ジムニーの定番チューンといえばタイヤの大径化。
48Rも例にもれず225/70R16と大きめのタイヤを履かせているのだが、このとき純正タイヤ時と比べてスピードメーターに誤差が生じている。
ちょっとくらいの大径化なら誤差も小さいので実用上は問題ないのが、いかついサイズになってくると誤差も大きく車検合否が心配になってくる。
今回はタイヤの大径化とスピードメーターの関係および車検の合否について調べてみたので共有します。
ジムニーのスピードメーターについて
ジムニーのスピードメーターの仕組み
ジムニーのエンジンからの出力は、トランスミッション→トランスファー→デフ→タイヤという順序でタイヤに伝えられている。スピードメーターはトランスファーの出力軸の回転パルスを拾っており、これにタイヤの転がり周長をかけて速度を割り出している(エンジンの回転数に総減速比を掛けて、さらにタイヤの転がり周長をかけると1分間に進む距離が割り出せるので、これを時速に変換して表示)。
というわけでタイヤサイズを大径化すると、実際には外径が大きくなった分転がり周長が長くなっているのに、スピードメーターは純正タイヤの転がり周長で速度を計算するので、実速度に対してスピードメーターに誤差が生じるのである。(同様に最終減速比を変更してもスピードメーターに誤差が生じるが、クロカン定番チューンのトランスファーダウンギアはトランスファー出力軸の上流なので誤差は生じない)
ちなみに、正確なタイヤの転がり周長はタイヤの外径x円周率ではなく実際に転がして測定する必要があるが、そんなことはできないので当記事では簡易的に各サイズの標準外径でスピードメーター誤差を求めてます。
純正状態でもスピードメーターには誤差がある
最近はドラレコやナビのGPSで測定した速度も見ることができるので、車のスピードメーターとGPS速度とが微妙にズレているのに気がついた人もいるかと思う。
実はほぼ全ての車において、実際の速度よりスピードメーターの速度のほうが速い状態になっている。
理由としては、スピードメーターの速度より実際の速度が低い方が圧倒的に安全でだからである。メーター表示100km/hでも実速度が90km/hならスピード出し過ぎの予防になるし、逆にスピードメーター表示が100km/hなのに実際は110km/h出てて事故りましたではメーカーの責任が問われることになる。
実際にJB74のスピードメーター誤差を確認してみる
では、実際にGPSの速度計を用いてJB74純正状態の誤差を測定してみたのがコチラ。
測定方法は緩い上り坂直線路でクルコン60km/hにセットして、GPSアプリでその時の速度を計測した(本当はGPSデータロガーをOBD2接続して、ECU速度とGPS速度の比較をしたかったのだが、手持ちロガーにJB74に対応した通信プロトコルがインストールされてなかったので残念。SUZUKIのGSX-R1000なら使えたんだけどね)
クルコンのセットがぴったり60km/hになっているかとか(アナログメーターなのでちょっとズレてる可能性)、GPSアプリの速度表示も小数点以下は表示されないのでだいたいの誤差見積もりなのだが、(56-60)km/h ÷ 60km/h =-6.7 %の誤差があることになる。
ここで注意してほしいのは、タイヤの個体差や車のスピードメーターの個体差もあるのでこの誤差見積もり結果が全てのJB74で同じかどうかは怪しく、参考程度に思っておいて下さい。でも大まかには合っていると思うのでこの−6.7%の誤差を使って検証を進めます。
大径タイヤ装着時のスピードメーター誤差について
スピードメーターの誤差がわかったので、タイヤサイズ変更時のスピードメーターの速度と実速度の関係を検証してみる。
JB74の大径タイヤ装着時のスピードメーター表示速度の変化について
計算に用いるタイヤ外径だが、今回はサイズの設計中心外径とする。設計中心外径とはサイズごとに規格で定められており、例えば195/80R15サイズなら設計中心外径693mmであり、実際の製品外径はそこから許容差683mm~703mmに入っていなければならない。タイヤは規格モノなので、外径や幅は規定されているものの、タイヤは繊維のケースとゴムのトレッドでできており金属のような精密な加工精度がないので、大きめの設計許容差が規定されているのだ(じゃないと同じサイズでもメーカーごとに外径が異なってややこしい)。
そして純正タイヤ外径693mmに対して各タイヤサイズの設計中心外径の比を求めて、それに60km/h走行時の実測速度56km/hを掛けて、各タイヤサイズの想定実速度を割り出してみた。
タイヤサイズ | タイヤ外径 | メーター60km/h時の実速度 | 誤差 |
195/80R15 | 693mm | 56km/h(実測値) | -6.7% |
215/70R16 | 708mm | 57.2km/h | -4.6% |
195R16 C | 716mm | 57.9km/h | -3.6% |
185/85R16 | 720mm | 58.2km/h | -3.0% |
225/70R16 | 722mm | 58.3km/h | -2.8% |
235/70R16 | 736mm | 59.5km/h | -0.9% |
205R16C | 736mm | 59.5km/h | -0.9% |
LT225/75R16 | 744mm | 60.1km/h | +0.2% |
245/70R16 | 749mm | 60.5km/h | +0.9% |
30× 9.50R15 | 756mm | 61.1km/h | +1.8% |
6.50R16C | 757mm | 61.2km/h | +2.0% |
215/85R16 LT | 772mm | 62.4km/h | +4.0% |
LT245/75R16 | 774mm | 62.5km/h | +4.2% |
7.00R16C | 786mm | 63.5km/h | +5.9% |
LT235/85R16 | 805mm | 65.1km/h | +8.4% |
7.50R16C | 814mm | 65.8km/h | +9.6% |
LT255/85R16 | 840mm | 67.9km/h | +13.1% |
LT315/75R16 | 884mm | 71.4km/h | +19.1% |
(だいたいのAT/MTタイヤのサイズは網羅したつもりだが、上表以外にもジムニーに履けそうなサイズはまだあります。だだ、本題はメーター誤差の話なので、800mm以上のサイズは調べるのをサボってます)
LT255/85R16なんて巨大なタイヤ履いてるジムニーおるん?って思いながら調べたのだが、ネットで検索すると出てくるわ出てくるわ。
下記に1例として装着例のリンクを貼ります。
装着タイヤはダンロップのグラントレック MT2。カタログ外径は847mm!!
さらに調べると、315/75R16を履かせてるツワモノまで!
装着タイヤはBF Goodrich KO2 でカタログ外径は878mm!!でっか!!
その時はメーター表示が60km/hのとき、実速度は71.4km/h(+19.1%)という見積もりなので、スピードメーターの2割り増しの速度が出ていることに(笑)
時速100km/hなら120km/h近く出ているので、色々な意味でかなりの注意が必要。。。
ちなみに、上表の「LT」や「C」の表記があるサイズはいわゆるライトトラック向けタイヤで、大荷重に耐えられる設計がされたタイヤである。これらのタイヤを装着する際の空気圧は別記事で解説している。
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(上表で「LT」表記が前についたり後ろについたりするのも、「規格」によって表記方法が異なるからなんです)
大径タイヤで車検は通るのか?
タイヤの大径化でスピードメーター表示誤差が大きくなるのを説明してきたが、どの範囲まで車検に通るかを考える(もちろん大径タイヤを履いてもちゃんとフェンダー内にタイヤが収まるようにすることや、フェンダー分全幅が広くなったら車検証の記載変更もすることが大前提だが)。
車検でのスピードメーター検査は以下の通り。
引用元:「道路運送車両の保安基準」(国土交通省令)
自動車のスピードメーターが40km/hのとき、車検でのテスターで計測される速度は31.0km/h以上、42.5km/h以下でなければならない。
誤差でいうと
-22.5%〜+6.3%
の範囲に入っていなければならない。
ここで前述のスピードメーター誤差を見積もった表を眺めてみると、LT235/85R16(805mm)より下に記載されているサイズは車検アウトになる。
逆に+6.3%となるタイヤ外径を求めると、789mmとなる。
最初にも言ったが、かなり大雑把な見積もりをしているのでさらに安全マージンを考えて、770mm以上のタイヤを装着するときはスピードメーターの検査で車検落ちする可能性があるのは頭に入れておいたほうが良いだろう。
また、770mmを超えるような大径タイヤは一部のマニアが選ぶサイズであって、普通のジムニーカスタムで選ばれるサイズでは大きめの225/75R16でも743mm程度なので、車検落ちの心配はまるでないことも分かった(次はこのサイズにしようと考えていたのだが、これで安心して購入できる。ほっ)。
ちなみに自分が履いてきたサイズは215/70R16と225/70R16。これくらいのサイズなら車検が問題ないのはもちろんこと、スピードメーターの誤差もほとんど発生しておらず、安心してドライブすることができる。
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JB23やJB64の場合のメーター誤差は?
JB23やJB64に関しても純正タイヤ時は-6.7%の誤差があると考えて、各サイズに変更時のスピードメーター誤差を見積もってみる(JB74純正サイズの195/80R15が外径693mm、JB23やJB64純正サイズの175/80R16が外径686mmで外径が近いので、そんなに違いはないが)
タイヤサイズ | タイヤ外径 | メーター60km/h時の実速度 | 誤差 |
175/80R16 | 686mm | 56km/h(実測値) | -6.7% |
215/70R16 | 708mm | 57.8km/h | -3.7% |
195R16 C | 716mm | 58.4km/h | -2.6% |
185/85R16 | 720mm | 58.8km/h | -2.0% |
225/70R16 | 722mm | 58.9km/h | -1.8% |
235/70R16 | 736mm | 60.1km/h | +0.1% |
205R16C | 736mm | 60.1km/h | +0.1% |
LT225/75R16 | 744mm | 60.7km/h | +1.2% |
245/70R16 | 749mm | 61.1km/h | +1.9% |
30× 9.50R15 | 756mm | 61.7km/h | +2.9% |
6.50R16C | 757mm | 61.8km/h | +3.0% |
215/85R16 LT | 772mm | 63.0km/h | +5.0% |
LT245/75R16 | 774mm | 63.2km/h | +5.3% |
7.00R16C | 786mm | 64.4km/h | +7.3% |
LT235/85R16 | 805mm | 65.7km/h | +9.5% |
7.50R16C | 814mm | 66.4km/h | +10.7% |
LT255/85R16 | 840mm | 68.6km/h | +14.3% |
LT315/75R16 | 884mm | 72.2km/h | +20.3% |
JB23やJB64の場合、7.00R16Cより下に記載しているサイズは車検アウトとなった。
スピードメーターが狂っている状態は不正改造
保安基準について考えてカスタムしている人はどのくらいいるだろうか?
ジムニーカスタムでははみ出しタイヤや構造変更をしないオーバーフェンダー等完全ブラックなカスタムをしている人も少なからずいるが、スピードメーターが保安基準に適合していない状態も不正改造にあたる。
以下に不正改造に対する国土交通省の御触れを貼っておきます。
不正改造は犯罪です
● 不正改造に対する罰則等
不正改造は犯罪!不正改造車の使用者、不正改造の実施者に対して刑罰が科せられます。
・不正改造の実施者
何人も、保安基準に適合しなくなるような自動車の改造、装置の取り付け、取り外し等(不正改造行為)を行ってはいけません。これに違反した場合は6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が科せられます。(道路運送車両法第99条の2、第108条)
・不正改造車の使用者
自動車が改造によって保安基準に適合しない状態にあるとき、使用者に対し必要な整備を行うことを命じることができます。(道路運送車両法第54条の2)
整備命令が発令された場合は必要な整備を行わなくてはならず、整備命令に従わない場合は、車両の使用停止命令や50万円以下の罰金の対象となります。(道路運送車両法第54条の2、第108条、109条)
車検の時だけタイヤを変えれば良いという話ではなく、合法カスタムでジムニーライフを楽しみましょう。
スピードメーターの補正方法
大径タイヤを履いてもスピードメーターを補正して保安基準に適合することができる。
ジムニーの場合、次の二つの補正方法がある。
スピードメーター測定パルスの変換
ジムニーの場合、スピードメーターはトランスファーの出力軸からの回転パルスを拾っているので、そのパルスをECU手前で変換する装置を取り付けることで速度を補正することができる。
下の画像はハチハチハウスさんから販売されているスピードメーターコントローラーという商品。
但し、この手法で補正ができるのはJB23の7型以前まで。
JB23やJB43の後期モデルやJB64/JB74には使えないので、これらのジムニーは別の補正方法が必要である。
ファイナルギア変更で補正
ジムニーのスピードメーターはトランスファーの出力軸パルスを取っているので最終減速比(ファイナル)を変更するとスピードメーターに誤差が生じる。これを利用して補正する方法もある。
JB系ジムニーの最終減速比は下表の通り。
JB74 MTの場合、JB74 ATのファイナルギアに変更することでタイヤの回転数を4.09/4.30=0.95倍にすることができる。
例えば、LT235/85R16の外径805mmのタイヤの場合、スピードメーターが60km/hのとき65.1km/h(+8.4%)の速度が出ており車検アウトなのだが、先述のファイナル変更をすることで65.1km/h x 0.95 = 61.8km/h(+3.0%)となり、車検適合範囲まで補正することができる。
また、タイヤ外径をアップさせるとトルクが下がるのだが(この場合のトルクはエンジンのトルクではなく、減速された後のタイヤが路面を蹴るトルク。タイヤの半径が大きくなるとテコのうでの長さが伸びるのと同じ原理でトルクが下がる)、その分の低下したトルクも最終減速比をローギアード化することで取り戻すことができる。
但し、使えるギア比が限られているので、例えばJB64 ATの5.375のように元々がローギアードな場合は補正できない。
(注:JB64とJB23など、世代が異なる場合のファイナルギア流用確認も出来てません)
ちなみに、JB系ジムニーのギア比は別記事で詳しくまとめてます。
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JB系ジムニーのギア比まとめ【JB64/JB74/JB23/JB33/JB43系】
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未確認だがECUで補正もあり?!
ジムニーの純正コンピュータは機材のある専門ショップ書き換えができるので(ECUチューン)、現在はまだスピードメーターの補正ができるという情報はないが、将来的にECUの解析が進めばコンピュータ内のタイヤ周長データを書き換えて対応できる可能性もあるだろう。
大きなタイヤを履きたくて、ちゃんとスピードメーターを補正したい人はエイリアンテックやラノーズなどのチューニングショップにリクエストしてみて下さい!
タイヤ大径化によるジムニーの
スピードメーター誤差まとめ
ジムニーでは走破性アップや見た目の観点から純正より大きめのタイヤを履かせるカスタムが流行っているが、きちんと調べてみることで一般的な大径サイズである215/70R16や225/70R16、235/70R16、225/75R16あたりでは保安基準から外れる心配がないことが分かったので、次のタイヤは安心して購入することができるようになった(また買ってしばらく走り込んだらレビュー投稿します)。
また、一部のマニアが履いているような800mm前後のサイズになると保安基準に適合せず不正改造にあたるため、どうしても履きたい人はスピードメーターを補正することを推奨します(スピードメーターの速度より実速度のほうが速いのは危険だし)。
タイヤ選びの参考になれば幸いです。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。