ジムニーはいまや少数派の二駆と四駆を切り替えられるパートタイム4WDというシステムを採用している車である。
二駆/四駆を自由に使い分けできるのがパートタイム4WDのメリットであるが、雪道走行時にどのタイミングで二駆(2H)から四駆(4H)に切り替えたり、四駆ローギア(4L)の使い所はご存じだろうか?
人によって微妙に四駆に入れるタイミングは異なるのだが、豪雪の長野県白馬村に冬の間はほぼ毎週通う生活を15年ほど続けている48Rのケースで解説させていただきます。
また、今回はジムニーに採用されているパートタイム4WDと一般的な四駆であるフルタイム4WDについても詳しく解説します。これを知っておくとパートタイム4WDの使いこなし理解が深まります。
(他にも四駆に入れるタイミングに関してご意見ありましたら、コメント欄でご意見聞かせてください)
まずは基本!パートタイム4WDとフルタイム4WDの違い
一口に四駆といっても、大きく分けてパートタイム4WDとパートタイム4WDがあるので、その違いについて解説する。
(滑った時だけ四駆になるスタンバイ式4WDなどもあるが、話が複雑になるので割愛)
パートタイム4WDについて
パートタイム4WDの駆動力の配分
ジムニーやハイラックス、日産キャラバンが採用する4WD方式で、レバーやボタンで二駆と四駆を切り替える方式である。
仕組みを解説すると、エンジン(ミッション)からの駆動力は一旦トランスファーと呼ばれる二駆と四駆を切り替えるギアボックにおくれられ、そこから後輪のデフ(2H)または前後輪のデフ(4H)に、二駆/四駆の選択によって駆動力が配分される。
■二駆の時の駆動力の流れ(後輪駆動)
■四駆の時の駆動力の流れ(前後輪駆動)
ジムニーはFR(後輪駆動車)ベースのパートタイム4WDであり、通常のFR車のプロペラシャフト(前後方向のシャフト)の間にトランスファーを挟んで、状況によって前輪にも駆動力を配分できる仕組みになっている。
パートタイム4WDのメリット/デメリット
パートタイム4WDのメリット①前後輪に均等に駆動力を配分できる
トランスファーを四駆にしているときは、前後のプロペラシャフトが直結状態になるので(実際には2本に分かれているが、常に同じ回転数)、悪路でも強力な駆動力を得ることができる。
上の状態では、フロントデフとリアデフに送られる駆動力は常に50:50であり、後輪が滑っても前輪でトラクションを稼ぐことができるのだ。ただし、前後オープンデフなので、前後輪の片輪ずつが空転してしまう対角スタックになると、オープンデフの宿命で空転していないタイヤに駆動力が伝わらず進まくなってしまうので注意が必要だ(LSDやデフロックなど併用すると、空転していないタイヤ側へも駆動力を伝えることができて走破性が高まる)。
また、JB64/JB74は前後ともオープンデフだが、ブレーキLSDトラクションコントロールという空転しているタイヤにだけブレーキをかけて、空転していない側のタイヤへ駆動力を伝える擬似的なLSDの仕組みを作り出す機能がある。
上左画像のように対角スタックしても、ブレーキLSDシステムで空転しているタイヤにブレーキをかけることで、空転していない側のタイヤに駆動力を伝えることができる悪路においてとても心強いシステムなのだ。
パートタイム4WDのメリット②燃費改善
パートタイム4WDの四駆モードやフルタイム4WDでは常に前後輪に駆動力が伝わっている。後輪だけに駆動力を伝えるより駆動力を伝える部品が多くなるので、その分抵抗が大きくなり4WD走行では若干燃費が落ちてしまう。
一方、パートタイム4WDでは二駆モードにすると後輪にしか駆動力が伝わらないので、その分抵抗を減らすことができ、燃費の悪化を最小限にとどめることができるのだ。
パートタイム4WDのデメリット①
パートタイム4WDの解説で、四駆状態では前後のプロペラシャフトは直結(同じ回転数)になると解説したが、それだとカーブを曲がるときに次のような不都合が生じてしまう。
カーブを曲がるときいわゆる内輪差で後輪は前輪より小さく回るので前輪と後輪で進む距離が異なるのだが、前後のプロペラシャフトは直結状態なので、同じ回転数にならなけらばならない。
ところが、この状態だと前後タイヤの回転数が合わなくなってブレーキがかかったような状態になり車がスムーズに進まなくなってしまう。これがパートタイム4WDの「タイトコーナーブレーキング現象」である。
また、この状態だと駆動系に負担がかかり故障のリスクがあるので、前後のタイヤの回転差を吸収できない乾燥した舗装路では四駆にしないのは基本中の基本である。
フルタイム4WDについて
フルタイム4WDの駆動力の配分
フルタイム4WDでは、駆動力は一度センターデフの送られ、そこから前後のデフに駆動力が配分される仕組みになっている。
フルタイム4WDのメリット/デメリット
フルタイム4WDのメリット①常時4WDで走れる
センターデフがあるため、前輪と後輪の回転差があってもセンターデフで吸収できるので、パートタイム4WDのデメリットで解説した「タイトコーナーブレーキング現象」が起きない。つまり、乾燥した舗装路から悪路まで常時4WDで走行できるのがフルタイム4WDのメリットである。
また、センターデフがオープンデフだと、4輪のうち1輪でも空転すると、空転してないタイヤ全てに駆動力が伝わらなくなってしまうが、フルタイム4WDの多くはセンターデフにLSDを装備しているので、例えばフロントタイヤが空転してもリアタイヤにじわりと駆動力を伝えることができる。
また、センターデフロック機構を備えたフルタイム4WDなら、パートタイム4WD同等の走破性となる。
↑センターデフロックボタン。
パートタム4WDのデメリット①燃費が若干低下
タイトコーナーブレーキング現象が起きずに常時四駆走行できるのがフルタイム4WDのメリットであるが、常時4輪に駆動力を配分するので、その分各部の抵抗が増えたり、センターデフなどの機構で重量が増えることで燃費が悪くなってしまう。
下の例は2WDとフルタイム4WDをラインナップするハイエースのカタログ燃費だが、フルタイム4WDだと2WDに比べ燃費が悪くなっている。
バン・ディーゼル | バン・ガソリン | ワゴン・ガソリン | |
2WD | 11.98km/L | 9.07km/L | 8.80km/L |
4WD | 11.48km/L | 8.10km/L | 8.10km/L |
雪道での2H/4H/4Lの使い分けについて
人によって違うし、コンディションによっても一概には言えないのだが、48Rの例で解説してみる。
いつ4Hに入れるか
48Rが4Hに入れるタイミングは下表が大体の目安です(路面コンディションにより、これ通りではない時もあるけど、大体の目安)
市街地 | 山道 | |
路面が雪で濡れる | 2H | 4H |
積雪路 | 2H or 4H | 4H |
シャーベット状の雪 | 4H | 4H |
アイスバーン | 4H | 4H |
路面が濡れている状態
凍結しておらず雪で路面が濡れているくらいであれば、急に滑ることもないので市街地では2H走行。市街地では交差点やコンビニやスーパーの駐車場など、ハンドルを大きく切る場面も多く、タイトコーナーブレーキング現象もできるだけ避けたいからだ。
一方山道で不意に路面温度の低い橋の上で積雪や凍結していたり、日陰の雪が残っていたりするので、無難な4Hを選択している。急なアイスバーンがあっても咄嗟に2H→4Hに切り替えるなんて不可能なので。
積雪路
積雪路の市街地では、平坦なら2Hでも滑らずに発進できるし、駐車場に入ったときに「タイトコーナーブレーキング現象」が起きてしまうので、基本2Hで走行している。ただ、積雪が多くなり轍が深くなったり、除雪が間に合わずに道がガタガタだったりしたら、4Hに入れた方が直進安定性が出てくるので、状況によって使い分けている。
一方山道では、コーナーや上り坂で後輪が滑ってケツ振り状態になるので、4Hが圧倒的に走りやすい。2Hだとケツを降りながら登るような積雪の山道でも、4Hなら挙動を乱さずに登ってくれる。
シャーベット状の雪
乾いた積雪路はタイヤの溝がしっかりと雪をつかむ雪柱せん断力によって比較的グリップするのだが、シャーベット状の雪だと雪柱が崩れるためスタッドレスタイヤでもスリップしやすいコンディション(事故も多い)。
また、水を含んだ重い雪のわだちでハンドルも取られやすいので、市街地山道ともに4Hで走るのが無難。
アイスバーン
アイスバーンについては、積雪路に比べて圧倒的に滑りやすいので、基本どんなシチュエーションでも4H走行。アイスバーンで2Hだと発進するだけでも滑るし、コーナー中にアクセルを踏んでリアが滑るとスピンしやすいので(少し滑るくらいならカウンターステアで耐えることもできるが、アイスバーンだと急にスピンする)、4H走行が無難である。4Hならコーナーでアクセルオンで滑っても弱アンダーになるので、スピンしにくいので自分はこのほうが安心して走れると思っている。
なお、ジムニーで4Hに入れても、発進のホイルスピンやリアの滑りは抑制されるものの、ブレーキの制動力は全く変わらないことは十分に注意してください。
ブレーキは2WDでも4WDでも元から4輪制御なので、4Hにしたからってブレーキが効くようになることはないです。
なので、雪道では車間距離は2倍は取ってください!
雪国でも、駐車場ではこまめに2Hに
先に説明したタイトコーナーブレーキング現象では乾燥した舗装路では駆動系を痛めるので極力避けるべきではあるが、濡れてても前後輪の回転差が大きい車庫入れでは駆動系に大きな負担がかかってしまう。
雪道でコンビニに寄る時も、駐車場で一旦2Hに入れ直すなど、こまめな切り替えが必要だ。
ジムニーの説明書(↓)にも、濡れた路面であっても極力4WDは避けてくれとの表記があるので、タイトコーナーブレーキング現象が起きないよう注意してください。
4Lの使い道は?(JB64/JB74限定ブレーキLSDについて)
4Lは基本雪道走行ではまず使わない。
じゃあいつ使うかというと、スタックしたとき。
パートタイム4WDでも前後輪の1輪ずつがスタックする対角スタックになると空転していないタイヤにも駆動力が伝わらなくなってしまう。
そこで4Lを選択すると、ブレーキLSDトラクションコントロールが作動するので、スタックから抜け出すことが可能である。
ジムニーで調子乗って除雪してない駐車場に突っ込んでスタックしたとき、なんど4Lに助けられたことか。。。
ジムニー 2H/4H/4L 使い分けまとめ
ジムニーの雪道走行における基本的な2H/4H/4Lを解説してみました。
実は48Rはエアロロッキングハブの配管が壊れて四駆にならないJB23ジムニーで1シーズン白馬村で乗り倒した経験もあるのだが、高性能スタッドレスタイヤなら2Hのみでも走れないことはないのだが、安心感という面では4Hと比べると雲泥の差です。
皆様も雪道では適切なタイミングで四駆に切り替えて、安全にスノードライブを楽しんでください!
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。