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【徹底解説】リフトアップジムニーのラテラルロッド補正について【JB64/JB74ジムニーカスタム】

ジムニーをリフトアップした時に必要になるのがアクスルのズレを解消するためのラテラルロッド補正。

知っている人には当たり前な話なのだが、このブログはジムニー初心者向けにわかりやすくというテーマなので、マイJB74のラテラルロッド補正を機にブログで解説します。

今回はちょっと掘り下げて、ジムニーの「3リンクリジッドアクスル式サスペンションにおけるラテラルロッドの役割」と「リフトアップしたときのジオメトリーの変化と補正の仕組み」について、ねっとりと解説します。

 

ラテラルロッドとは

ラテラルロッドを説明するため、ジムニーの3リンクリジッドアクスル式サスペンションの構成について説明する。

ジムニーの3リンクリジッドアクスル式サスペンションは、リーディングアーム(またはトレーリングアーム)2本とラテラルロッド1本の3本で構成されているので「3リンク」となっている。

下の画像はジムニーの足回りの抜粋画像であるが、ラテラルロッドとは下画像黄色部の車体横方向に配置されたロッドである。

 

それぞれのリンクの役割はこうである。

まずリーディングアーム2本でサスペンションの前後方向の位置決めをして、上下方向にストロールするようにする(厳密には上下ではなくフレーム側支点を中心にした円運動)

 

これだけだと、横方向の位置が決まらないので、フレーム側とアクスル側を結ぶラテラルロッドで横方向の動きも規制する(これも正確にはフレーム側支点を中心とした円運動)。

 

このように、リーディングアーム(またはトレーリングアーム)で前後方向の位置を決め、ラテラルロッドで横方向の位置も決めて、残った上下方向の軸でサスペンションは上下するのである。

 

現車でラテラルロッドを確認すると、下の画像のように配置されている(下の画像はJB23ジムニーのリアサスペンション)。

 

また、リフトアップしたジムニーなどは赤や銀など目立つラテラルロッドが付いていて、足回りカスタム感を演出するパーツにもなっている。

 

リフトアップジムニーの
ラテラルロッドの補正について

さて、ここからリフトアップした時の3リンクリジッドアクスル式サスペンションのジオメトリー変化とその補正について解説する。

 

リフトアップすると、タイヤがズレる

3リンク式リジッドアクスル式サスペンションの解説で、アクスル(タイヤ)の上下方向のストロークは、正確にはラテラルロッドのフレーム側支点を軸に円運動すると説明した。

リフトアップした場合も同様に同様にフレーム側支点を軸に円運動するので、純正状態から単純に車高を上げると、アクスル(タイヤ)が後ろから見て右側にずれてしまうのだ。

1インチ程度のリフトアップなら横方向のズレが小さくタイヤはフェンダー内に収まるが、2インチ以上のリフトアップの場合はタイヤがフェンダーがはみ出して車検に通らなくなってしまうので、補正が必要となる。

 

リフトアップジムニーのラテラルロッドの補正

アクスルのズレを解消するため、ラテラルロッドの補正が必要になるのだが、補正方法は次の2通りがある。

ラテラルロッドの補正方法

  1. ラテラルロッドの延長による補正
  2. ラテラルロッドの固定位置変更による補正

それぞれ方法について詳しく解説していく。

 

 

1.ラテラルロッドの延長による補正

アクスルが右にずれるなら、ずれた分をラテラルロッドの長さを延長してセンターに戻す方式。

多くのリフトアップキットにはラテラルロッドにネジ山が切られている全長調整式のラテラルロッドが含まれている。

上のようにアジャスターのナットを回すことでミリ単位で全長を調整することが可能なので、リフトアップしたジムニーでもきっちりセンターを出すことができるのが特徴だ。

 

一方で、デメリットとしてはラテラルロッドが斜めになりすぎるとサスペンションがストロークしにくくなってしまい、乗り心地悪化の要因となってしまう。

 

2.ラテラルロッドの固定位置変更による補正

次の補正方法はラテラルロッドの固定位置を変更することでアクスルのセンターを適正にする方法である。この補正方式の場合、車体のロール運動(コーナリングで車体が旋回外側に傾く現象)に密接に関わるので、そのメカニズムも含めて解説する。

 

車がコーナリングする際、遠心力が車体に働き車体が旋回外側に傾くが、その運動は車体の重心一点に遠心力が働くとして表現することができる。

また、車体のロールはロールセンターと呼ばれるラテラルロッドのセンターを軸にロールする。

この場合、車体をロールさせるモーメントの大きさは「重心とロールセンターの距離(=ロールモーメント長)」で表現できる。

リフトアップした場合を考えると、重心とロールセンターの距離が大きくなるので、同じ遠心力の大きさでもロールモーメントが大きくなり、車体が大きくロールすることになるのだ。

(注意)ロールセンターをタイヤの接地面からラテラルロッドの固定点に線を引き、その交点をロールセンターと解説しているサイトもありますが、それは誤りです。

 

そこでもう一つの補正方法は、ラテラルロッドの固定位置にブラケットを取り付けてアクスルをセンターに補正する方法だ。

ラテラルロッドの延長による補正ではロールモーメントが大きくなってしまうのだが、ラテラルロッドの固定位置を変更して角度を純正に近づけることでアクスルの横方向のズレを補正するとともに、ロールセンターの位置も高くしてロールモーメントの増加も抑制することができる。

 

ちなみに、ラテラルロッドダウンブラケットという製品もあるが、ロールモーメントの仕組みがわかっているとアップブラケットがの方が良いのは一目瞭然。

リフトアップ量が大きくてアップブラケットとダウンブラケット併用しなければならない場合を除いて、基本アップブラケットを選択すれば良いだろう。

(稀に太い社外ショックを入れた場合干渉を避けるためオフセット付きのダウンブラケットを選択せざるを得ない場合もあります)

 

とはいえ、ブラケットだけではミリ単位でアクスルセンターを補正することができないので、ほとんどの場合は全長調整式ラテラルロッドも併用することになる(リフトアップキットでも、アップブラケットと全長調整式ラテラルロッド両方入っている場合が多い)。

 

というわけで、2インチリフトアップ以上のジムニーでは40~50mm程度のラテラルロッドアップブラケットと全長調整式ラテラルロッド併用で補正することをお勧めする。

 

 

 

フロントは安易なラテラルロッドアップブラケット補正は厳禁!

フロント側は基本ラテラルロッドの延長のみで補正しなければならない。

理由は、ステアリングロッドとラテラルロッドの関係性を崩さないためだ。

ジムニーのステアリング周りは、ハンドルを切ると車体側のピットマンアームがステアリングロッドを動かして、ナックル側(タイヤ側)が左右に切れる仕組みになっている。

このとき、ステアリングロッドとラテラルロッドが平行かつ同じ長さで配置されてないと(同じ軌跡で運動しないと)、サスペンションが上下するだけでピットマンアームとナックルの距離が変わってしまい、勝手にハンドルが切れてしまうのだ。

そうなると、凹凸を走るだけでハンドルが取られて走れたものじゃないハンドリング。

 

したがって。フロント側でラテラルロッドアップブラケットを使用したい場合はステアリングロッドの固定位置の補正も同時に行わなければならないのだ。

 

とはいえ、3インチアップくらいになると、ラテラルロッドが長くなりステアリングロッドとのバランスが崩れてハンドリングに違和感がでたり凹凸でハンドルが微妙に取られたりする場合もある。

そういうときは、ラノーズさんなどから販売されているステアリングロッドの補正キットが必要だ。

 

純正のステアリングロッドは左ナックルアームの下から取り付けらている。

 

一方、ステアリングロッドの補正パーツを使うと左ナックルアームの上からタイロッドエンドが取り付く。

これでステアリングロッドの取り付け位置を50mmほど上げられるので、フロントのラテラルロッドアップブラケットも併用することでラテラルロッドとステアリングロッドを平行に近づけてニュートラルなハンドリングにすることができる。

とはいえ、サスペンションがストロークするとアップしたステアリングロッドが車体に干渉するので、フロントサスペンションのバンプストッパーを50mmほど追加してストローク規制しなければならない。

 

このようにリフトアップは純正でバランスの取れた状態を崩すので、リフトアップした状態でバランスを取り直すには様々な補正が必要だし、リフトアップ量が多いほど補正箇所も多くなるのである。

 

 

 

ロール運動のおまけのハナシ

ラテラルロッドが大きく斜めになっていると、ハンドリングにも違和感が生じる。

先ほどロールセンターはラテラルロッドの真ん中と説明したが、それは左右のロールセンターの平均であって、厳密にはロールセンターは下図のように左右タイヤで異なる位置となる(導出方法は割愛するが、ラテラルロッドの傾きが大きいほどロールセンターの左右差が大きくなり、ラテラルロッドが水平になると左右のロールセンターが一致すると覚えるだけでOK)

このように左右のロールセンターが高さが異なるので、右タイヤのほうが左タイヤよりロールしやすいアンバランスなハンドリングになるのだ。

したがって、2インチ以上のリフトアップでアクスルのずれを補正をする場合は、アップブラケットなどを併用して水平に近づけることを意識したほうが、ハンドリングの良い車に仕上がるだろう。

 

 

リフトアップジムニーのラテラルロッド補正まとめ

以上、リフトアップ時のアクスルのズレを解消するラテラルロッド補正のお話でした。

これくらいの覚えておくと、パーツメーカーのリフトアップキットを見た時にも「むむむ、このメーカーさんは3インチキットなのにアップブラケットが入ってないぞ!」など、リフトアップキットの内容の良し悪しもわかるようになります。

 

また、48Rも最近ラテラルロッドを交換したのだが、補正だけでなくエンドの形状などでハンドリングもカスタマイズできるので、その話は取り付け解説と共にまた別の機会にでも。

 

 

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