シマノ ホローテック2クランク BBの脱着方法や種類について、詳しく解説する。
BBの回転性能は自転車の要、ずっと使っているとベアリングに汚れが侵入したり錆で回転性能が落ちてくるので、定期的にメンテナンスしよう。
シマノのホローテック2のBBは、MTBのXTやロードのアルテグラクラスでも実売3千円もしないので、BBを洗浄グリスアップするより定期的な新品交換をオススメします(48Rは1、2年で定期的に新品交換している)
今回の記事ではホローテック2のクランク/BB脱着だけでなく、ホローテック2 BBの種類や必要工具についてもまとめてます。
シマノ ホローテック2とは
ホローテック2はシマノが開発した技術で、それまでのクランク/BBの概念を覆す革新的なクランクである。ここではその特徴について簡単に説明する。
ホローテック2以前のBB構造
従来のBBは四角軸やシャフトを太くしたシマノ オクタリンクBBのように、BBがフレームBBシェル内に収まるような構造が一般的だった。
↓今ではママチャリやシティサイクルでしか使われていない四角軸。
↓四角軸からシャフト径をアップさせて高剛性化したシマノ オクタリンク
このような形の場合、剛性を上げようとシャフト径を大きくしようとするとベアリングのスペースが小さくなり、結果ベアリング球が小さくなりベアリングの負担は増すことに。一方でベアリング球を大きくしようとするとシャフト径が小さくなり、今度はクランク軸の剛性不足ということになる。
つまり、BBシェル内に収まる構造では、シャフト剛性とベアリング性能を両立することに限界があったのだ。
【革新的構造】ホローテック2でベアリングがシェルの外に出た!
そこに登場したのがシマノ ホローテック2。
こいつの特徴は、ベアリングがBBシェルの外に出たこと!
これにより従来のシャフト径とベアリングスペースのジレンマを解消でき、シャフト径を一気に太くすることができる上、ベアリングがBBシェルの外に出ることによりベアリングサイズの制約もなくなり、さらに広い幅でクランクシャフトを保持することで一気に剛性が上がったのだ。
↑広く保持することでベアリングの負担も減り(狭く保持するほどシャフトのねじれに対するベアリングの負荷が上がる。スコップを両手でも持つ時、狭く持つと手の負担大きく土掘れないでしょ)、回転性能も飛躍的に向上することに。
このホローテック2の革新的な構造は、従来のオクタリンクに対し剛性/回転性能/軽量性に大きなアドバンテージがありデメリットもほとんどないことから、スポーツ車においてはオクタリンクをほぼ駆逐することになり、今現在まで続くBBのスタンダード形状になったのだ(現在メジャーなFSAやSRAM dubもシャフト径やBB幅が異なるだけで、その構造はホローテック2を源流としている)
右クランクアームとBB軸を一体構造化
それまでのクランクは右クランクアーム、左クランクアーム、BB軸と3ピース構造であったが、ホローテック2クランクは右クランクアームとBB軸を一体化した構造となった。
これによりクランク部全体の剛性と軽量性のさらなる高次元バランスを実現。
ホローテック2 BBの種類
ホローテック2 BBの脱着方法解説の前に、シマノBBの種類について整理しておく。これが種類が多くてややこしいのだが、表でまとめると多少理解しやすい(表は横にスクロールします)
用途 | 製品 | グレード | 重量 | 対応シェル幅 | BB外径 | アダプター |
MTB | SM-BB93 | XTR | 73g | 68mm/73mm | φ39mm | TL-FC24 |
BB-MT800 | DEORE XT | 95g | 68mm/73mm | φ41mm | TL-FC25 | |
SM-BB80 | SAINT | 95g | 68mm/73mm | φ44mm | 不要 | |
SM-BB80 | SAINT | 96g | 83mm | φ44mm | 不要 | |
huyouロード | BB-R9100 | DURA-ACE | 65g | 68mm/70mm | φ39mm | TL-FC24 |
SM-BBR60 | ULTEGRA/105 | 77g | 68mm/70mm | φ41mm | TL-FC25 | |
BB-RS500 | TIAGRA | 92g | 68mm/70mm | φ44mm | 不要 | |
その他スポーツ車 | SM-BB52 | - | - | 68mm/73mm | φ44mm | 不要 |
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さらに各項目についてい、詳しく解説していく。
ロード用とMTB用はBB互換性がない
ロード用とMTB用のBBはベアリング部の厚みが異なっている。
これはクランク軸の長さがロードとMTBで異なるためで、BBもクランク軸の長さに合わせるため、ベアリング部の厚みでそれぞれのクランク軸長に合わせているのだ。
したがって、ロード用とMTB用のBBの互換性はない。
(シマノのホローテック2BBには「MOUNTAIN」「ROAD」の表記があって、BBの厚みを表している)
工具に注意
BBは専用工具で取り付けするのだが、BB外径44mmを基準に工具が設計されているので、外径39mm、外径41mmの上位グレードに対しては変換アダプターが必要である。
↓こちら、外径44mmに対応したシマノ純正工具「TL-FC36」。
TL-FC36はBB外径44mm用なので、BB外径39mmのBBを回すには、アダプターをかます必要がある。
こちら、39mm→44mm変換の「TL-FC24」
DURA-ACEやXTRのBBに付属しているが、完成車のBBを外したい場合のために単品でも販売されている。
もちろんBB外径41mmに対応した「TL-FC25」も新品BBにはアダプターが付属されているが、同様に単品購入も可能だ。
ちなみに、純正工具にこだわらなければ、ホローテック2の三種類のBB外径に対応した工具も売られている。
片側がBB外径44mm対応、反対側の裏表がそれぞれBB外径41mm/BB外径39mm に対応しているマルチツールである。
対応シェル幅はスペーサーで調整する
BBシェル幅とは上の部分の幅のこと。
MTB用を例にとると、MTBは73mm幅が標準なので、68mmのシェル幅に取り付ける場合は5mm分スペーサーで幅を稼ぐ。
また、ダウンヒル用バイクはほとんどがBBシェル幅83mmなので、実質SAINTしか選択肢がない。
グレードが上がるほど軽い
グレードが上がるほどBB外径がコンパクトで軽量な作りになっている。
とはいえ、昔の四角軸BBに比べると遥かに軽いホローテック2BBなので、下位グレードでも十分に軽いし上位グレードと20g程度しか変わらない。しかしながらBBは安い部品なので、XTRとDEORE XTで実売千円程度の差なので、千円で20g軽くするか、悩ましいところです(笑)
ちなみに、48Rは安いSAINTを1年ごとにポンポン交換しています。
シマノ ホローテック2クランクBB脱着方法
必要工具
・トルクレンチ
・プラスチックハンマー
・5mm六角レンチ
・ホローテック2用 BBツール
・ホローテック2用クランクキャップツール
・ブレーカーバーなどハンドルの長いツール(上の写真には撮り忘れた)
・マイナスドライバー(上の写真には撮り忘れた)
ホローテック2用の工具は、48Rの場合はストレートのものを使っている(下画像左)。
この工具、ホローテック2用BBの脱着ができるだけでなく、真ん中部分がクランクキャップ用ツールになっている上、さらに12.7SQの差し込み角も付いているのでトルクレンチやブレーカーバーを使うことができるのだ。
シマノ ホローテック2クランク/BBの外し方
手順①チェーンリングからチェーンを外す
チェーンを切る必要はなく、トップギア(1番小さいギア)の状態でディレイラーの下側を車体前方に動かすとチェーンテンションが緩むので、チェーンリングからチェーンを外すことができる。
手順②左クランク根本の5mm 六角ボルトを緩める
クランク根本に裏表2本の六角ボルトがあるので、5mmの六角レンチで緩める。
完全に取り外す必要はなく、少しボルトの頭が飛び出す程度でOKだ。
手順③クランクキャップボルトを取り外す
左クランクのクランク軸にプラスチック製のキャップボルトが取り付けられている。
ここは必要工具でも紹介した専用ツールを使う。
クランクキャップボルトは大したトルクもかかってないので、手で緩めることができる。
手順④クランク脱落防止の爪をあげて、左クランクアームを取り外す
左クランクアームは脱落しないように爪でロックされているので、その爪をマイナスドライバーで上げてやる。
こんな感じで爪を上げてやれば、するりと左クランクアームをクランク軸から抜くことができる。
ちなみに、下の状態は左クランクアームを外して爪を下げた状態。
爪の先の突起がクランク軸の穴に嵌合してロックされる仕組み。
手順⑤右クランクアーム(軸と一体)を取り外す
通常は手で引っ張れば取れるはず。
硬いようなら、反対側からプラスチックハンマーで叩いて取り外そう。
外れました。
(BBを新品に交換して組み直すだけならペダルは外す必要なかった)
手順⑥ホローテック2 BBの取り外し
ホローテック2用のBBツールを使って取り外す。
ちなみに、ホローテック2のBBは左が純ネジ、右が逆ネジになっている。
つまり、
・左BBは反時計回りで緩める
・右BBは時計回りで緩める
となっているので、緩める時注意!(間違えて締めないように)
ストレートのBBツールは12.7SQに対応しているので、力の入れ易いブレーカーバーを使用している。
年1で交換していると、特に固着することなく簡単に外れるが、数年交換してないと固着してたり、変なメーカーの完成車だと鬼トルクで締め付けられていることがある。そんな場合はシマノ純正工具だとハンドルが短くて作業が大変。
今回は固着していないので、簡単に外れた。
右側も逆ネジに注意して緩める。
BBシェルには古いグリスが残っているので、パーツクリーナーとペーパーウェスでクリーニングする。
以上で取り外し作業は完了です。
シマノ ホローテック2クランク/BBの取り付け方
取り付けは取り外しの逆手順なので、要点以外はサクサク解説。
手順①グリスを塗布してBBの取り付け
シマノのBBはグリス指示なので、シマノのプレミアムグリスをBBねじ切りに塗布する。
BBに取り付けるスペーサーの枚数はマニュアルに記載されているBBシェル幅に応じた枚数を使う。
BBの締め付けトルクは「35-50Nm」。まずは正ネジの左から組み付ける。
48Rは固着が嫌なので、指定トルクで1番軽い35Nmに設定している。
BBは右が逆ネジのため、左右のBBとも漕いでいると締まる方向に力がかかるので、指定トルク下限でも緩む心配はない。
右側は逆ネジでトルクレンチは使えないので、先に締めた左側の感覚を頼り手るくレンチで組み付ける。
手順②クランクアームの取り付け
まずは右クランクをBBに当たるまで挿入する。
左側クランクアームを取り付ける部分位はプレミアムグリスを塗布。
脱落防止の爪とクランク軸の穴を合わせて左クランクアームを挿入する。
脱落防止の爪を下げる(きっちり下がらないようなら、左クランクアームがずれている)。
手順③クランクキャップボルトの取り付け
クランクキャップボルトのネジ山にもグリスを塗布する。
専用ツールで組み付ける。
締め付けトルクは0.7-1.5Nm。多分手でぎゅっと締めるくらいで大丈夫なトルク(クランクアームのネジを閉めたらクランクキャップボルトも固定されるので、心配無用)
手順④左クランクアームの取り付けボルトの締め付け
ここのボルトのトルクは12−14Nm。
一度に締め付けるのではなく、二つのボルトを交互に少しずつ締めていく。
(構造的に、一気に締めると二つのボルトが同じトルクにならない)
最後にチェーンをチェーンリングにかけたら作業は完了。
取り付けは以上です。完了お疲れ様でした。
シマノ ホローテック2 脱着まとめ
BBツールは揃える必要あるが、作業自体は自転車メンテナンスの中では簡単な部類。
BBはクランク回転の軽さに直結する部分なので、定期的な新品交換をお勧めします(シマノBBは安いので、シール外してグリスアップするよりまるっと交換がお手軽)。
特にマウンテンバイクで泥などを浴びているとBBがパキパキ鳴り出している人はだいぶ回転性能が落ちているので要注意ですよ!