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【MTB空気圧セッティング】プロライダーの空気圧を調べてみた【タイヤの最適な空気圧とは】

MTBの空気圧って、なにが適正なのか悩ましいよね。

今回はそんな空気圧セッティングの参考に、タイヤの基本的な空気圧の考え方(自動車工学的なタイヤの考え方です。MTB的には全てが合っているとは限りませんが、レース業界で働いていたので空気圧セッティングの大切さは身に染みてます)と、参考にプロライダーの空気圧セッティングを調べてみたので共有します。

 

タイヤと内圧の話

まずはタイヤの基本的なところから説明する。

 

タイヤが荷重を支える仕組み

タイヤがどのように荷重を支えてるかと言うと、中に充填された空気の圧力によって支えている。

上の図はタイヤ自体の剛性を無視した理論モデルだが、タイヤが支えている荷重は次の式で表すことができる。

地面が押す力(荷重)= 接地面積 x 内圧

 

大きな荷重を支えるには「接地面積」か「内圧」どちらかを大きくすればよい。

ロードバイクが細いタイヤの小さな接地面積のタイヤでも荷重を支えられているのは7Barもの空気圧をいれているおかげだし、MTBのFATタイヤの内圧が0.8Barなのは、接地面積が大きいからその内圧でも十分荷重を支えられるからである。

 

 

空気圧を変えるとタイヤはどうなるか

次に性能に大きな影響を及ぼす内圧の空気圧のお話。

空気圧を下げるとグリップアップ

内圧を変更するとどうなるだろうか?

先ほどタイヤが荷重を支えている時式を思い出してほしい。

地面が押す力(荷重)= 接地面積 x 空気圧

 

これを変形すると

接地面積 = 荷重 / 空気圧

になり、接地面積は内圧に反比例することがわかる。つまり内圧1Barから2Barにあげると接地面積は半分になる。

 

接地面積が大きい方がグリップが高いというのは経験的に皆さんご存知のところ。

理論的にはゴムは荷重が小さいほうが摩擦係数が大きくなる性質があるので、接地面積を広く取って単位面積あたりの荷重を下げたほうが摩擦係数で得をするのである。また、オフロードではタイヤノブのエッジで地面を引っかけることでもグリップを発現するが、接地面積が大きい方がエッジ成分が多くなるのでこれまたグリップで有利なのである。

 

 

タイヤ剛性も内圧の影響が大きい

タイヤは中に空気を入れてケーシングにテンションをかけてやることで剛性を発揮する。(パンクするとタイヤがぐにょぐにょになるよね)

そして皆さんご存知のとおりタイヤの剛性は空気圧に依存し、内圧が高いほど剛性が高くなる。

 

実は剛性には空気圧以外にも影響している要因があり、それはタイヤのケーシングの大きさである。

正確にいうとケーシングの大きさではなく曲率であり、ケーシングの曲率が大きいほど剛性が高くなる。例えばロードの細いタイヤ(ケーシング曲率が小さいタイヤ)は3barでもぐにゃぐにゃに感じるし、ファットタイヤは0.8Barでも剛性不足感は感じない(極端な話をすると、曲率の大きな東京ドームの屋根は0.003Barの空気圧で屋根全体を支えているくらい、ケーシングの曲率の影響は大きい)。

なので、29インチと同じ外径の27.5+の空気圧が1Bar前後で問題ないのも、ケーシングの曲率が大きので剛性が確保しやすいのである。

 

 

ちなみにダウンヒルケーシングなどケース剛性が高いタイヤを使うと空気圧を張る以外でも部材で剛性を補完できるので、ペラペラの軽量タイヤより低い空気圧で使用することができる(ケースが分厚く頑丈なので、リム打ちパンクしにくいというメリットもある)

 

 

体重でも適正空気圧が変化する

またまた登場のタイヤが荷重を支える式。

接地面積 = 荷重 / 空気圧

これを見ると荷重が小さいと接地面積が小さくなる。

つまり体重が軽いのに体重が重い人と同じ空気圧で乗っていたら接地面積が小さくなりグリップで不利なのである。

また、先ほど説明したとおり、タイヤは内圧を張って剛性を発揮しているが、もし体重が軽ければ必要な剛性も小さくなるので低内圧でも必要な剛性を確保できる。

 

速いライダーの空気圧のセッティングを参考にする場合も、体重が自分と近いかも注意すべきポイントである(エアサスは体重によってサグが適正になるようにエア圧を変更するよね。タイヤも同じです)。

 

また、MTBは後輪のほうが空気圧を高めにしている人が多いが、これもリアタイヤのほうが分担荷重が大きいからである。分担荷重の小さいフロントは低めの空気圧でも剛性不足を感じないのでその分内圧を下げてグリップ稼ぎたいし、リアはプッシュで荷重が大きくかかるので内圧高くしてタイヤがよれないようにしたい(あまり内圧が低いとバームでプッシュしたとき一瞬ビードがずれて空気が漏れるなど剛性以外でも問題がでる)。

 

 

タイヤと空気圧の関係をまとめる

空気圧を低くすると

  • 接地面積アップでグリップアップ
  • タイヤ剛性ダウン

 

空気圧を高くすると

  • 接地面積ダウンでグリップダウン
  • タイヤ剛性アップ

 

という関係になる。

 

接地面積を増やしてグリップアップタイヤするため空気圧は下げたいが、あまり下げると剛性が低下しすぎてコーナーでタイヤがヨレて曲がり難くなったりリム打ちパンクするので、その妥協点を見つけるのがセッティングである。

またコースによっても、バームばかりで踏ん張りが欲しかったり、オフキャンばかりで空気圧下げてグリップ欲しかったり、全てのコースにおいて同じ空気圧でベストというわけではないので、悩みつつもセッティング沼を楽しんでください。

 

ちなみに、空気圧チェックは針のアナログポンプじゃ0.1Bar単位の設定ができないのではデジタルポンプが必須。

「スペシャの山の人」こと@Kimbike818さんも下のようにおっしゃってます。

↑持ち上げて空気入れるなんて、けっこうシビアに調整されているようです。

48Rもいつもライド前は自転車ひっくり返してその状態で空気入れてチェックしているので、計らずともそういうやりかたになってました。

 

 

 

タイヤインサートという選択肢もあり

空気圧を下げて接地面積を稼ぎたいけどタイヤがよれてしまうのはちょっと。。というあなた、そんな時はタイヤインサートの出番ですよ。

タイヤインサートによって剛性を確保できるので、低内圧運用の選択肢を大きく広げてくれた。

しかしながら剛性が高いインサートほど重たいので、これまた重量がトレードオフとなる。

空気圧にしてもインサートにしても、何かを手に入れようとすれば何かを失うので、これまたタイヤセッティング沼が増えてしまう要因でもある(プロでもインサートを使ってたり使ってなかったりするので悩ましい)

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空気圧は好みもある

人間とんこつラーメンが好きな人がいれば醤油ラーメンが好きな人もいるように、なにがベストかはその人の感覚による部分も多い。

しっかりした剛性感を好みグリップは自分で荷重をかけてタイヤを潰してグリップを出すぜ!という人もいれば、タイヤ剛性はそこそこでよいので低内圧にしてタイヤに荷重をかけなくてもグリップするのを好むひともいる。

 

というわけで、速い人の空気圧セッティングを参考にしつつも、それがあなたのベストとか限りません。

 

 

プロライダーの空気圧セッティング

ダウンヒルライダーの空気圧セッティングを下表にまとめてみた(流行り廃りのあるMTB業界なので、2023年以降のデータだけ収集。表が見切れている時は横スクロールしてください)。

ライダー フロント空気圧 リア空気圧 ライダー体重 タイヤ銘柄 インサート
Loic Bruni 1.6 2.0 80kg Specialized Cannibal 前後あり
Greg Minnaar 1.65-1.85 1.8-2.05 86kg Maxxis Assegai なし
Danny Hart 1.6 1.95 70kg Schwalbe Tacky Chans なし
Troy Brosnan 1.85 1.85 68kg Maxxis DHR2 ?
Amaury Pierron 1.75 1.85 81kg Schwalbe Magic Mary Tubolight
Brook Macdonald 1.65 1.7 83kg Michelin DH 22 なし
Luca Shaw 1.5-1.6 1.8-1.85 - Maxxis Prototype/DHR2 なし(たまにリアにいれる)
Dakotah Norton 1.6-1.65 1.95-2.0 79kg Vee WLT Snaps なし
Harry Molloy 1.75 1.95 - Continental Kryptotal ない(たまに使う)
Luke Mumford 1.65 1.85 - Maxxis Assegai/DHR2 なし
Phoebe Gale 1.5-1.6 1.5-1.6 - Schwalbe Magic Mary なし
Tahnee Seagrave 1.3 1.45 64kg Schwalbe Magic Mary/Tacky Chan なし
Mikayla Parton 1.4 1.5 - Schwalbe Magic Mary なし(たまにリアにいれる)
Andreas Kolb 1.65 2.0 75kg Continental Kryptotal なし
Wyn Masters 1.65 1.95 85kg Continental Kryptotal なし
Roger Vieira 1.6 1.85 68kg Kenda Hellkat/Double なし
Dom Platt 1.65 1.85 85kg Continental Kryptotal なし
Gracey Hemstreet 1.45 1.65 - Maxxis Assegai/DHR2 前後Cushcore
Jakob Jewett 1.6 1.8 - Continental Kryptotal なし
Phil Atwill 1.6 1.85 70kg Vee Tyre Snap WCE あり
Nuno Reis 1.65 1.8 76kg Maxxis DHR2 なし
Anna Newkirk 1.45 1.7 - Maxxis Assegai/DHR2 なし
Valentina Roa Sanchez 1.45 1.6 64kg Maxxis DHR2 前後Cushcore
RIchie Rude 1.75 1.9 92kg Maxxis Assegai/DHR2 なし
Alex Rudeau 1.45 1.65 70kg Schwalbe Magic Mary RrだけTubolight
Jesse Melamed 1.35 1.35 68kg Maxxis Assegai/DHR2 前後Cushcore
Rhys Verner 1.6 1.8 78kg Maxxis Assegai/DHR2 RrだけCushcore
たち兄さん 1.1 1.2 Procore
増田 直樹(HT!) 1.0 1.5 Maxxis Assegai なし
井本はじめ 1.3-1.7 1.3-1.7 Maxxis Assegai

日本人ライダーはあまりメディア発信がないので、数人しかわかりませんでした(海外ライダーはPinkBikeやVital MTBなどメディア媒体が多いので、調べると結構出てきます)

 

 

ざっと見るとみんな低内圧で使っているものなのね。

ただ、この人たちはホイールぶっ壊してでもグリップ稼いでタイムを絞り出したい人たちなので、かなり攻めた空気圧である可能性が高い。

体重80kgでもRr1.8BarでハードなWCのコースを入っているんだから、機材の消耗はかなりのものかと思う。

 

え、48は?私はFr 1.3 Rr1.6-1.8くらいです。前後にXC用のCushcoreをリム内パンクのお守りで入れてます。

抜重が下手なアマチュアが闇雲に内圧低くしても、リム打ちでリム壊しちゃうからね。

↑は罠のように地面から飛び出した岩にヒットしてリムが割れてシーラントが漏れる48R号(涙)

 

MTBの空気圧セッティングまとめ

以上、プロライダーの空気圧とタイヤの空気圧を変化させた際の特性の変化をちょっと掘り下げて書いてみた。

最適な空気圧は人によってまちまちだが、ポイントさえ理解していれば自分で考えてセッティングするのが楽しい。

実際に空気圧を変更して走ってみて、トライ&エラーでちょうど良い空気圧を見つけてくださいな。

 

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