあえてカービングっぽくない板で受験)
ORCAは重い
最初手にした時からずしりと重さを感じていたのだが、測ってみるとやはり重たい。
昨シーズンまでパウダーデイにメインで乗っていたDR155Wの重量は2672g。
一方でオルカ156の重量は3100gでDRとほぼ同じ長さと太さなのにかなり重たい。
手にとると重量の違いの訳がすぐにわかるのだが、オルカは板が分厚くその分重たくなっている。リブのHPにはオルカが採用しているHPコアは軽量と書いてあるのだが、実際は国産ボードと比べるとかなり重たい。
先端はすぐに凹む
マービンの板全般に言えるのだが、ノーズとテール先端にはエッジがついていない。
なので、ちょっとぶつけただけで凹んでしまうのだ。
ノーズテール先端なんてエッジいらないでしょ、凹んでも滑走性には影響ないでしょ、と言わんばかりのアメリカ人らしい合理的な設計であるが、板を大切にする日本人からするとちょっと残念ポイント。
T.RICE ORCA レビューまとめ
抜群の浮力と取り回しの良さで、パウダーを含め荒れパウ、壁、沢地形など不整地全てを楽しめる板。
世間で言われいるほどの万能ボードではないが(48R的にはピステンバーンはイマイチ)、その他はかなり守備範囲の広い板なので、朝イチパウダーから荒れパウ中盤戦、さらにその後の地形遊びセッションなど、この板だけで1日中楽しく滑れちゃいます。
ぼこぼこパウダーでもかっ飛ばしたい、荒れパウをうまく滑りたい、地形で遊びたい人にはかなりオススメなボードです。