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タイヤ交換時 ジムニーの適正空気圧は?「LT規格」について詳しく解説します

ジムニーの空気圧について、純正タイヤなら指定空気圧一択なのだが、サイズアップしたり、特にLT規格のタイヤを装着したときに、空気圧について悩んでいる人も多いかと思う。

48Rも先日タイヤ屋さんでタイヤ交換した際、めちゃくちゃな空気圧に設定されたので正しい知識を広める為、ブログ記事にしてみました。

LT規格の空気圧を説明するため、かな〜り端折って解説しているが、それでも長文乙な記事になってしまったので、結論を知りたい人は目次を利用してください。

 

あ、ちなみにワタクシメ、タイヤについては専門家です。

 

 

まずは基本、タイヤのサイズ表示について

まずは超基本から解説する。

タイヤのサイズ表記は下画像のようになっている。

タイヤを購入する上で要点になる数字を説明する。

 

①タイヤ断面幅、②偏平率、④リム径(ホイールのインチ数)について

いわゆるタイヤの大きさを決定する数字。

 

①タイヤ幅

しかし、「195」だからって195mmぴったりというわけではなく、「195サイズ」を表示するために定められた規格幅は193mm〜209mmと結構幅広い。

というわけで、「195サイズ」表示とはいえ、製品、メーカーごとに多少サイズが異なるわけだ。

ちなみに、メーカーサイトには正確な幅寸法が載っている(下表右端)。

上表の場合、215/65R15とはいえ、幅は223mmあって、225サイズのほうが近いくらいである。

 

 

②偏平率

タイヤのサイドウォールの高さの指標となる数字。

扁平率が低いほど、幅に対する高さが低くなり、平べったいタイヤとなる。

 

④ホイールインチ数

これはそのままホイールのインチ数である。

ちなみに豆知識だが、ホイールの断面形状は世界規格で定められている。

そのため、どんなタイヤでも適正リムサイズならば、ちゃんと組めるのである。

 

 

③構造表記について

そのタイヤが「ラジアル」か「バイアス」かを示す表記(タイヤ構造は大きくこの二つに別れる)。

ラジアルなら「R」と表記。バイアスなら「無表記」。

現実的には乗用車やハイエースなどのバンのタイヤはほぼ100%ラジアルなので、あまり気にしなくてOK。

 

 

⑤タイヤの荷重指数(load index)について

タイヤ1本あたりで支えられる荷重(負荷能力)を指標化した数字。

世界共通の指標で、下表のように数字ごとに負荷能力が決まっている。

注意点として、この負荷能力は「規格MAX内圧時」の負荷能力である。

内圧を下げると、下表のように負荷能力が下がるので、タイヤ交換でサイズ変更する場合は、確認が必要である

例えば、Load index 70では最大負荷能力が335kgだが、車の指定内圧が220kPaになっている場合は最大負荷能力が320kgになる。

 

 

⑥速度記号について

これはタイヤが安全に走行できる最高速を指標化したものである。

 

⑤のLoad index と⑥の速度記号は安全性を示す重要な指標で、そのタイヤが「この荷重でこの速度まで耐えれますよ」ということを保証している。

タイヤは命を乗せて走るものなので、その保証も厳格。

Load index、速度記号とも、その表示をするために必要な耐久試験が法規で定めており、その試験をクリアしないタイヤは世に出すことはできないことになっている。

 

 

タイヤが荷重を支える仕組み

もう少しお勉強にお付き合いください。

タイヤがどうやって荷重を支えてるかと言うと、中に充填された空気の圧力によって支えている。

上の図はタイヤ自体の剛性を無視した理論モデルだが、空気充填したときの剛性に比べてタイヤ自体の剛性はとても低いので(空気入れてないとぺちゃんこ)、ほぼ空気圧で荷重を支えるモデルで考えることができる。

上の図によると、

地面が押す力(荷重)= 接地面積 x 内圧

で表すことができる。

 

また、別の見方をすると、大きな荷重を支えるには、「接地面積」か「空気圧」のどちらかを大きくすれば良いことになる。

再びJATMAの空気圧毎の負荷能力表を見ると、「空気圧」が高くなるほど、負荷能力(=支えられる荷重)が大きくなっていることがわかる。

 

 

また、下表はTOYO OPEN COUNTRY A/TⅢのサイズ表だが、大きなタイヤほど荷重指数が大きくなる傾向があることがわかる。





XL タイヤサイズ
20 50 265/50 R20 107H
20 50 285/50 R20 112H
20 55 265/55 R20 113H
18 60 235/60 R18 107H
18 60 265/60 R18 110H
18 60 285/60 R18 120H
18 65 265/65 R18 114H
18 70 255/70 R18 113T
17 60 215/60 R17 96H
17 65 225/65 R17 102H
17 65 235/65 R17 108H
17 65 245/65 R17 111H
17 65 255/65 R17 114H
17 65 265/65 R17 112H
17 65 275/65 R17 115H
17 70 265/70 R17 115T
16 70 215/70 R16 100T
16 70 225/70 R16 103H
16 70 235/70 R16 106T
16 70 245/70 R16 111T
16 70 255/70 R16 111T
16 70 265/70 R16 112T
16 70 275/70 R16 114T
16 80 175/80 R16 91S
15 70 265/70 R15 112T
15 75 215/75 R15 100T
15 75 235/75 R15 109T
15 80 175/80R15 90S
15 80 195/80 R15 96S

これは大きなタイヤほど「接地面積」が大きくなるので、支えられる荷重が大きくなるためだ。

 

ちなみに、上図で「XL(エクストラロード)」に印が付いているタイヤは、ノーマルタイヤより高い空気圧設定になっているため、より大きな荷重を支えられるようになっている(タイヤも高い空気圧に耐えるため、丈夫な構造になっている)。

 

また、同じインチ/タイヤ幅でも扁平率が大きいほど荷重指数は大きくなる傾向も見えてくる。

例えば上の表だと

・265/60 R18 110H

・265/65 R18 114H

同じインチ/タイヤ幅でも、65扁平のほうが荷重指数が高い。

これは扁平率が大きなタイヤのほうがサイドウォールの曲率が大きくとれるので、膜構造の力学でサイドウォールの剛性は

「サイドウォールの曲率」x 「空気圧」

に比例するため、扁平率が大きなタイヤの方がサイドウォールの剛性が高くなる。そのため、同じタイヤ幅でも大きな荷重を支えられるのだ。

 

 

タイヤの荷重指数を左右するポイント

①空気圧が高いほど荷重指数が高い

②タイヤサイズ(=接地面積)が大きいほど荷重指数が高い

③扁平率が大きいほど荷重指数が高い

 

LT規格のタイヤは指定空気圧が高い

ジムニーに取り付ける大きめのタイヤサイズにおいて、わりと見かけるのが「LT」という文字。

これはLT=Light Truckの略で、本来なら小型トラック向けに設定されたタイヤである。

乗用車用タイヤとの違いは、LTタイヤの場合は重構造にして高い空気圧にも耐えられる設計にして、小さなタイヤサイズでも大きな荷重を支えられる点である。

(乗用車のように240kPa程度だとタイヤサイズが大きくなり過ぎてトラックの荷台スペースが圧迫されるため、LTタイヤは小さくて高い耐荷重が求められたのだ)

 

例えば、JB74ジムニーシエラの純正サイズで比較すると、同じタイヤサイズでも荷重指数はこんなにも違いがある

乗用車用:195/80R15 96S(最大空気圧240kPa)

LT用:195/80R15 107/105L LT(最大空気圧450kPa)

*注;LTタイヤの荷重指数が二つ書いてあるのは、上の例だと107が通常の荷重指数で105がダブルタイヤの荷重指数

 

ジムニーで大人気のBF Goodrich KO2 LT215/70R16では、350kPaまで入れられて、800kgまで支えられる設計になっている(車重1トンのジムニーにはオーバースペック)。

ちなみに、タイヤサイズ末尾の「LRC」や「LRE」は「Load Range C」などの略でタイヤの強度を表す指標となっていて、強度の高いタイヤほど高い空気圧を充填することができる。

・Cは6PR相当で最大空気圧350kPa

・Dは8PR相当で最大空気圧400kPa

・Eは10PR相当で最大空気圧450kPa

PRってまた新しい単語が出てきたが、これはプライレーティングの略で、これまたタイヤ強度を表す指標である。昔はプライというタイヤの骨格部材の枚数でタイヤ強度を表していたのだが、技術革新が進み強いコードが開発されプライ2枚でも6PRの強度が出せるようになったので、現在では「PR」は一部を除いて使われなくなってしまった。

また、タイヤの最大空気圧はタイヤのサイドウォールでも確認することができる(書いてないタイヤもある)。

LRCのタイヤなので、350kPaで最大荷重850kgと書いてある。ちなみに、最大空気圧/最大荷重の記載がされているのはTRAというアメリカの規格に則って製造されるタイヤに限る。BF Goodrich KO2は日本でも販売されているが、アメリカでも販売されているので、アメリカの規格に則った表記されているのだ。

 

一方で、ハイエース用のLTタイヤは日本でしか販売されていないので、アメリカのTRA規格に則ったサイドウォール表示はする必要はなく、タイヤのサイドウォールに最大空気圧/最大荷重の記載はない。

じゃあ、どこで最大許容荷重を確認するのかというと、JATMAという日本のタイヤ規格本で確認できる(以下、JATMAの抜粋)。

↓こちらはサイズごとの最大空気圧vs許容荷重表。

でも、普通のユーザーがJATMA見れるわけではないので、普通は分からないよね。。

 

このようにタイヤの規格は超ややこしくて、これ以上は規格の説明がないと理解しにくいので、次章でタイヤ規格について、さらっと紹介する。

 

 

各国のLTタイヤ規格

タイヤの規格は日本のJATMA、欧州のETRTO、米国のTRAの世界3大規格があって、それぞれLT規格の表示が異なるからややこしい。

各国のLT 規格は次のような表記をとっていて

・JATMAのLT表示:195/80R15 107/105L LT

・ETRTOのLT表示:215/65R C 109/107Q(Cはコマーシャルビークルの略)

・TRAのLT表:LT225/70R16 102/99R

赤字の部分がそれぞれの規格のLTを表す部分にになっている。

 

参考に「TRA」規格のサイズ表記のページを載せておく。

下画像のように、各規格ごとにサイズ表記のお作法が定められている。

(「225/70」のようなミリサイズなら最初に「LT」がつくが、インチ表記のサイズならリム径のあとに「LT」がつくなど、ややこしい)

 

 

実際、OPEN COUNTRY R/Tのサイズ表を見ると3種の表記が入り混じっている。

なんで日本のJATMA規格で統一しないかというと、大きなサイズのLTタイヤはアメリカのピックアップトラック向けのサイズなので、日本生産の車に設定がなく日本規格のJATMAにサイズ設定されていないのだ(基本的にJATMAは日本で生産流通するタイヤ向けの規格なので)

 

というわけで、ETRTOのC表示のタイヤも含め、JATMAにないサイズは他規格準拠で設計しているので、OPEN COUNTRYのようにLT規格なのにサイズ表示方式がJATMA/ETRTO/TRAで乱立しているのである。

そして、さっき説明したLoad RangeはTRAにしか存在しなかったり、各国の規格で必要なサイドウォールの表示が違ってたり、タイヤメーカーもどの国でも出荷できるようにETRTOとTRA両方の必要表示をサイドウォールに刻印していたり、タイヤ規格はカオスなのだ(さらにタイヤの安全性試験も各国で異なるから、作る方は超大変)

 

さて、ここで48RのBFGoodrich KO2を見ると、タイヤ強度を表すLRCと6PRがしっかりと表示されている(TRA規格準拠)。

ちなみに、「C」や「6PR」「102/99R」の部分はパネルになっているので(刻印に枠が見える部分。ここは取り替え可能な金型)、パネルを入れ替えると同じ金型でLoad Range「D」のタイヤも生産できるようになっている。

 

 

ジムニーにLT規格を取り付ける場合は?

くっそ長い前置きをここまで読んでくれた人ならもう答えが出ているはず。

LT規格のタイヤは、小さなタイヤサイズで大きな荷重を支えるために空気圧設定が高いが、荷重の小さなジムニーに高い空気圧はまったくもって不要である。

地面が押す力(荷重)= 接地面積 x 内圧 の式で表される通り、荷重はジムニーのまま軽いのだから、内圧はそのままで良い(むしろタイヤ幅アップさせて接地面積が増えているので、内圧下げても良いくらいだ)

 

48Rも先日タイヤ屋さんでBF Goodrich KO2 LT225/70R16を取り付けたのだが、空気圧は180kPaでお願いすると「LT規格のタイヤだから、もっと入れたほうがいいですよ」と言いやがる!

そんなに入れたら乗り心地悪くなるし、ギャップで車が跳ねまくるだろう。

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KO2はタイヤのゴムが分厚くて硬いので、乗り心地的には160kPaでちょうど良いくらいだった。

 

また、空気圧300kPa も入れた状態は、乗り心地が悪いだけでなくグリップも下がってしまう。

地面が押す力(荷重)= 接地面積 x 内圧

の式で表されるので、空気圧が高いと接地面積が小さくなってしまう。ゴムの摩擦係数は単位面積あたりの荷重が大きくなると下がる性質があるので、接地面積が広い方がグリップが高い。空気をぱんぱんに入れると接地面積が小さくなりグリップが下がってしまうのだ。

 

というわけで、結論としては、どんなタイヤを履いても純正の指定空気圧の設定で問題なし!

 

空気圧管理にTPMSが便利

タイヤのゴム層は完全には空気を密閉できないので、使用していると次第に空気が抜けていく。

定期的な空気圧点検が望ましいのだが、ガソリンスタンドなどで空気圧をチェックするのはちょっとメンドウクサイ。

そういう時は、タイヤ空気圧をリアルタイムで監視できるTPMSが便利。

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まとめ

サイズ変更した時の適正空気圧について、構造やサイズの違いで多少のベスト内圧には差があるだろうが、指定内圧を目安にして問題ありません(180kPa ±20kPa程度の範囲だと思います)

LT規格だからといって高い内圧を充填しても、ジムニーの荷重を支えるにはオーバースペックだし、乗り心地の悪化やグリップ低下など百害あって一理なし。

適正な空気圧で快適なドライブを楽しみましょう。

 

他にも「JB74ジムニーシエラ」タグで色々ジムニー 記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。









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