ジムニーは小さくても本格的なクロカン四駆のイメージで雪道にも強いと思っている人は多いのではないだろうか。
実はこれ、半分正解で半分間違いです。
深い雪が積もった道ではジムニーは無類の強さを発揮するが、積もった雪が硬くなればなるほど、さらにアイスバーンになるほどジムニーの弱点が露呈する。
ジムニーは雪に強いと盲信して周りのSUV車と同じペースで走ると事故る可能性もあることから、注意喚起として記事にさせて頂きます。
今回ジムニーが雪には強くアイスバーンに弱い理由の解説と、それでも冬道全般を安全運転するためのコツを解説したいと思います。
また、ジムニーの雪道での2H/4H/4Lの使い分けについては別記事で書いてます。
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ジムニーは雪には強くアイスバーンに弱い
ジムニーが雪に強い理由
タイヤが大きいので新雪に強い
ジムニーは外径が大きなタイヤが装着されている。新雪ではタイヤが沈み込むので、タイヤが大きいほど雪から受ける抵抗が少なく走破性や耐スタック性が高くなる。
簡単な絵を描くと想像しやすいが、同じ深さの積雪でも、タイヤが小さいと大きな抵抗になるのだ。
その点ジムニーはタイヤ外径680mmと軽自動車の中ではダントツ、乗用車の中もで比較的大きな外径のタイヤを装着しているので雪に強い。
経験的に軽い雪なら30cm弱の新雪でもガンガン進めるので、除雪が間に合ってない大雪でも走ることができる。
パートタイム4WD+ブレーキLSDはスタックしにくい
パートタイム4WDは常に前後に50:50の駆動力を配分しているので、雪道などの悪路の走破性が高い。一般的なセンターデフ式のフルタイム4WDは前後タイヤの回転差を吸収するためのセンターデフが装着されているため、4輪のうちどれか1輪がスリップすると全体の駆動力が落ちてしまうが(センターデフにLSD的な機構をプラスしていたり、センターデフロックを装着するフルタイム4WDもあるが)、パートタイム4WDは前後のプロペラシャフトが直結状態なので、滑りやす路面のトラクションに優れるのだ。
また、パートタイム4WDでも前後が1輪ずつスタックする対角スタックになると残るタイヤに駆動力が伝わらなくなりスタックしてしまうが、JB64/JB74には「ブレーキLSDトラクションコントロール」が装備されており、対角スタック時でも空転してないタイヤへ駆動力を伝える機構が装備されている。
これはデフの作用により例えば右前輪が空転すると左前輪に駆動力が伝わらないのだが、空転した右前輪だけにブレーキを効かせることで左前輪にも駆動力を配分できるLSD的な効果をブレーキ制御で作り出すシステムである(ベテランジムニードライバーの中には対角スタックしたとき、サイド引いたりブレーキ踏みながらアクセルを踏んで同様の効果を発揮している人もいらっしゃるのではないでしょうか)。
48Rもスキー場の駐車場の空きがないとき、だれも停めてない新雪に駐車してスタックした経験が何度かあるが、「ブレーキLSDトラクションコントロール」でいとも簡単に脱出できて何度も驚かされた。
これ、めちゃくちゃすごいです!
ジムニーがアイスバーンに弱い理由
ホイールベースが短く不安定(スピンしやすい)
ホイールベース(前ホイールと後ろホイールの距離)は車の安定性にとても重要なファクターで、長ければ長いほど車が安定するし、逆に短いと不安定になる。
ジムニーはホイールベースの短さに起因する安定性不足によって荒れた雪道ではハンドルが取られやすいし、アイスバーンでの運転は恐怖を覚えるほどである。
特にアイスバーンでのカーブではリアの滑りが唐突で、普通の車ならゆっくりお尻を振るところ、ジムニーではとても振られが急で気難し挙動となる。また最悪スピン状態にも陥りやすい。
ちなみに、ジムニーと他のスズキ軽自動車のホイールベースを比較してみたが、ジムニーは特にホイールベースが短い設計となっている。
また、他のSUV車と比較すると、ホイールベースの短さは一目瞭然。
ジムニーは雪に強いと盲信して、普通車SUVと同じペースで走ろうとすると、とても危険なのである。リアが滑ったと思ったら、カウターステアを当てる間もなくスピンなんてことになりかねない。
(私はブラックアイスバーンの交差点でスピン経験あり。カウンターステア当てたり横滑り防止装置が働く間もなく、一瞬で車が180度回転しました)
ま、ジムニーのホイールベースは凹凸の乗り越え性なども考慮されて決定しているので、いたずらにホイールベースを伸ばしてランプブレークオーバーアングルが低下して腹を擦りやすくなってしまっても本末転倒である。
車のホイールベースは安定性や悪路の走破性や車内空間など、色々なファクターを考慮してその車の目的にあった最適解になっているのである。
以上のように、ジムニーはアイスバーンではとてもナーバスな挙動になる、リアの振られはピーキーだしスピンもしやすいのでご注意を!
ジムニーの雪道運転のコツ
さて、ここからジムニーで雪道運転する時のコツについて。
偉そうに書いているが、筆者48Rは何度か雪道での事故やヒヤリを経験している。その経験のおかげか、いまではかなり安全運転をするようになりここ10年はほとんど危ない目に遭っていない。
また、48Rが事故ったときも天の行幸か重大な事故にはならなかったが、一歩間違えれば重症を負っていたかもしれない。
ブログ読者様が最初の事故で重大事故にならないよう、私を反面教師に雪道を安全に走る方法について共有させて頂きます。
メモ:ジムニーの雪道運転のコツ
- 急のつく動作はしない
- 車間距離は2倍以上(下坂はもっととる)
- コーナーへの減速は手前で完了させる(コーナー中にブレーキしない)
- 交差点周辺はアイスバーンになりやすい
- 橋もアイスバーンになりやすい。
- 日陰のアイスバーンは溶けない
- トンネル出口に気を付ける
- 路面の変化には超気をつけろ
- わだちが出来ている場合はわだちに沿ってはしる。
- わだちの中がアイスバーンになっているときは、わだちから出て走ることもある
- グリップする路面を見極めたライン取り
- ブレーキは後続に合図してから。
- 追いつかれたら道を譲る(無理しない)
- 側溝が雪で埋まっている場合がある
- 安全を確認してブレーキテストしてみる
順に解説します。
1. 急のつく動作はしない
これは雪道運転「基本のき」ですよね。
雪道はとても滑りやすいので、とにかく急発信、急減速、急ハンドルをすると、いとも簡単にタイヤのグリップを失い滑ってしまう。
雪道ではふんわりアクセル、ハンドルはそっと切る、ブレーキは晴れの日よりだいぶ手前からじんわりかける、などとにかく優しい運転を心がけよう。
2. 車間距離は2倍以上(下り坂はもっととる)
乾燥路に比べて雪道、ましてアイスバーンは乾燥路の数分の1の摩擦しかない。
高性能スタッドレスタイヤを履いていても乾燥路に比べ制動距離がかなり必要なので、「雪道の車間距離は乾燥路に比べて2倍くらいとる」ことを意識しよう。また、下り坂では重力に車が引っ張られるのでさらに制動距離が伸びてしまう。下坂ではさらに車間距離確保を意識しよう(スキー場の下り坂で止まれずガードレールに突き刺さる車を何台もみてきた。下りは超危ないです。。)
3. カーブへの減速は手前で完了させる(カーブ中にブレーキしない)
カーブに入る前にはしっかり曲がれる速度まで減速しましょう。
滑りやすい雪道のコーナリング中にブレーキを踏むとどうなるか、知ってますか?
タイヤのグリップは縦方向と横方向に使えるグリップの上限が決まっている。
かなり簡単化した例えだが、スタッドレスタイヤのグリップ力が10だとしたら、カーブで横方向のグリップを7使っているとしたら、減速には3しか使えない。
たとえば、カーブで横方向のグリップ力8で旋回しているとき、スピード出過ぎたと思ってブレーキを踏んで減速にグリップ力5を使ったら横方向のグリップが8から5になってしまい、カーブを曲がれず外方向にはらんでしまう。最悪ガードレールや壁にぶつかるだろう。
というわけで、カーブの手前で十分に減速して、旋回中はブレーキを踏まずにタイヤには横方向のグリップだけ負担させるのが安全である。カーブの中でオーバースピードに気がついても手遅れです。
(安全な雪が積もった空き地があれば、円旋回しながらブレーキを踏むと車がコーナリングラインから外にはらんでしまうのが安全に体感できます。練習環境があれば試してみてください)
4. 交差点周辺はアイスバーンになりやすい
交差点付近はみんなブレーキをかけるので、圧雪路が磨かれて圧雪アイスバーンになったり、アイスバーンがさらに磨かれて一番滑るミラーバーンになったりする。
厳冬期は交差点全体がミラーバーンという恐怖の交差点になっている場合もある。
こんな状況では車は全然停まらないので、交差点ではアイスバーンになっているかも?という意識を常に保つことが重要だ。具体的にはたとえアイスバーンになっていても十分に止まれるくらい、交差点のかなり前からブレーキペダルを優しく踏んで減速する。こういう運転を心がけていれば、いざアイスバーンでも十分止まれるだろう。
ちなみに48Rは雪道運転に慣れていない頃、赤信号の交差点でブレーキを踏んでもアイスバーンで全然止まれず、交差点の真ん中まで突っ込んだ経験あり。幸い横から車が来なかったので九死に一生を得たが、ブレーキペダルを折れんばかりに踏み込んでも全然滑って止まれない最中は、生きた心地がしなかった。。。
5. 橋もアイスバーンになりやすい。
交差点の次に危険なのが橋の上。
橋は地熱がないうえ橋に熱を奪われるので非常に凍結しやすい。まだ普通の道路がウェットでも橋だけ凍結していたり急にグリップの変化があるので十分に気をつけよう。
橋の上は凍っているかも?と意識するだけでだいぶ運転も慎重になります。
かくいう48Rも橋の上でハイエースの後輪がスリップして、カウターあててスピンは耐えるもの次のコーナーを曲がれずガードレールにぶつかった経験あり(素直にスピンしたほうが被害少なかったかも)。
6. 日陰のアイスバーンは溶けない
山道には木や崖の影になってずっと日が当たらない場所があるもの、こういう場所では雪やアイスバーンが溶けずに残っているので非常に危ない。
カーブを曲がった先に急にアイスバーンが現れることもあるので、雪が溶けていても山道では十分に気をつましょう。
48Rは大学生の頃、当時所属していたバイク部のツーリングで3月に和歌山の龍神スカイラインを走りに行ったのだが、ブラインドコーナーを曲がった先がアイスバーンになってて先頭走ってた先輩が見事に散りました。。
7. トンネル出口に気を付ける
トンネル出入り口は日陰になるので雪やアイスバーンが溶けにくい他に、トンネルの入り口と出口で天候が大きく変わることもある。
川端康成の小説『雪国』の冒頭の「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」 というように、トンネルを抜けるとそれまで雪がなかったのにいきなり積雪路になることもあったりするので長いトンネルは特に用心が必要だ。
48Rも関越トンネル出口でいきなり氷雪路に出くわし、120km/hの速度からサンバー(2WD)が制御不能になった経験あり。このときは何度かカウンターステアをあてて車を立て直すことができたが、まったく運がよかった。一歩間違えたら死んでたなと思う。
ちなみにNEXCO東日本のヒヤリマップでもスリップ事故発生しやすいと書いているので、皆さん気をつけましょう(トンネル出口の路面変化に注意って書いてるやん。2WDのサンバーが雪に弱すぎというものあるが)
8. 路面変化に超気をつけろ
ここまで様々な危険路面について書いてきたが、路面状況の変化には常に気を配らなければならない。
なぜなら、雪道では新雪、シャバ雪、圧雪、凍結路面、アイスバーンなど、路面状況が刻一刻と変化するが、比較的グリップの良い圧雪路を良いペースで走っていて、急に現れるアイスバーンなどが落とし穴になるからだ(48Rが事故ったのも、圧雪路から橋の上のアイスバーンへの路面変化)。
交差点、橋の上、トンネル周辺、日陰などは周囲と路面状況が異なる場合が多いので、十分に注意しましょう。
9.轍(わだち)が出来ている場合はわだちに沿って走る
積雪している道路では轍ができている場合が多いが、基本轍に沿って走ったほうが安定する。轍の外は柔らかい雪でハンドルを取られたり、急に轍にタイヤを落として振られたりするので、轍の中を走るほうがスムーズである。
昔は軽自動車で入ると普通車がつけた轍に合わずにハンドルが取られやすかったりしたが、最近は軽自動車が多いのでそういう経験もすくなくなったと個人的には感じている。
10.轍の中がアイスバーンになっているときは、轍から出て走ることもある
交差点付近ではブレーキで磨かれて轍の中がツルツルのアイスバーンになっていることがある。
そういう時はわざと轍を外したほうがブレーキが効くことも少なくない。轍の外の積雪路面は、雪道の中ではブレーキが効くほうだということを覚えておこう。
11.グリップする路面を見極めたライン取り
雪道では基本的に
新雪>圧雪>シャーベット>アイスバーン
の順番でグリップが低下する。
たとえば下の画像のように車が通った跡の部分はアイスバーンになっていても、すこし外した白くなっている部分は表面にのった雪のおかげでアイスバーンよりはグリップがあったりする。
上の画像のように、アイスと積雪の混じった路面の場合、すこしラインを外して白い積雪部分を走ったほうがグリップしやすい場合が多い。
12. ブレーキは後続に合図
自分が気をつけていても、後続の車に追突される危険も高まるのが雪道。
雪道では普通にブレーキを踏むのではなく、最初軽くブレーキペダルを踏んでブレーキランプで後続に減速の合図をしてから、ブレーキを踏み込んで減速する。
特に、雪道では車間距離を詰めてくるドライバーは超怖いので自衛を!
13. 早い車に追いつかれた道を譲る
雪道運転に焦りは禁物。
後ろから速い車に張り付かれてると焦ってペースが上がったりするが、自分の技量以上に速いペースは危険なので、長い直線や脇に避けられるスペースがあれば道を譲って自分のペースで走ろう。
また、道を譲るときも左ウインカーで合図を数秒してから減速して左に寄せよう。いきなり減速しても後ろから追突される危険もあるので、ドライバー間の意思疎通は大事。
14. 雪に埋まった側溝に気をつけろ
雪国では毎年側溝に落ちる車がたくさん。
側溝に雪が被って、一見何もないように見えるが落とし穴になっているのだ。
上の写真ではまだ側溝は見えているが(すでに一部埋まりかけている)、もう一度大雪になったら落とし穴の完成。狭い道で道路の端まで寄るときは、十分に注意しよう。
15. 安全確認した上でブレーキテストしてみる
前にも後ろにも車がいなく、十分に長い直線など安全な場所があればやってください。
雪道ではどれくらいブレーキが効くのか、アイスになるとどれくらい制動距離が伸びるのか、下り坂ではどれくらい止まらなくなるか、など、車の挙動を知っておくことは安全運転でも重要です(48Rが以前受けたHondaのドライビングスクールでも低μ路で滑った時の挙動を勉強してためになった)。
プラスアルファだけど、積雪した空き地みたいな場所があればカーブの練習をするのも有効。急ハンドルをしても車が曲がらなかったり、2Hでアクセル踏むとスピンするなど、雪道のグリップの低さを勉強できます(JB64/JB74は横滑り防止装置が働いて、車の挙動が安定するのも体感できます)
ジムニーの雪道運転のコツまとめ
一にも二にも、路面を読むことが超重要!
危険ポイントや走り方について色々と書いてきたが、雪道では積雪だったりアイスだったり路面グリップが一定ではないので、「あ、ここは凍結しやすくて危険かも」「下り坂だから急には止まれないぞ」など、その路面状況にあった走りをすることが安全に走り抜く肝である
さらに、側溝落とし穴など、雪国ならではのトラップもあるので、雪道には十分注意してください。
また、ジムニーはホイールベースが短いのでアイスバーンの安定性にはかけるものの、雪にはすこぶる強くスノードライブはジムニーならでは楽しみのひとつ。
ジムニーを買ったら高性能スタッドレスタイヤをはいて、スキー場や雪深い温泉地なでに足を伸ばしてみるのも楽しいです。
では、ジムニーで良きスノードライブを!
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