エンジンチューニングの定番といえば制御系のチューニング。
JB64/JB74ジムニー向けにもスロコン/サブコン/ECU(ECM)書き換えなど様々なチューニングが出回っているが、これらの違いはご存知でしょうか?
SNSやブログで間違った解釈をしている方もいらっしゃるので、詳しく解説します。
ジムニー初心者やカスタムが苦手な方向けの記事ですので、制御の深い話はなしで、各種の違いついてざっくりまとめました。
JB64/JB74のエンジン制御系チューニングについて
現在の車は昔ながらのアナログな車とは異なり、コンピュータ制御でスロットル開度や点火次期、燃料噴射量など、人間の操作や外部環境に合わせて事細かに制御されて動いている。
この電気系制御に介入することで、車の特性を変化させるのがエンジン制御系のチューニングである。
手法としては、次の3つが一般的(車のコンピュータをまるっと高性能なものに載せ替える手法もあるが、マニア用なので割愛)。
ジムニーの電気系チューニング
- スロットルコントローラー(スロコン)
- サブコンピューター(サブコン)
- ECU(ECM)書き換え
みなさんSNSやネット記事、ジムニー本などで一度は聞いたことある言葉ではないでしょうか?
これらの違いについて、詳しく解説します。
スロットルコントローラーについて
JB64/JB74を含め、現代の車は下図の下のようにアクセルペダルは直接スロットルバルブにつながっておらず、アクセルの開度情報を一度ECU(車を制御するコンピュータ)が読み取って、その時の車の走行状態に合わせてスロットルバルブ(実際にエンジンに流れる空気量を調整するバルブ)を制御する仕組みになっている。このアクセルの開度情報を電気でECUに送るスロットルを「電子スロットル」という。
(JB23以前のジムニーは下図の上のようにアクセルとスロットルバルブがワイヤーで接続され、右足でダイレクトにスロットルバルブを動かせた)
この電子スロットルの制御がクセモノで、現代の車は「省燃費」と「低排出ガス」が重視されているので、燃費が悪化したり排ガスが増えないよう、アクセルを踏み込んでもスロットルバルブが急に開かない制御になっている。
JB64/JB74ジムニーがアクセルを踏み込んでも加速が弱かったりレスポンスが鈍いのは、この電子スロットルの制御が原因。
そこで登場するのがスロットルコントローラー。
下図のようにアクセルペダルとECUの間に割り込ませ、例えばアクセルペダルを20%しか踏んでいないのに、ECUには40%踏んでいるという偽情報をおくり、スロットルバルブを大きく開かせて加速を良くするのだ。
また、スロットルコントローラーにはあらかじめ数種類の設定があり、純正状態よりスロットルバルブを大きく開かせるものもあれば、燃費を重視してアクセルを踏んでもスロットルバルブを開かないようにする制御も可能である。
さて、ここまでお読み頂いて勘の良い読者様は既にお気づきかもしれないが、スロットルコントローラーはアクセルペダルとスロットルバルブ開度の関係性を変更するものであって、パワーは0.1馬力も向上しない。
加速がかったるいのであれば、アクセルペダルをもっと踏み込めばええやん!と言われればそうであるパーツなのである。
とはいえ、JB64/JB74ジムニーの電子スロットルはワンテンポ遅れる感じなので、スロコンでフィーリング改善することで、運転は気持ち良くなるというのが個人的な見解である。
ちなみに、こちらの記事でスロコンの取り付け方法など詳しく解説しています。
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レスポンス改善!JB74ジムニーにスロコン導入 ~PIVOT 3-drive PRO~ JB64にも
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サブコンピューターについて
JB74向けにはサブコンは販売されていないが、JB64のチューンとしてはメジャーなサブコンピューター(上の画像は48RのJB23のサブコンです)。
仕組みはこうである。
ECUはエンジンのインジェクターやイグニッションコイル、各種センサーなどに接続され、車の状況に合わせて燃料流量や点火時期を事細かに制御している。
この間にサブコンを割り込ませ、ECUに疑似信号を送ってエンジン制御の特性を変化させるのがサブコンピュータである。
例えば、ターボ車であれば、実際のブースト圧より低い擬似情報をECUに送ることでECUはまだブーストを上げられると錯覚してブーストアップしたり、そのほかには燃料センサーの間に割り込ませて燃料の噴射量を調整したり、純正制御を誤魔化すことでエンジンの特性を変えている。
また、スロコンとは異なり、ECUに擬似情報を送り実際よりブースト圧を上げたり燃料を多く噴いたりできるので、実際にパワーアップもできるのがサブコンである。実際にポン付で10馬力程度アップするようである。
さらに導入コストについてもサブコンはそれほど高くないし、取り付けもサブコンをECUとエンジンに間に割り込ませるだけなので、お手軽なチューニング手法である。
とはいえ、純正制御マップの中で擬似情報を送るゴマカシ制御なので、純正制御から大きな変更はできず、パワー面では次に紹介するECU書き換えには及ばないの実情である。
ちなみに、サブコンは見た目がそっくりの製品が多数販売されているが、中身のプログラムは各メーカーのオリジナルデータなので、メーカーによって低速度のトルクアップ重視だったりピーク重視だったり特性が違います。
(シエクルさんのミニコンをベースに各社オリジナルデータを載せて販売しているので、見た目が似たものが多い)
ECU(ECM)書き換え
ECUとはエンジンコントロールユニットの略で、車のエンジンを含め車のあらゆる制御をしているコンピュータである(エンジンだけでなく、オートエアコンの制御なんかもやっている)
また、(ECM)と書いているのは、スズキさんはエンジンコントロールモジュールと呼んでいるからである。一般的にはECUが通称なのだが。
ECU書き換えとは、エンジンを制御しているプログラムを書き換えてパワーを引き出す手法である。
先にも書いたが、現代の車は「省燃費」と「低排出ガス」を重視した制御になっている。また、どんな使われ方がされるかわからないので、パワー面にしてもかなり安全マージンをとった制御になっている。
そこらへんの制御をもう少しパワーを引き出す方向にデータに書き換えることがECU書き換えチューンングである。
たとえばブースト圧アップさせたり、燃料を多く噴いたり、点火時期を早めたり、サブコンよりかなり細かくエンジンの特性を変化させることが可能となる。
また、ハイオクガソリン前提制御にすることでレギュラーガソリンでは使えないような点火時期の進角が可能となり大幅なフィーリングアップも望めるのがECU書き換えである。
しかも、純正では105km/hまでしか設定できないクルコンを140km/hまで設定できるようにしたり、エンジンのレブリミッターを引き上げたり、最高速リミッターを解除したり、様々ことができるのも特徴である。
とはいえ、メーカーでもないチューニングショップにとっては、純正ECUのデータを解析して制御マップの場所を発見するだけでも一苦労。また、さらにその制御マップも複数の制御マップが入り乱れてエンジン制御しているので、思うようにエンジン特性を変化させるのは、書き換えて試走を何度も繰り返すトライアンドエラーなど、超多大な労力がかかる作業なのである。
このため、国内でジムニーのECU書き換えチューニングをしているショップは数社程度しかない。
ECU書き換えの効果だが、ターボ車であるJB64はブースト圧の制御を変化させることで比較定期簡単に20馬力程度アップさせることができるようである。
JB74についてはNAエンジンなので、簡単に馬力アップとはいかないが、それでも10馬力程度の馬力アップともっさりしたフィーリングは改善するようで、JB74オーナーの48Rとしては興味津々(実は48Rも某社のECU書き換え予定で、導入したら記事をアップします)。
あと、注意点としては、サブコンとは絶対併用できない。サブコンは純正ECUのデータ前提で擬似情報を送っているので、書き換えたECUにサブコンを取り付けると想定外の制御となり最悪エンジンが壊れます。
ここまで書くと良いこと尽くめのように聞こえるが、デメリットはお値段!
8万〜10万円くらいが相場なので、おいそれと手を出せないよね。。
スロコン/サブコン/ECU書き換えまとめ
長い文章にお付き合いありがとうございました。
カスタムしたことのないジムニー初心者の方でも伝わりましたでしょうか?(それでも車の基本的なメカについて知識がないと、難しい話かもしれませんが)
まとめると、
- スロコンは馬力アップはしないが、アクセルとスロットルバルブの関係性を変更するフィーリングパーツ
- サブコンは純正ECUの制御を誤魔化してパワーアップするお手軽パーツ
- ECU書き換えはコストはかかるものの、ブースト圧や燃料噴射量、点火時期などを細かく設定でき一番パワーアップが望める手法
カスタムするにしても、内容を理解してカスタムしたほうが楽しめると思ったので、記事にした次第です。
他にも「JB74ジムニーシエラ(☜クリック)」カテゴリーで様々なジムニーに関する記事書いてます。よろしければ、そちらの記事もどうぞ。