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29er MTBをマレット化して感じたメリットデメリットについて【Specialized ENDURO Mullet Ver.】

愛車SPECIALIZED ENDUROをカスタムパーツを使って29er→マレットにしてみた。

色々なホイールサイズのあるMTBだが、下り系MTBのここ数年のホイールサイズの変遷をたどると

「前後27.5インチ」→「29インチ」→「前29インチ後27.5インチのマレット」

という流れになっており、48Rも最新のマレットバイクに興味津々。

とはいえ、2023年に29インチのSpecialized ENDUROを乗り始めたばかりなので、マレットバイクに買い替えるのは資金的に厳しい。

そんななか、29インチのENDUROのリアに27.5インチのホイールを装着したとき、後ろ下がりになるジオメトリーを修正するカスタムパーツを発見!愛車をそのままマレット化できるため、速攻で飛びついてしまった。

また、今回は同じバイクでリアホイールだけ27.5にしてジオメトリーの修正しているので、29erとマレットの違いやメリットデメリットを明確に感じることができたので、そのインプレを共有します。

 

※48Rは特に速くもないおっさんライダーですが、スキルに関係なくマレットにはメリットあると思ってます。というか、MTBは乗りやすいバイクに乗るといきなりペースが上がったりするので、つくづく機材スポーツなんだなと思ったりします。

 

マレットとは

マレットとは前後に異なるホイールサイズを装着することで、圧倒的主流はフロントに29インチ、リアに27.5インチのセットアップだ。

下り系MTBは前後27.5インチが主流だったが(もっと昔は26インチ)、走破性に優る29インチが登場し一気に前後29インチが主流になったものの、一方で29インチホイールは重く取り回しが悪いのと背の低いライダーにとってはお尻がタイヤにヒットしやすく(特に斜度のあるDHコース)、デメリットもあるものだった。

ところが、2019年頃、UCIレギュレーションが変更になり前後異径ホイールが認められるようになると、安定性に影響の大きいフロントは走破性の高い29インチにして、リアは取り回しの良い27.5インチにする良いところ取りのセットアップが主流に(2023年シーズンではダウンヒルワールドカップでは8割以上がマレット)

2023年のDHワールドカップタイトルもpecialized DEMOのマレットバイクを駆るロイックブルーニーが戴冠することとなり、マレットの優位性は間違いのないものになっている。

 

マレットにする理由

マレットにする理由の前に、29erのメリットデメリットから整理するとマレットの合理性が分かりやすい。

 

29erのメリット

メリット①凹凸に強い

29インチが好まれる理由はなんといっても凹凸をものともしない走破性の高さ。

下の絵は車輪がギャップを乗り越える時の反力(赤矢印)を車輪の大きさ別に表したもの(差がわかりやすいように、明確に大きさに差をつけている)

赤矢印の長さは全て同じである(荷重は同じである設定のため)。

反力はタイヤとギャップの接触点からタイヤ中心方向となる。このとき、反力の水平方向の成分(水色矢印)が走行抵抗として車速を減速させるが、上の図のように、車輪が大きいほど赤矢印の向きが垂直に近づく方向になり、走行抵抗成分である水色矢印が短くなっている。

つまり、車輪は大きければ大きいほどギャップ乗り越しによる走行抵抗を受けにくく車速が落ちないのだ。

ゆえに29インチは岩や根っこで衝撃を受けにくくスピードが落ちにくいのである。

 

 

メリット②安定性が高い

車輪が大きければ大きいほど、ホイールのジャイロ効果が大きくなり直進安定性が高くなる。

ジャイロ効果をざっくり説明すると、物体が回転すると、その回転が速いほど姿勢が乱れにくくなる現象である。また、ジャイロ効果はホイール径(正確にはホイールの慣性モーメント)が大きいほど強くなる。

 

ジャイロ効果を利用したおもちゃがコマである。喧嘩コマでも大きくて重いほど、ぶつかっても回転軸が乱れないのでイメージできると思う。

 

というわけで、安定性が高いと言われる29インチであるが、物理的にはジャイロ効果によって多少のギャップに当たってもバイクの姿勢が乱されにくくなっているのである。

 

 

29erのデメリット

デメリット①ハンドリングがもっさりする

メリットで挙げたジャイロ効果による安定性だが、裏を返せば回転軸を動かしにくくなるので、ハンドリングに機敏性がなくなる方向になる。

(スポープスタイルのMTBで小径が好まれるのも、ジャイロ効果低減を狙っているし、48RがBMXでダージャン怖くて飛べないのも、ジャイロ効果が小さく安定感がないからです)

 

 

デメリット②お尻がタイヤに当たる

これは体格的な問題もあるのだが、29インチを後輪に履くと問題になるのがお尻とのクリアランス。

斜度のあるコースやドロップオフで腰を引いた時、背の高くない(48Rのように股下の短い日本人体型)はお尻がタイヤにヒットしてヒヤリとしたり、身体を動かせる自由度が減ってバイクコントロールに影響するのである。

(ワールドカップダウンヒルでも、未だ29インチを好んで使っているのはグレッグミナーをはじめ身長180cm以上の巨人族ばかり)

 

 

最適化を狙ったマレットセットアップ

ここまでで29インチのメリットデメリットをみてきたが、マレットバイクの狙いは29インチと27.5インチのメリットデメリットを最適化することにある。

 

つまり、障害物を乗り越えるのに重要となるフロントには走破性の高い29インチを履き、ジャイロ効果が小さく取り回しがよい27.5インチをリアに履くことで、リアを振り回しやすくバイクのコントロール性やコーナリング性を高めているのである。また、後輪側を27.5インチにすることで身体を動かすスペースを広く取り、バイクコントロールしやすくアグレッシブに乗れるようなセットアップになっているのである。

 

 

 

実際に同じバイクで29erとマレットを乗り比べてみた

SPECIALIZED ENDUROのマレット化

さて、マレットの合理性を理解すればするほど乗りたくなるのがライダーの性。

とはいえ、今シーズン29erのSPECIALIZED ENDUROをおろしたばかりで、マレットを試してみたいものの乗り換えるのはもったいない。

また、リアタイヤに単純に27.5インチを入れるとリア下がりになりヘッドアングルが寝過ぎたりBBが低くなりすぎたりジオメトリーの不具合もでてしまう。

 

そんとき、インスタで見つけたのがWRPのマレットヨーク

※左の長いのがマレットヨークで、右が純正ヨーク

 

このヨークを取り付けることで、リアに27.5インチを装着してリア下がりになるバイク姿勢を、ショック+ヨークの全長をアップすることで補正できるのである。

 

設計値では、29erとマレットでヘッドアングの差は0.1度に補正されている。

BBハイトも1.2mmしか下がって無い。

 

マレットに興味津々だったので速攻で輸入した(笑)

 

 

実際に乗ってみたマレットバイクの印象

マレットにして富士見パノラマ、ふじてん、岩岳を走ってきた。

 

第一印象としては、とにかくリアが軽快!

ジャンプしてリアをひねる(ウィップはできないので、ちょっとリアを横に振るだけ)動作も明らかに29インチより軽いし、コーナーではリアを振り出しやすく取り回しが良い!

29erのENDUROに乗り換えて、確かに29erは速いには速いのだがバイクに乗せられて速くなっているだけ感が強く、27.5インチのMondraker DUNEの頃のようにバイクをコントロールして走る楽しさが欠けていたと感じていたのだが、この度のマレット化で速い上にコントロールしやすいバイクに進化を遂げた感じである。

 

また、足が短い人の悩みであったお尻がタイヤにヒットする問題も解決し、身体の自由度が増しより積極的にバイクの上で動けるようになったし、お尻をタイヤにヒットするヒヤリハットもなくなったので、よりライドにも集中できるし楽しくなった。

 

一方で、転がり抵抗はちょっと悪くなったのは実感できて、岩岳などノーペダルでスピードを維持して走る区間では若干のスピードの低下を感じている(リアタイヤをミシュランのワイルドエンデューロから同ミシュランのDH22にしたので、その影響の可能性もあり。同じタイヤを用意したかったけど、ワイルドエンデューロのレースラインは29インチしか設定なかった。。)

楽しさより単純な速さが重要になってくるレースで斜度ないコース設定になってくると、前後29インチの特性が活かされそうである。

 

 

また、細かいところではタイヤを前後別々に用意しなければいけないとか、減りにくいフロントをリアタイヤに使い回すとか、緊急用のチューブも29インチと27.5インチで2種準備が必要とか、まだまだ完組ホイールでマレット設定少ないとか、所有してわかる細々した運用上のデメリットも感じている。

 

とはいえ、性能的には48Rは29インチの走破性と27.5インチの軽快性のいいとこ取りのマレット一択と言えるほど気に入ってる。しばらくはマレットで乗り込みます!

 

※余談だが、マレットとハイピボットバイクはすごく相性が良いのではと感じている。27.5のメリットとしてギャップの抵抗が大きいのは説明したが、ハイピボットのようにリアタイヤが後ろに下がるようにストロークするハイピボットバイクは27.5インチが受ける抵抗を上手くいなしてくれるのでは?と思っている。

 

また、下り系ハードテールがいまだ29er主流なのは、リアサスペンションがないHTにとってなるべく大きなリアタイヤを履くことで衝撃に対処しているものと思われる。

 

 

マレット化のまとめ

性能を考えると前後にそれぞれに合ったホイール径を装着するというのは、オートバイのモトクロッサーを見ても当然の帰着なのかもしれない(前後同径ホイールのレギュレーションは縛りプレイかよ!)。

 

前後異径が解禁されてまだ数年なので、まだこれからまだ進化する余地はあるのかもしれないが、48Rが乗った印象から、欧米人のように足が長くない日本人にとっては前29インチ、後27.5インチのマレットが最適解になる人は多いのではないだろうか?

48Rもしばらくはマレットに跨ることになりそうだ。

 









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